アシシロハゼ Acanthogobius
lactipes
ハゼ科マハゼ属
【生息場所】
内湾に生息するが、河川汽水域の砂底や砂礫底にも生息している。塩濃度に対する順応性は高く、ほぼ海水から淡水まで生息する。
【外観・生活】
全長は9cm程度。体は細長く薄褐色で腹側は白い。特に未成魚はマハゼによく似ているが、
頭部はより小さくて丸く、第1背びれ以外の鰭条数が少ないこと、頬やえらぶたに鱗がないことなどから区別できる。
成魚では雄雌ともに体側に10から12個の細い白色横帯が並ぶことが特徴で、雄の方がより太く明瞭。さらに雄の第1背びれの棘は糸状に伸びる。
雌は第1背びれ後方に黒色斑が出て、腹が薄黄色になる。
繁殖期は初夏から初秋と長く、汽水域の石の下や貝殻の下面に雄が巣をつくり、産み付けられた卵は雄によって守られる。
孵化後しばらくは浮遊生活を送り全長15mm程度で着底する。1年で5cm程度になり成熟するが、2年を要する個体もいるらしい。
雑食性で、底性動物や藻類などを食べるが、春には近縁のマハゼ稚魚を大量に捕食しながら成長するそうだ。
【捕る】
タモ網で捕る。多くの個体が確認できるときは、タモ網を底に付けて引きずるだけで捕ることができる。
石や障害物などの下を蹴り込んで捕ることもできる。釣ることもできると思う。
【その他情報】
奄美大島と沖縄には琉球列島固有のミナミアシシロハゼが生息している。
【コメント】
体側に並ぶ細白い横帯が特徴のハゼ。ユニークな模様なので、これが確認できれば本種だとわかる。
しかし、この特徴は未成魚には見られない。だから、紛らわしい。
未成魚は体にゴマゴマ模様がもつことが特徴だが、同所で捕れるゴクラクハゼやヒメハゼ、ウロハゼなんかとよく似ている。
個体のサイズは小さいし、違いは些細だし、よく目を凝らさないといけない。
成魚のみならず、未成魚の特徴も頭に入っていないとその場で区別できない。
ハゼ類の幼魚は難しいんだよねー、ほんと。知識と経験(慣れ)がものをいう。
本種は季節ごとに出会う、出会わないが比較的はっきりしているのも特徴だ。
ザクッと言うと、春は多くの個体が捕れるが、よく似たマハゼが成長する夏の終わりや秋になるとあまり捕れなくなる。
それはまるで成長したマハゼを避けるようにどこかに移動しているかのよう。
同じ汽水エリアでも時期が違えば出会える魚も違う、本種はそう教えてくれる。
夏に捕まえた全長約6cmの個体。
体はごま塩模様のある薄褐色。腹側は白い。本種の特徴である白色横帯が体側に見られる。
春の干潟で捕まえた。
全長は5cm程度で、体側に本種の特徴である白色横帯がうっすらと現れている。わかりにくいが背びれ後方に黒色斑が見られるので雌のようだ。
これも春の干潟で捕まえた個体。
未成魚は体側に白色横帯が見られず、褐色の点模様が散らばる。マハゼに似ている。
本種は春になると
たくさんの個体が出現する。夏や秋になるとマハゼが優先するが、その間、いったいどこにいってるんだ?
早春の干潟で捕まえた個体。
全長4.5cm程度。写真のアングルもあると思うが、この個体、本種にしては頭部がやや大きめに見える。
ハゼ類は小さくてよく似ているのでいつも迷ってしまうが、この感じはマハゼみたい。
全長6cmほどの個体。
褐色の体に暗色斑が散在する。マハゼのように体側に不規則に並ぶ暗色斑をもたない。
小さい個体はゴクラクハゼにも似ていて紛らわしい。今年も潮が引いた干潟でたくさん出会えました。
春の干潟で捕まえた。
砂泥底にタモ網をあて引きずりながら歩いて捕まえた。春を中心に出会う魚だ。
春に捕った個体。
全長4.5cm程度。ヒメハゼとともに河川汽水域の浅瀬にたくさんいた。湧き水が染み出す先に多かったように思う。
秋にはいなかったのに、歩きながらタモ網を引きずるだけで捕ることができるほど大量にいる。
秋の干潟で捕まえた幼魚。
全長は4cmに満たない程度なので、体側に白色の横帯は見られない。
黒ゴマを振ったような体色をしていて、第1背びれの縁が薄黄色で縁取られている。
同所で捕まえた個体。
未成魚はほんとマハゼに似ている。頭部がやや小さいことなどから区別できるが、写真で見るより実物で見た方が違いがわかりやすい。
秋の干潟でタモ網に入った雄。
全長約5cm。背びれの刺が糸状に伸び、体側には白色の横帯が並ぶ。この個体はゴマゴマが目立って、体色がやや赤っぽい。
上と同時に捕まえた小型個体。
体側に白い横帯はなく、背びれの刺も糸状に伸びていないが、それ以外の形態的特徴は同じ。
冬に捕まえた全長約5cmの個体。
体のごま塩模様がわかりにくく、マハゼのように見えるが、頭の小ささなどから本種で良いと思う。
冬に捕まえた個体。
全長は3.5cm程度。砂泥底にタモ網をあててざぶざぶ歩いてすくうと、こんなサイズの個体がたくさん入った。本種が占有しているようだ。
夏に捕まえた
全長2cmくらいの小さな個体。体全体に濃褐色の小斑点が散らばる。汽水の砂底でタモ網を引きながらザブザブ歩いたらポツポツ入った。
小さな個体は
他種とよく似ていているので同定が難しい。体側に点々模様があるようにも見えるのでヒメハゼかと思ったが、受け口になっていないので違う。
ピンボケしているが、
ひれを全開するとこんな感じ。カッコいい!
体をひねったところ。
第1背びれや尾びれ上部2/3に斑が並んだような模様をもつが、尻びれはと尾びれ下部1/3は白くて黒色で細く縁取られる。
真上から。
吸盤状の大きな腹びれをもつ。
立派な体つきの個体。
体形はマハゼによく似ているなー。
秋に捕まえた雄の頭部。
不明瞭な斑が散在する。頭をやや持ち上げているからか、吻はとがって見える。この個体、つぶらな瞳だな・・・
どこかもの悲しいような、切ないような、何か言いたげな・・・。
上あごがわずかに出ている点も
マハゼに似るが、頭部はより小さく、そのせいか吻もより短い。
爬虫類系だな。
マハゼによく似ていているが正面から見ると違う。ちょっと悪そうな顔つき。
幼魚。
砂にまみれたような顔をしているが、かわいい。
created:2016/4/2