バッタの仲間
夏になると河原や岸辺の草むらはバッタの天国になります。
バッタは後脚が大きく発達しジャンプすることが特徴で、ほとんどの種類は成虫になれば翅を使って飛ぶことができます。
バッタは子供の良き遊び相手です。捕まえることが簡単そうで捕まえにくい、この微妙な感じがいいです。
・トノサマバッタ
・クルマバッタ
・クルマバッタモドキ
・マダラバッタ
・ショウリョウバッタ
・オンブバッタ
・ツチイナゴ
・コバネイナゴ
・ツユムシ
・イボバッタ
・キリギリス
・スズムシ
・オオカマキリ
・チョウセンカマキリ
・ハラビロカマキリ
・コカマキリ
トノサマバッタ
背の低い草があるような荒れ地を好み、広い河川敷や開けた河原などに生息する。河川公園のグランドなどでも多く見かける。
オスよりメスの方が大きく、メスの成虫は6cmくらいになる。
体色は緑色、褐色、灰色、その中間などがあり、生息地の環境に依るようだ。バッタの中では良く飛び、捕まえるのは難しい部類に入る。
写真は淀川下流部の河川敷で出会ったペア。オスが上でメスが下。
繁殖期のオスは、写真のようにメスに乗っかろうとするため、メスの大きさくらいの角棒をヒモに付けて簡単に釣ることができる。
ただの角棒とメスを間違うなんて、いったいどんな感覚なの?
クルマバッタ
トノサマバッタによく似ているが、胸の背面が丸く膨らむことがことで区別できる。
その膨らみは左の写真ではわかりにくいが、真横から見るとよりわかりやすい。
後翅を広げると弧を描くように黒色の模様があり、飛ぶときにそれが車輪のように見えるからクルマバッタの名がある。
写真の個体は真夏の河川中流域の河原で出会った。日光に照らされかなり高温になったコンクリートの上でほとんど動かずに私の被写体になってくれた。
「アチチチ・・・」と言う声が聞こえてきそうだ。
クルマバッタモドキ
成虫はトノサマバッタのように荒れ地を比較的好むようで、河川敷などで見かけることができる。
体色は灰褐色をベースに濃淡模様があり、背中のXマークが特徴だ。体長はオス3cm、メス5cm程度。
クルマバッタ同様、後翅を広げると弧を描くように黒色の模様がある。モドキと名があるが、クルマバッタより見かけることは多いと思う。
マダラバッタ
体長3.5cm程度でトノサマバッタより一回り小さい。
体はスマートで翅が長く、後脚には他のバッタには見られない黒・青・赤の縞模様がある。
トノサマバッタ同様に乾燥した荒れ地や河原、草地を好むようで、淀川の河川敷では同所に見られる。
敏捷で捕まえにくいそうだが、この個体は写真を撮る間、近くでじっとしてくれた。
ショウリョウバッタ
頭が尖っていてとてもスマートな体形をしている。後脚はとても長い。メスはオスの倍ほどの大きさで、メスは全長が8cm程度ある。
オスは良く飛んで、羽ばたく時に翅を打ち合わせてキチキチキチと音を立てる。メスはあまり飛ばずにジャンプで逃げることが多いと思う。
写真はメスの上にオスが3匹も乗っかっている。さすがに飛んで逃げることが難しいメスはあっさりと我々に捕まってくれた。
オンブバッタ
ほとんど飛ばないバッタ。ショウリョウバッタを小さくよりずんぐりさせたような体形で、草地や荒れ地や庭などいろんなところで出会う。
その名の通り、メスがオスをおんぶしている姿をよく見かけるが、これは交尾以外の時もオスがメスに乗り続けるためだ。
ツチイナゴ
クズが繁茂しているような河原で見かける。幼虫の体色はきれいな黄緑色だが、成虫は写真のような褐色になる。
幼虫期は青々とした草が生えている頃で、成虫期は枯れ草が増える頃だから保護色になっているのだろう。
体長は5、6cmくらい。大形のバッタのうち、国内で唯一成虫で越冬するそうだ。目の下に黒い筋があり、黒い涙を流しているように見える。
コバネイナゴ
ハネの短いイナゴ。体長は4cm程度で、体色は緑色ベースに背中は褐色、体側には濃褐色の帯が頭部から尾部にかけて走る。
イネ科の植物を好んで食べるため、水田の近くでよく見かける。
イネを食害する害虫として扱われ、かつては個体数もかなり多く、最も恐れられていた昆虫のひとつだ。
コバネイナゴがいれば、ハネナガイナゴもいて、イナゴ類は8種類がいるとされる。
ツユムシ
明るい草原の中で見かける。前進緑色で、頭部が非常に小さく後脚がとても細長く、見るからに弱々しい印象を受ける。
アゴも細く短いため堅い葉を食うことができず、もっぱら新芽などの柔らかい葉を食べるそうだ。
