カメの仲間
カメは池、水路、川の流れの緩やかなところで見かけますが、残念なことに最近はどこにいっても外来種のアカミミガメばかりが目に付きます。
日本古来のカメたちは外来ガメによって確実に圧力を受けています。
数が少なくなったと思われるイシガメやスッポンを見かけると何だか安心する、こんな現状が気に入りません。
・ニホンイシガメ
・ニホンスッポン
・ニホンイシガメ×クサガメ(交雑種)
・クサガメ(国外外来種)
・ミシシッピアカミミガメ(国外外来種)
・フロリダアカハラガメ(国外外来種)
ニホンイシガメ
河川の上中流域の水の綺麗な川や水路、山麓部の田んぼ周辺でよく見かける。
水質悪化には敏感で、生活排水の流れ込む環境を苦手とするようだ。
似ているクサガメと比べて遊泳力が巧みでかつ低温にも強いため、比較的冷たく流れの速い川にも生息できるらしい。
背甲は褐色系で腹甲はほぼ真っ黒。後縁部にはギザギザの切れ込みがあることが特徴だが、老齢個体では摩耗して目立たなくなる。
子ガメの甲羅には隆起(キール)が3本あるが、成長するにつれて左右のキールは不鮮明になり、成体では中央部のみの1本になる。
甲羅長は15~20cm程度で、メスの方がオスよりも大きい。昼行性で小魚や水草などを食べる雑食性だ。
子ガメは甲羅の模様からゼニガメ(銭亀)とも呼ばれ、夜店や観賞魚店で売られていることがある。
外来種との競争、水質汚染や護岸工事などの河川改修の影響もあって、個体数は減少傾向にあると思う。
地味な色、容姿、全体の雰囲気などから、古絵巻にも描かれていそうで、本種はいかにも日本らしいカメであると思うのは私だけだろうか・・・。
ニホンスッポン
流れの緩やかな河川の中下流域、田んぼの周囲の用水路や河川でよく見かける。汚水にも比較的強いと思う。
ほぼ完全な水生で魚、水生昆虫、甲殻類、両生類などを食べている。体色はオリーブ色から薄褐色で、砂泥底の色と同じになっている。
本種といえば「噛み付くとなかなか放さない」ことが有名だ。もともと臆病な性質で防御のために噛み付こうとする。
首は甲羅の2/3くらいに伸び、思った以上に伸びるので取り扱いには注意が必要。
無理に引き離そうとすると首を引っ込めさらに強く噛み付くが、噛み付いて放さない場合は、体ごと水に付けると簡単に放してくれる。
甲羅は柔らかく分厚い皮膚で覆われており、周縁部はグニャッと曲がる。
これは甲羅が退化したものだが、そのおかげで水中での皮膚呼吸能力が飛躍的に向上しているんだそうだ。
鼻の先がシュノーケルのように伸びており、浅い水場では砂に体を潜らせたまま、鼻先だけを水面に出して呼吸ができる。
甲羅長は30cm以上とかなり大きくなり、悠々と水の中を移動する姿は大きな円盤が水底すれすれに移動しているように見える。
いざというときには素早く移動することもでき、そのときの動きは我々が一般に想像するカメのそれとはとても思えない。
時には砂煙を巻き上げながらあっという間に姿を消してしまう。底砂に潜ることも多く、まるで大きな図体の忍者である。
ニホンイシガメ×クサガメ(交雑種)
ニホンイシガメとクサガメの交雑種で、ウンキュウとも呼ばれる。両者が好む生息環境にずれがあるため本来あまり交雑は起きないと思われるが、
人為的な生息地改変や放流などにより自然界でもまれに見られるようだ。左写真の個体は河川中流域で出会った個体。
てっきり純粋なニホンイシガメと思い込み、お恥ずかしいことに、当サイトで約3年半もニホンイシガメとして紹介していたのだが、
交雑個体ではないかとご指摘を頂いた。
不思議なもので、素人ながらも交雑かもしれないという疑いの目で見ると、背甲の隆起(キール)がニホンイシガメにしては強く、
また首のあたりに黄色筋模様が見られるなど、確かにこの個体にはクサガメのような特徴が確認できる。
さらには、第一椎甲板が第二縁甲板に接するというイシガメに多く見られる特徴がありながら、
ニホンイシガメにはなくクサガメに見られる瞳の横の黒い帯模様が確認できる(縮小したこの写真ではややわかりにくい)。
これらのことなどから写真の個体はニホンイシガメとクサガメの交雑個体と判断した。
両者を数多く見ていると典型的な交雑個体はすぐにわかるようになるとのことなのだが、経験の少ない私はまだまだ勉強不足。
しかしこれを機に、より注意深く観察するアンテナは身についた。ご指摘を頂いた方に感謝。
クサガメ ~国外外来種~
主に平地の河川や用水路、ため池などに生息し、岸辺で甲羅干し(日光浴)をしている姿を見かける。
イシガメに混じって神社の池でもよく見かけたが、今ではほとんどが後述のミシシッピアカミミガメに取って代わってしまった。
全長は30cm程度で背甲の3本の隆起(キール)が目立つ。
子ガメは甲羅の周囲が黄色で縁取られ、ゼニガメ(銭亀)キンセンガメ(金銭亀)の名で売られていることがある。
若い個体では頭や首の黄色筋模様がよく目立つが、大きなサイズになると全身が真っ黒になる傾向がある。
