ビワコガタスジシマドジョウ Cobitis
minamorii oumiensis
ドジョウ科シマドジョウ属
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【生息場所】
琵琶湖固有亜種で琵琶湖に流れ込む小河川や用水路に生息している。砂泥底や泥底を好むようだ。
【外観・生活】
雄と雌のサイズ差が大きく、雄は全長5cmほどで雌は8cmを超える。体は薄褐色で明瞭な縦帯模様があり、全体的に透明感が強い。
同所に生息するオオガタスジシマドジョウ(以下オオガタ)によく似るが、オオガタほど大きくならないし、特に雄は弱々しい感じを受ける。
雄よりも雌の方が大きく、成長した雌は背が盛り上がり尾にかけてスーッと細くなる特徴的な体形をしている。
よく似たオオガタとの違いは、尾びれ基部の下の暗色斑が、オオガタでは濃いのに本種はやや薄いという点、
胸びれ基底から腹びれ基部までの筋節数が、オオガタでは14~15(通常14)に対して、本種は11~14(通常12)とより少ない点などがある。
産卵期は5~7月で、田植えのすんだ水田に遡上して産卵するようだ。水生生物や藻類、泥の中の有機物などを食す雑食性だ。
【捕る】
砂泥底をかき混ぜるように足で追い込んで、タモ網で捕る。泥砂ごとタモ網ですくうやり方で捕ることもできる。
【飼う】
飼育はとても難しい部類。病気になることはないがとかく痩せやすい。
フレーク状、小粒の人工エサ、冷凍赤虫、潰した野菜などを行き渡るようにしても痩せてしまう。
エサを落とすとすぐに底砂から出てきてモフモフするんだけど、腹に入れずに鰓から出すことも多いんだよね・・・。
【その他情報】
河川改修や圃場整備などによる生息地および産卵場所の減少により、近年減少が著しい。
これまではスジシマドジョウ小型種琵琶湖型と呼ばれていたが、
2012年4月25日以降に新しく「ビワコガタスジシマドジョウ」という標準和名が与えられた。
コガタスジシマドジョウには5亜種あり、東海、琵琶湖、淀川、山陰、山陽に分布している。
そのうち、淀川水系に生息していたヨドコガタスジシマドジョウは、 かつて淀川のワンドに多産していたというが、
1996年に宇治川で雌の成魚が1個体採集されて以来、今日まで一度も確認されていない。絶滅した可能性が高いと言われている。
【コメント】
琵琶湖が育んだ繊細で小さなドジョウ。実際は雄と雌の印象がかなり違う。
雄はより小さくて弱々しい一方で、まっすぐ明瞭な縦帯がかっこよさを引き立てる。
雌はオオガタと迷ってしまうほど大きくなり、背びれの後方からくびれるセクシーな体形が魅力的だ。
捕れると「あぁ、今年もちゃんといる」と安心する、そんな魚だ。
本種を最初に捕ったのは、通りがかりに何気なくタモ網を入れた水路。「あ、こんなところにおったのか」と思った。
やっと出会った本種、雌1匹だった。そのときは同所でオオガタの雄や雌も捕れたが、本種の雌の姿はそれらとは明らかに違っていて、
特に観察ケースに入れた瞬間、成長した雌のくびれというかメリハリのある体形が目に飛び込んできて、これは本種とピンときた。
それは琵琶湖博物館で展示されていた実物や、参考にさせて頂いているホームページなどで見た本種の写真や説明が頭の片隅にあったから。
やはり日頃からいろいろ見ておくことは大事だね。生息環境が悪化し、近年個体数の減少が著しいと聞く。
繊細な印象を受けるのでちょっとした環境変化であっという間にいなくなってしまいそうで心配するが、何とか存続し続けて欲しい。
本種にとって好適な生息環境が維持され、あちこちでいっぱい出会えるようになったら・・・ええなあ、そうなったらほんまにええ。
春の雄。
琵琶湖に近い水路の砂泥底でタモ網に入った。スーッと細長い体形で体側には明瞭な2本の縦筋がある。
頭をちょこっと持ち上げてかわいい。
別場所の雄。
白っぽい体に、細くシンプルな縦筋が良い。尾びれ基部の上下斑は比較的はっきりしている。
下方はやや不明瞭とされるが繁殖期の雄は濃くなるようだ。尾び後端は黒く縁取られる個体が多い。
水路でタモ網に入った
雄。全長5cmぐらい。縦筋は細くてとても繊細な印象だ。本種は同じ水路でもやや泥っぽいところで捕れる。
春に捕まえた
全長8cmほどの雌。雌は雄より大きく、このサイズだとかなり体格差がある。腹部が大きいので、おそらく卵をもっている。
春に捕まえた雌。