素早くジャンプして逃げることもあまりないので、撮影するのも捕まえるのも簡単だ。
イボバッタ
日当たりが良く、草がなくて地面が固い土の上や石の上で見ることができる。灰濃褐色の体はそんな生息地の保護色となっているのだろう。
とても小さなバッタで全長は3cm程度。見付けにくくすばしっこくて結構捕まえにくい。
写真は河川敷の舗装道路上で捕まえた個体。家の庭でもよく見かける。
キリギリス
草むらから聞こえる「ギーッチョン」と鳴く虫の正体。比較的背の高い草地に生息していて、河川敷などの広い場所で見かける。
緑と褐色が混ざった体色で、体はがっしりしていて太短くアゴも大きい。全長は4cmくらい。
雑食であるが肉食性が強く、前脚にあるたくさんのトゲは他の昆虫などの獲物を捕らえるときに役立つ。
キリギリスと呼ばれる種には、東日本のヒガシキリギリスと西日本のニシキリギリスがいるそうだ。
過去に大きなアゴで指を噛み切られて出血したことがある。捕まえるときは注意が必要だ。
スズムシ
夏も終わりになる頃、ススキなどの草が茂った夕方の川原ではたくさんの虫たちが鳴きだす。
特に鳴き声が美しいのが「リーンリーン」と鳴くスズムシだ。体長2cmくらいで、雄は脈が発達した薄黒い半透明の翅をもつ。
脈の一部はやすりのようになっていて、鳴くときは翅を垂直に立てて細かく震わせ、やすり部を擦り合わせることで音が出る仕組みだ。
夜行性のため触角が長く、根元半分が白色でその先半分が黒色のツートンカラーとなっている。
写真の個体は平らで広がった翅の形からオスとわかるが、よく見ると雌のような産卵管らしきものが見える。
これは抜け落ちる前の下翅で、一般にはそのうち取れ落ちてしまう。
飛ばないように進化したスズムシにはもともと持っていた飛ぶための下翅が不要と言うことだ。
オオカマキリ
カマキリは逆三角形の頭に鎌のような前脚、細長い体が特徴的で、緑色、褐色、その中間など体色はバリエーションに富む。
草の中でバッタやチョウなどの獲物を待ち構えて、前脚で捕らえムシャムシャ食らいつくどう猛な昆虫だ。
オスよりメスが大きく、メスは全長が10cmくらいある。交尾が終わるとオスがメスを食うと言われるが案外オスは上手に逃げるらしい。
よく似たチョウセンカマキリと比べると、前脚の間の胸は薄黄色でチョウセンほど鮮やかではなく、体も一回り大きい。
また後翅の色も違っていて全体的に黒っぽい。写真は秋に淀川支流の河原で出会ったオオカマキリの成虫。
近づくと逃げようとするが、正面に回ると立ち止まり、睨むように逆三角形の顔をこちらに向け、前脚を上げて威嚇してくる。
チョウセンカマキリ
オオカマキリより一回り小型のカマキリ。姿はオオカマキリにそっくりであるが、前脚の間がオレンジ色であることさえ確認できれば区別は簡単だ。
写真は河原で子供が見付けたメス。11月上旬だったので、繁殖期も終わりぼちぼち命がつきる頃だろうか。
ちなみにカマキリを持つときは、写真のように翅の根元部分を背中側から指で挟むようにする。
よく前脚の付け根あたりをもつ人を見るが、それだと鎌をひっくり返してきて、トゲトゲが指に食い込んでくる。これがまた痛い・・・。
まあそんな経験も大事だけど。
ハラビロカマキリ
体長6cm程度の中型のカマキリ。開けた草地などで見られるオオカマキリなどと異なり、本種は樹上や木の近くで見ることが多い。
腹が広いからハラビロカマキリだが、腹だけではなく胸部も太短く、ずいぶんずんぐりした体形をしている。
成虫の前翅に2つの白色斑があり、前脚には薄黄色のイボが数個並ぶことも特徴的だ。
カマキリの仲間は多くの種で緑色と褐色の2タイプが見られるが、
本種の場合、左写真の様なきれいな緑色をした個体がほとんどで、褐色の個体はかなりレアものなのだそうだ。
確かに本種は鮮やかな緑色という印象が強い。
コカマキリ
体長5cm程度の小型のカマキリ。生息範囲は広くいろんなところで見かけることができる。
カマキリ類は多くの種で緑色型と褐色型の2つがあるが、本種はほとんどが褐色型で、緑色型はごくまれにみる程度だ。
前脚のカマ部分の裏側に黒色、白色、桃色の模様が見られることが特徴。
威嚇するときは腹を反り返らせて翅を広げ、畳んだ前脚を胸の両脇に付けて頭や胸を持ち上げる姿勢をとるが、
その際にこの白黒桃色模様を敵の正面に見せてくる。天敵に対する何か威嚇の効果があるのだろう・・・。
写真は秋に河川脇の畑で見付けたオスと思われる個体。地面を歩いていた。
created:2012/1/13