雑食性で水草、小魚、水生昆虫、甲殻類などを食べる。
私の田舎では田んぼに水が入った頃、水田を横切る道路上で車にひかれ潰されたカメを多く見かけた。
ほとんどが本種で、特に雨の日の後が多かった。
登下校途中に、歩いている本種を傘で突いて遊んだりもしたが、今ではそのような姿もあまり見られない。
道の両端は宅地に変わり、田んぼに接している道路でもその両脇に深いコンクリート水路がつくられた。
それを乗り越えて道を渡ることは困難である。しかし「車にひかれなくなったので良かったね」ではない。
生息環境を狭めたり、自由に移動できる環境を配慮なくなくしてしまった方が圧倒的に良くないと思うからだ。
水質にはかなり強いようで、村のドブ掃除をしているとドブの中から掘り出されることがあった。
クサガメ(臭亀)の名の通り本当にドブ臭い忘れられない悪臭を放つ。
子供の頃はドブや泥の中にいるからその臭いが体に染みついて臭いんだと思っていたが、
本当は危険を感じたときに臭腺から出す分泌液によるものらしい。これまでは在来種とされてきたが、本種が外来種であると発表されている。
18世紀末に持ち込まれた朝鮮系と、それとは別にペットとして輸入された中国系のものがいるそうだ。
子供の頃からなじみのあるカメなので、複雑な心境である。
ミシシッピアカミミガメ(幼体=ミドリガメ) ~国外外来種~
アメリカ原産の国外移入種。湖沼や河川の中下流などの緩流域にいる。甲羅長は30cmにもなる大型のカメ。
頭部側面に鮮やかな赤色のスジが入り、アカミミという名前の由来となっている。
本種の幼体はいわゆるミドリガメである。鮮やかな緑色で可愛らしく、幼稚園の教室でも普通に飼われている。
年間輸入量は、90年代には数百万匹、近年でも数10万匹にものぼるといい、ペットショップや祭の夜店などでよく売られている。
過去の大ブーム期には、子供のいるほとんどの家で飼われていた。
成長に伴い甲羅の鮮やかさや模様が消えていき、深緑色になる。頭部や足にある黄色のスジ模様や鋭く長い爪など、いかにも外来種の雰囲気がある。
丈夫で長生きする上、成体になると攻撃的になり、もてあまして遺棄されてしまう場合が多い。それらが各地で野生化、繁殖している。
大量に流通していることに加え、汚染に強く繁殖力が旺盛な生態が、河川の環境悪化に加えて増殖に拍車をかけているのだろう。
日本生態学会により侵略的外来種ワースト100に選ばれており、本種が定着している地域では在来種が確実に駆逐されている。
またレンコンや花ハスの食害が発生し防除活動が行われているところもある。
外来生物法指定の折、国は本種を特定外来生物の指定に踏み切れなかったそうだ。
それは指定したとたんに、少なくとも数十万匹と言われる国内の大量の飼育個体が、一斉に遺棄されることを危惧したからと言われている。
しかし、状況を重く見た環境省はついに2021年7月、新たな規制の仕組みを用意し、輸入や販売、野外への放出を禁止する方向で検討をはじめ、2023年6月1日からは外来生物法に基づく「条件付特定外来生物」に指定した。
現在は、捕ったり、自宅で飼ったりすることはできるが、野外に放したり、逃がしたりすることが法律で禁止されている。
販売や頒布を目的とした飼育等(飼育・栽培、保管又は運搬)、販売・購入・頒布も同様に禁止だ。
違反すると罰則や罰金の対象となる。
フロリダアカハラガメ ~国外外来種~
ミシシッピアカミミガメ同様、アメリカ原産の国外移入種で、甲羅長が約30cmになる大型のカメ。
背甲の色は黒っぽく肋甲板に太い橙色の模様が入り、頭部も黒色で数本の黄色いラインが入る。しかし色彩や斑紋のパターンは個体差が多いようだ。
幼体は緑色と薄黄色からなる細かいウネウネした模様を背甲にもつ。
流れが緩やかな河川や池沼などに生息し、特に水草が繁茂したようなところを好むそうだ。
あまり大量に流通しなかったとはいえ、ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)と並んで流通するカメであり、
逃げ出したり遺棄された個体が神社の池や河川などでしばしば見らる。左写真の個体も淀川から取水する用水路で捕れたものだ
(最初はキバラガメとして本サイトで紹介していたが、フロリダアカハラガメに訂正して紹介する)。
生態が全体的にミシシッピアカミミガメと同様なので、定着することで生態系に影響を及ぼす懸念があるとされ、
本種を含むアカハラガメの仲間は属単位で外来生物法の要注意外来生物に指定された。
2015年に生態系被害防止外来種における定着予防外来種のうち「その他の対策外来種」に属単位で指定されている。
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※本ページで紹介しているカメ類についてご指摘を頂きましたAさまに感謝いたします。
created:2012/1/13