同時に捕れた雄より一回り大きいけど、全長5.5cmぐらいしかない。1年目の雌かな。雄と間違えそう。
別場所の雄。
体はスーッと細くて透明感がある。全長は約5cmと小さく、繊細で弱々しい印象をもつ。
上と同所で捕った雌。
全長は8.5cmもあった。同時にオオガタスジシマドジョウも捕れた。
サイズは同じぐらいだが、やや猫背で、背びれから尾にかけて体高が低く、より寸胴なオオガタとは異なる。
春の終わりの雄。
トップ写真と同じ個体。全長約5cm。田植えが終わり活発に動き出したようだ。水路で泥ごとすくって捕まえた。
タモ網を揺すると泥の中で細長い個体が現れてくねくねと動く。
透明感のある体に、
太い暗色の縦筋が体側に走る。繁殖期にはその縦筋が濃くなるようだ。尾びれ後端は黒く縁取られる。
体は繊細で弱い印象だ。
全長は5cmを超えるくらい。流れがあっても体後ろ半分をニョロニョロニョロ~っと高速でくねらせながら素早く泳ぐ姿を見た。
小さな体に似合わないすごい勢いだった。ちょっと驚いた。
ビシッと入った
縦筋がかっこいい。尾びれがかけているけど、何者かにかまれたのだろうか。全長は5.5cmくらいの雄だ。
色白の雄が捕れた。
いや~美しいな~。尾びれ後端の黒い縁取りはやや太く、端っこが丸い形状をしていて、やわらかい印象を受ける。
長い水路の中でも好む場所があるようで、ある底質の範囲でまとまって捕れる。
梅
雨のはじめに
捕まえた雌。比較的流れのある水路でタモ網に入った。お腹が大きかったので卵をもっていると思う。
なかなか出会うことは少ないが、いるところにはいる。
全長約6cmの雌。
本種の雌は尾にかけてぐーっと細くなる特徴的なスタイルをしていて、体形にメリハリのない雄とは異なる。
捕れたオオガタ
スジシマドジョウを透明ケースに入れてみると、1匹だけ仲間外れの個体が混じっていた。
オオガタスジシマドジョウの雌は寸胴だが、この尾柄の「くびれ」は紛れもなく本種の雌でしょう。
梅雨が終わる頃の雌。
この個体は【コメント】でも記した一番最初にであったビワコガタスジシマドジョウだ。全長はちょうど8cmだった。
背びれ後方のくびれ、いいでしょ。卵をもっていると思われる。
同時にタモ網に入った
雌雄。上が雄で下が雌。上下に並んでくれた。
手前が雌で奥が雄。
この透明感がコガタらしい。同時に捕れるオオガタスジシマドジョウにこの透明感は・・・ないね。
同所で捕まえた
オオガタスジシマドジョウと雄同士を並べみた。奥のオオガタは体ががっしりしていて、全長の差以上の体格差を感じる。
オオガタスジシマド
ジョウと雌同士を並べてみた。
雌同士でもこんなに違う。
春の雄を真上から。
雄は胸びれが大きい。背には大きな斑紋が並ぶ。
春の終わりの雄。
全体的にほっそりした体。尾びれ後端の黒い縁取りは動くときに意外と目立つ。
初夏の雌を上から。
上の個体とは異なり、背面は斑紋ではなく一本の筋模様だ。
梅雨が終わる頃の雌。
真上からだとオオガタの雌と区別が難しい。頭は三角形で吻がとがっていて、いかにももぐるのが得意そうだ。
雄の頭部を拡大。
胸びれ基部には円形の骨質盤がある。眼の下には眼下棘と呼ばれるトゲが隠されていて、下手に触ると逆立てたトゲでチクッとやられる。
スジシマドジョウあるあるだ。
胸びれ基底から
腹びれ基部までの筋節数は光の加減で数えやすい場合がある。よく似たオオガタスジシマドジョウとはこの数で区別できる。この個体は12かな。
オオガタスジシマド
ジョウの雄(奥)と
ビワコガタスジシマドジョウの雄(手前)。
雄の顔。
吻は緩い弧を描き、同所に生息するオオガタスジシマドジョウと比べると優しい雰囲気が漂う。口ひげは短い。
雌の顔。
雌は体高がある分、よりもほっそりしているように見える。
頭部を持ち上げた雄。
胸びれを立てて、たまにこんなポーズをとる。とてもかわいい~。
同時に捕った雄と雌。
雌は上の個体で全長8.5cmを超え、雄は下の個体で全長5cmほど。雌はでっぷりしていて、一方の雄はスマートなので、こんなにも体格差がある。
観察ケースに入れて眺めている最中に、雄が雌のお腹に巻き付いた!産卵したわけではないけど、本種のそんな瞬間が見れて驚いた。ちょっと感動したわ~。
上が本種で、
下がオオガタ。本種の筋節数はオオガタよりも少ない。本種は11~14(通常12)でオオガタでは14~15(通常14)だ。
created:2015/7/18