捕まえた生き物の名前を探す

Top > コラム > 001

アオクサカメムシ  当時、小学校低学年だった子供が、夏休みの自由研究として、身近な昆虫図鑑をつくることにしました。 そのプロセスは、近所で昆虫を捕まえてはその場で写真を撮り、種名を調べて簡単な説明を書いた用紙を作成し、冊子状にまとめていくものでした。 子供が昆虫を捕まえるのですが、彼はトンボとかバッタとかいわゆるグループの名称はわかっても、 ウスバキトンボとかツチイナゴなどの種名まで知っている場合はほとんどなく、 私は子供と一緒に図鑑やインターネットを検索して種類を確認したり、特定したりするお手伝いをしていました。
 あるとき子供が畑から昆虫【左写真】を捕まえてきました。 私はその昆虫の形から、カメムシの仲間であろうことはすぐにわかったのですが、それ以上のことはわかりませんでした。 そんなときは、だいたい家の図鑑を開けば解決していたので、早速「カメムシ」のページを開き、同じ模様の写真を探しました。 しかし、背中にこんな模様をもつカメムシはどこにも見当たりませんでした。 次に「カメムシ」でインターネット検索をしました。しかし、ここでも同じ模様をもつ個体の画像を容易に見つけることができませんでした。 箕面や伊丹の昆虫館に写真を持ち込み、教えてもらうことも考えたのですが、 いろんな図鑑を開き、インターネットで種名をいくつも入力しながら検索を続けているうちに、 その個体は「アオクサカメムシ」という、ごくありふれた種類のカメムシの幼虫であることがわかりました。ずいぶん時間がかかりました。
 ありふれた種類だったにも関わらず、このときなぜ種名を特定することが容易ではなかったのか。 それは幼虫と成虫がほぼ同じ形態のカメムシであっても、両者の背の模様が異なっていたこと、 そして、子供が捕った幼虫の方の写真が図鑑に記載されていなかったり、インターネット上に少なかったりしたからです。 図鑑は限られた紙面に、多くの種類を載せる必要があるため、掲載されているのは各種類に対して特徴的な姿を表す1枚程度で、 有名種でも5枚もあれば詳しい図鑑と言えるでしょう。当然成虫がメインの1枚目になっていて、幼虫は二の次といった扱いです。 インターネットは、情報量はかなり多いですが、検索語が必要なので、およそのアタリがないとかなり時間がかかるし、 (人のことは言えませが)ヒットする情報すべてが、専門家による正確な情報とも限らないので、どうしても確認に時間がかかります。
共にオイカワ  成長の度合いや季節、雌雄によって形態が異なる生き物は多く、必ずしも図鑑やインターネット上に、探しているものと一致する画像があるとは限りません。 それは本サイト内で多く紹介している淡水魚についても同様で、例えば平野部の河川や用水路でごくごく普通に見られるオイカワも そのひとつです。 一般に図鑑に掲載されているのは、春から夏にかけての繁殖期に出現する派手な雄【右写真・上】が多いです。 しかし、実際にはこのような姿の個体は繁殖期であっても捕れることは多くなく、むしろ銀白色をした未成魚【右写真・下】や稚魚、成魚の方がよく捕れます。 オイカワをよく知らない人は、両写真の個体を見て同種とはおそらく思わないでしょう。 右写真・下のような銀白色の魚が捕れたとき、その形態から図鑑やネットで検索をしてオイカワという種名にたどりつくのは、そう簡単ではないと思います。
 「生き物への関心は、名前(種名)を覚えることから」だと思います。 そもそも生き物の形態や生態に関する情報は、名前(種名)にひも付いているし、 名前を知っていれば、それが自然と目にとまるようになって観察する機会が増え、 更にその種を起点にその周囲の生き物にも視野が広がるようになると思うからです。 一般には、学者や専門家が議論しているようなレベルまで詳細にこだわる必要はありませんが、 名前(種名)を知ることはとても大事で、できれば多くの方に覚えて欲しいと思っています。 中にはかなり正確に種類を同定をしてくれる、ありがたいサイトもありますが、手元にある実物や写真から自分で探し出すことができれば一番いいと思います。 上で記した経験やそんな考えから、本サイト内の日本淡水魚や外来魚(国外外来種)で紹介している魚たちは、成長の度合いや捕った時期など、 できるだけ異なった多くの写真を載せるようにしています。 検索索形式で掲載していないので、多少探してもらわないといけないし、すべて網羅できる訳もないので、「できるだけ」なのですが・・・。 ただ、それらが、多様な姿を見せてくれる生き物に、そしてそれを育む水辺の環境に、少しでも関心をもってもらえるきっかけになればいいなと思っています。

last modified : 2016/2/16
created:2016/1/29

ごあいさつ

行く

捕る

観る

飼う

お願い!

コラム

Copyright © 雑魚の水辺 Since 2010
inserted by FC2 system