アカオビシマハゼ Tridentiger
trigonocephalus
ハゼ科チチブ属
【生息場所】
内湾、磯場、潮溜まりなど比較的塩濃度の高いところを好むが、河川流入の影響がある汽水域でも見られる。
【外観・生活】
全長は8cm程度。体は円筒形でボテッとした感じでチチブによく似ている。はっきりと違うところは、
シマハゼという名前の由来になったと思われる明瞭な暗色縦帯を2本だ。
1本は眼の上部から背面を通り尾びれ上部に直線状に走り、もう1本は頭部をハチマキ状に包み体側中央を走る。
体色はかなり薄い黄褐色から濃褐色まであり、短時間にコロコロ変わる。濃い褐色をしている場合は縦帯がほとんどわからない。
過去に同一種として扱われていたシモフリシマハゼは、さらに本種とそっくりだが、
本種は尻びれの基部付近に橙色や朱色の縦帯があること、のどのあたりには小白点がないこと、
胸びれの一番上の軟条が遊離していることで区別ができる。
繁殖期は春から初夏で、カキ殻の内側などに産卵し、他のハゼ同様に雄が卵を保護する。動物食で多くの個体は1年で成熟し死亡するそうだ。
【捕る】
汽水域では転石や障害物などの間にいるので、タモ網を構えて足で追い込む。
【その他情報】
過去には本種とシモフリシマハゼは同一種「シマハゼ」として扱われていた。これを2種に分類したのは明仁上皇で、いわれのある魚なのだ。
船舶のバラスト水に混入し、アメリカやオーストラリアで定着しているという。残念なことだ。
【コメント】
塩濃度が高いところを好むため、河川で出会う機会は少ない。見た目は同所で捕れるチチブによく似ている。
体色が薄い場合は縦帯が明瞭なので、チチブとの違いがわかりやすいが、体色が濃い場合はかなり紛らわしい。
バケツに入れた個体を眺めながら「縦帯あるかぁ?実はチチブか??」と頭を傾げることは本種あるあるだ。
本種は海水域にも多く、海産魚として扱われていることも多い。
しかし本ページに掲載している個体はいずれも河川下流域の干潮時に浅い水辺で捕ったもので、
例えば下の写真の3つ目から6つ目の個体を捕った場所の塩濃度をそれぞれテトラのハイドロメーターで測定すると11‰~14‰だった
(一般に海水は35‰程度なので濃度はその半分以下)。
大型本の山渓カラー名鑑・日本の淡水魚には写真も掲載されていないような扱いだし、海や塩濃度の高い汽水域にいるとされることから正直迷ったのだが、
本サイトでも紹介することにした。本種は立派な汽水魚であ~る。
秋の初め、
カキ殻がつく転石をひっくり返すとタモ網に入った。ずんぐり体形の黄褐色の体で暗色縦帯が2本見られる。全長約5cmの個体。
同所で捕れた小型個体。
全長4cmに満たないくらい。体色が薄いと縦帯も明瞭!
全長約6cmの暗色の個体。
縦帯はややわかりにくい。川底にあったヨシの根の塊に身を隠していた。
全長約4.5cmの個体。
本種の大きな特徴である体側の縦帯がわかりにくい。ほら、チチブに似ているでしょ。
上と同じ個体。
体色はコロコロ変わる。薄褐色の時は縦帯がよく目立つ。
上の個体と同時にタモ網に入った
やや小型の個体。全長は3.5cmだった。
干潟の石の陰で捕まえた。
アカオビ(赤帯)の名の通り、尻びれの基部付近に赤い帯があることがわかる。
チチブと間違うぐらい体色は濃くて、体側の縦帯はかなりわかりにくいな。
夏に捕まえた
全長2.5cm程度の幼魚。カキガラの隙間に身を隠していた。採捕時は本種の特徴である縦帯がはっきりと出ていたが、
撮影時は体全体が濃褐色になっていて、わかりにくなっていた(よ~く見ると確認できる)。
胸びれの一番上の軟条が
大きく遊離していることが特徴だ。この写真では体と重なっていて少し見にくいが、わかるだろうか。
尻びれ基部に
橙色のラインがある。
真上からみるとこんな感じ。
縞模様は吻から眼を通り尾びれまで続く。海の魚にいそうな模様、シルエットだな。
暗色の別個体。
尻びれの基部が朱色だ。
これがよく似たシモフリシマハゼとの違いのひとつとされる。
シマハゼの名の由来となった
シマを正面から見るとこんな感じ。1本は眼から背面に、もう1本は眼を通りぐるりとハチマキ状に走る。
ほほにはチチブのような白色斑
点が蜜に散在する。
正面から。
体を通る縦帯が特徴で、ハチマキを巻いているようにも見える。
頭部側面には大きな白点がまばらにあるが、シモフリシマハゼのようにのどの辺りには見られない。
created:2014/10/1