トンボの仲間
トンボは水辺で羽化し、水辺に卵を産むため、当然水辺で多く見ることができる昆虫です。
大きな目に細長い体、4枚の翅をもついわゆるトンボ型の特徴的なシルエットをしていて、
高速で縦横無尽に飛びながら空中で獲物をキャッチできる高い飛翔力をもちます。
・ニホンカワトンボ
・ハグロトンボ
・アオモンイトトンボ
・ムスジイトトンボ
・キイトトンボ
・コオニヤンマ
・タイワンウチワヤンマ
・ギンヤンマ
・ミヤマアカネ
・アキアカネ
・マユタテアカネ
・ショウジョウトンボ
・シオカラトンボ
・オオシオカラトンボ
・チョウトンボ
・ウスバキトンボ
・ハッチョウトンボ
ニホンカワトンボ
白い粉をふいたような淡い水色のボディに、オレンジ色の翅が絶妙な色合いで美しいトンボだ。
渓流など比較的水がきれいな川に多い。雄には無色の翅をもつ型もいるそうだ。
ハグロトンボ
金属光沢のある体に真っ黒な翅が特徴的な比較的多く見られる種。体の色が緑なら雄、黒茶色なら雌だ。
水生植物が多くある川の近くに生息し、川岸に集団でいることも多い。近づくと黒い翅をはばたかせヒラヒラヒラとゆっくり向こうに飛んでいく。
よく行く幅が2mほどの夏の用水路には、かなりの数の本種が岸の草などにとまっていて、
タモ網で魚捕りをしながら下流に下っていくと、私に押されるように数多くの本種も一緒に移動する。
何匹もの個体が真っ黒な翅をヒラヒラさせて空中を舞う姿は、何とも不思議な感じがする。
アオモンイトトンボ
植物が多い池沼や川の周辺で見られる体長3.5cmくらいのイトトンボ。淀川の近くの池で撮った。
胸は青緑色で、腹面下部は薄黄色で、尾端の鮮やかな水色がアクセントとなっていて、とてもきれいなトンボだと思う。
ムスジイトトンボ
鮮やかな水色と黒のコントラストが美しい種。結構よく似た種がいて紛らわしいのだが、
腹部背面の黒条が六つに分かれていることから「六筋(ムスジ)」と名がついたそうだ。
水草が豊富なため池の周囲などで見ることができる。写真個体とは淀川のワンドで出会った。
キイトトンボ
腹が黄色いイトトンボだからキイトトンボ。胴や目は若草色をしている。浮葉植物や抽水植物が多い池などで見られ、羽化水域をあまり離れず生活するそうだ。
草丈数10cm程度の草地が水辺にあるところが生息条件という。池のほとりの草の間をフ~ッと飛んで草につかまり、またフ~ッと飛んで・・・を繰り返す。
いろんなイトトンボが舞う池にあってこの比較的太く鮮やかな黄色はとてもよく目立つ。
何でまたこんな目立つ色に進化したのか不思議だが、イトトンボは青とか赤とか黄とかいろいろいて面白い。
コオニヤンマ
黒をベースに黄色の縞模様の体、オニヤンマに代表されるこの手の模様をもつ個体は、全部オニヤンマだと子供の頃思っていた。
本種は河川中流域に行けばよく見られるトンボで、体の割に頭部が小さく後脚がとても長いことが特徴だ。
羽化後、丘陵や山に移動し産卵のために再び川に戻るという生活を送る。
サーッと飛び続けることは少なく、結構草などにとまっていることが多い印象をもつが、トンボの中でもかなりどう猛な種なんだそうだ。
本種のヤゴは上から潰したような著しく平べったい姿をしていて、枯れ葉に肢が付いたような形。すぐに見分けがつく。
タイワンウチワヤンマ
腹部先端下部にウチワのように広がった部分をもち、そこに黄色の斑がない(=真っ黒な)ことがウチワヤンマとの違い。
温暖な気候を好む種で、大阪ではウチワヤンマよりも本種が多いと聞いた。
写真のように見晴らしが良い棒の先や草の先にとまり、縄張りを見張っている姿をよく見かける。
ギンヤンマ
平地にあるため池や湖沼などでよく見かける。開けていて日当たりが良い止水域を好むようで、水面上空を素早く飛び回る、大きくてかっこいいトンボだ。
広いなわばりを巡回していて、他の個体が侵入すると猛烈な勢いで攻撃している。体色は
美しく、大きな眼と胸部は鮮やかな黄緑色、雄は腹の付け根のあたりが明るい空色をしている。
腹部の第3節の下部が銀色なので、どうやらそこがギンヤンマの名前の由来になったようだ。
わかりにくいところの色を名前にもってくるものなんだなあとも思うが、
だからって"キミドリヤンマ"だとなんか嫌、”ソライロヤンマ”もイメージが違う、やっぱりギンヤンマがかっこいい。
ミヤマアカネ
朱色の体、翅にある褐色の太い帯が美しいアカネ属のトンボ。よく見ると翅脈まで赤色に色づいている。
丘陵地から低山地を浅く緩やかに流れる川の近くでよく見る。6月下旬から羽化し、未成熟な個体は雌雄ともに薄い褐色。
雄は写真のように赤くなるが、雌は色が黄褐色のまま。胸側面はほぼ模様がない。
ギンヤンマのようにずーっと飛び回ることもなく、比較的枝によく止まるので近づきやすく、捕まえやすい。
近年、本種が好む緩やかな流れのある自然度の高い川は少なくなっており、本種も個体数を減らしている。
アキアカネ
秋、稲刈りの田んぼに群れて飛ぶ日本固有のアカネ属のトンボ。いわゆる赤とんぼの代表種だ。
季節的に大きく移動することで知られていて、夏に低地から涼しい山地に一旦移動、成熟して秋に低地に群れで戻ってくる。
