アマゴ Oncorhynchus
masou ishikawae
サケ科サケ亜科サケ属
【生息場所】
年間を通じて水温20℃以下の渓流にすむ。淵頭の落ち込みや淵から流れ出る瀬の流れのあるところの表層部に静止してエサを待っている。
比較的開けた場所に多いようだ。
【外観・生活】
日本固有亜種で、全長は25cm程度。
流線型の美しい魚体で、体側中央に並ぶ暗青緑色をした大きな楕円形のパーマークと、体側に散在する朱色斑点が特徴だ。
流れのあるところで上流に向かって泳ぎながら定位していて、付近に落下または流下してくる餌を食べている。
繁殖期は10月から11月。マス類の産卵の様子は自然科学番組でもよく放映されるが本種も同様で、
雌が川の浅瀬に産卵床を堀り、雄は他の雄の侵入を防ぎながら産卵、放精するというもの。一般には最も大型の雄が雌を獲得するそうだ。
孵化した稚魚は翌早春に浮出して、最初は岸近くの浅く流れの緩いところなどで生活をはじめ、
5cm程度に成長すると徐々に流れの速い流心部に移動して、なわばりをもちながら主に流下昆虫を食べて成長していく。
稚魚の間はユスリカ、カゲロウ類の幼虫、ミジンコ類などの小型底性生物を食べ、
未成魚や成魚は冬から春にかけてカゲロウやトビケラなどの水生昆虫を食べ、夏には陸生の落下昆虫を主に食べるようだ。
秋には10cm、2年で15cm、3年で20cm程度になる。
【捕る】
成魚は釣りで捕る。現地の川虫、イクラ、ミミズを使ったエサ釣り、フライやルアーを使った疑似餌釣りなどバリエーションがある。
大変敏感な魚で、人の姿を見たり音を聞くとエサを食べないそうで難しいと聞く。
春のはじめには流れの緩やかな浅いところで稚魚が見られる。ただし本種の採捕については、多くの都道府県で全長制限が定められているので注意が必要だ。
【その他情報】
アマゴとサツキマスは同種。降海型や降湖型をサツキマス、河川残留型をアマゴという。
日本固有種で、地理的に生息地が異なるヤマメとは亜種の関係にある。一般には両者は体側に散在する朱色斑点の有無で区別が可能だ。
ただし、稚魚の間は朱色斑点をもたないので区別は難しい。
大変美味しく、商業的価値が高い魚種なので養殖されたものが自然分布域を考慮されずに広く放流されている。
ヤマメの生息域にも放流されているそうで、交雑などが問題になっている。
降海した個体(サツキマス)は成長がよくて30cm程度になって河川に遡上してくる。琵琶湖にも降湖するサツキマスがいるそうだ。
【コメント】
渓流の女王と呼ばれるヤマメと並んで、大変美しい魚である。
平地でフナやコイといった地味な魚たちを相手に遊んでいた子供の頃から、本種に対しては何か憧れのようなものをもっていた。
渓流には縁遠いくせに、本種が特集された釣り雑誌やフライフィッシングの本を買ったこともある。
おそらく本種のどこか気品のある美しい姿に魅了されていたのだと思う。
複雑に流れる渓流の流心部で巧みに泳ぎ回る本種を、タモ網一本で簡単に捕れるはずもなく、今でもあまりご縁のない魚ではあるが、
春の稚魚や幼魚であればたまに出会うことがある。
タモ網に入った個体を見つけた瞬間は嬉しいのに、捕ってはいけないものを捕ってしまったような、どこか後ろめたい気持ちになってしまう。
やはり私からすると少し近寄り難い高貴な魚なのである。
春、水が増えた川でタモ網に入った幼魚。
トップ写真と同じ個体だ。体側には特徴的なパーマークが並ぶ。全長4.5cm程度とまだ小さいので朱色の斑点はまだ現れていない。
早春の河川で捕った全長4cm程度の幼魚。
岸に近い流れの緩やかなところでタモ網に入った。
幼魚を上から。ほっそりしている。
大きな目に大きな口。いたずらっぽい顔をしている。
トップ写真と同じ個体。口には小さな歯が並んでい
る。
ごくごく浅いところで捕った全長3cm強の個体。
水量が増えて普段は水につからないような、緑の草が生えているところだった。体側に薄っすらとパーマークが並ぶ。
上と同日に捕った別個体。
何かを食べたようでお腹がやや角ばっている。どんどん食べて早く大きくな~れ。
全長2.5cmを超える程度。
早春の雨の翌々日、いつもよりやや流れが強い河川で岸草の中でタモ網に入った。
体色はかなり黒っぽく、小枝などのゴミと間違えるところだった。浮上して数週間程度?
口は体のサイズの割に大きい。
わかりにくいが、ごく小さな歯が並んでいる。
※ビワマスが遡上、産卵する琵琶湖流入河川の個体は、ビワマスの可能性もあるため掲載しない(2019/2/13)
created:2015/3/25