夏の低地で同じような姿の赤とんぼを見かけるが、それはナツアカネという別種。
両者はとてもによく似ているが、胸の側面にある黒条の形が異なることで区別できる。
稲刈りの終わった田んぼの水溜りなどに産卵し、卵は水中や湿った泥の中で越冬する。
春に水田に水をはる頃に孵化し、矢後は田植え直後に大量発生するミジンコなどを活発に食べて大きくなり、初夏の夜に羽化する。
写真は夏休みに河川上流域の川原で見かけた個体。体が赤く染まっているので雄だ。
マユタテアカネ
近くに林があるような水田や川の近くで見られる。
♪夕焼け小焼けのアカトンボ~は、日本人に馴染みのある童謡「アカトンボ」であるが、アカトンボと言われるトンボの仲間は20種類ほどある。
本種は比較的生息数や個体数の多い小型のアカトンボだ。顔の正面には1対の黒い眉状紋があり、雄は腹端がそり上がるのが特徴だ。
ちなみに、狭義の赤トンボは、稲刈りが終わった秋の田んぼで多く見られるのはアキアカネという種とされる。
ショウジョウトンボ
ショウジョウ(猩猩)とは赤を意味する。ちょっと寸詰まりで腹部が薄っぺらく、成熟した雄はその名の通り全身真っ赤なトンボだ。
目立つためか比較的出会うことが多く、夏の池を飛び回り、棒の先っぽに立って縄張りを見張っている姿をよく見かける。
いわゆるアカトンボは秋に平地に移動し群れをなすアキアカネを指すが、「赤」の度合いははるかにこちらの方が上。
写真の個体はクモの巣を体に付けている。危ないところをくぐり抜けてきのだろう。
シオカラトンボ
シオカラという何か馴染みのある名前に、平地の水田や池などではどこでも見かけるからだろうか、有名なトンボのひとつだ。
♪トンボのメガネは水色メガネ・・・で歌われる、水色メガネのトンボのモデルだと言われる。
成熟した雄は腹の先が黒く白い粉をふいたような水色の体色で、未成熟な個体や雌は茶色っぽくて、雌はその体色からムギワラトンボと呼ばれる。
このトンボを見ると子供の頃を思い出す。用水路の縁にとまっているところを網でかぶせようと何度もトライした。
結構すばしっこくて失敗したことの方が多かったなあ。
オオシオカラトンボ
シオカラトンボをより大きく、色濃くしたトンボ。
シオカラトンボと異なり、目や顔は黒く、翅の基部も黒い。個人的には雄の青灰色が好きで、頭部や尾端の黒色と合わせてなかなかカッコいいトンボだと思う。
珍しいトンボではなく、林が近くにある川やため池などのやや薄暗いところでよく見られ、シオカラトンボほど水辺から離れない。
写真の個体は川の上流の川原で石にとまったところを撮影した。
これまで出会ってもなかなか近くで撮らせてくれなかったが、この個体は翅を下ろし、かなり近づいても逃げなかった。この差はなんだろうか?
チョウトンボ
青黒くメタリックにく幅の広い翅をもち、ヒラヒラと蝶のように舞うユニークなトンボだ。個性があって個人的にはとても好きなトンボだ。
光の加減で翅の色合いが異なって見え、構造色のためだろうか、何か工業的(つくりもの的)な感じすらする不思議な美しさをもつ。
未成熟な個体は隣接した水辺に隣接した林などに集まり成熟を待ち、成熟した個体は抽水植物や浮葉植物が多い池などに戻り、縄張りをつくる。
本種に限らずトンボは夏の日中では写真のように腹を垂直に立てていることがある。
これは太陽の光を極力体に当てないようにし、体温上昇を抑制するための工夫なんだそうだ。たまに体操選手のように反り返っている場合もある。
ウスバキトンボ
平地や丘陵地の池や水田、草原などにで見かける。素早く飛ぶので網を振り回して捕るのは案外難しい。写真のようにぶら下がってとまる習性がある。
体色は薄い黄色で、シオカラトンボの雌やアカトンボの仲間のようにも見えるが、
胸側面には黒色条がなく、真上から見た腹部中央に一本の黒線が走ることなどで違いがわかる。
本種は渡りをするトンボで、亜熱帯地方で生まれた成体は春に本州に飛来する。
幼虫の成長はとても早く、各地で世代交代を繰り返しながら国内に広がっていくそうだ。大阪ではお盆の頃から大量に見られる。
寒さには弱く、冬になると死滅してしまうが、少しでも生息域拡大のチャンスを図ろうとする積極的な種だ。魚で言うと死滅回遊魚と同じだな。
ハッチョウトンボ
日本で一番小さいトンボ。全長は2cmに満たないくらいで、よく見ないとわからない。
丘陵地で山の斜面から湧き水がじとーっと出てきて日当たりが良い、じくじくとした湿地で出会った。
はじめて見たときは、そのミニチュア度にちょっと感動した。
飛ぶことよりも止まっていることの方が好きなようで、その場を離れてもすぐに草にとまる。
雄は写真のような赤色をしているが、雌は薄茶色と黒とクリーム色の筋模様。その体のサイズからハチやアブと間違えそうなくらいだ。
特殊な生息環境のため大きく拡散することがない本種は、環境の変化に弱く、開発などによりあっという間に姿を消してしまう。
湿地にはもともと貴重な動植物が多いが、本種もまたそのひとつだ。
created:2012/1/13