ブルーギル Lepomis macrochirus ~生態系を攪乱するヨコシマな魚~
サンフィッシュ科ブルーギル属

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ブルーギル

【生態】 止水域を好み、湖沼、池などに生息している。残念ながら、生息地、生息域ともにかなり多い。 たまに流れのある用水路でも捕れることがあるが、これは上流のため池などから流出した場合が多いと考えられる。えらぶたにある青く丸い部分が名前の由来。 小型のときはトップ写真のように体側に縞模様があるが、成長につれて薄くなっていく。 食性は動物食性の強い雑食で、水生昆虫やエビ、プランクトン、小魚の他、何でも派手に食べ泳ぐ。 特に逃げる術を十分にもたない卵や稚魚を好んで食すため、在来魚に対する影響が特に大きい。有名なオオクチバスよりタチが悪いのではないだろうか。 繁殖期は初夏で、オオクチバス同様に雄が産卵床をつくり卵を守る性質をもつ。 雌は産んだ卵に見向きもしないが、雄はせっせと産卵床を掃除し、卵に新しい水を送り続け、 巣に近づくものがあれば、ほおを膨らませひれを張って威嚇、攻撃して追い払う。 この行動は生まれた子供が巣の近くにいるときも行われるそうで、種族維持の本能が強いことがわかる。 繁殖力は旺盛だ。魚体が小さいため護岸の石段など狭いスペースでも産卵できるそうで、オオクチバスより適応範囲が広い。 少数で生息していることはなく、いるところには高密度で生息していて、競争力、繁殖力が強く優先種になりやすいようだ。 単調な環境である都市部のコンクリート護岸のため池では、ほとんどが本種という池がざらにある。
【移入の経緯と現状】 原産地は北アメリカ中南部で、サンフィッシュ科で最も分布の広い魚と言われている。 それは養殖やオオクチバス属魚類のエサ、スポーツフィッシィングの対象としてなど、様々な目的で世界中に移植されたためだ。 日本には、1960年にシカゴ市長から当時の皇太子に贈呈され、水産研究所で繁殖に成功したものが鑑賞目的や研究用として全国に出回り放流された。 食用として評価もされたが、味がいまいちなのと成長スピードが遅くコスト的に難しかったため、食用には使えなかったらしい。 従って、水産試験場や養殖業者の飼育池から逃げたものなども相当あるそうだ。 さらに、当時脚光を浴びていたオオクチバスのエサとしての放流や、琵琶湖産アユに混じった拡散もある。 釣りの相手として遊んでいた子供達が、ついつい持ち帰り、近所の川や池に捨てるというような悪意なき放流もかなりあったと思われる。 全国各地に拡散した現在、その強い繁殖力と幅広い食性が問題になっている。
釣りキチであった私の記憶では、1980年過ぎから近所のため池などで釣れ始めた。 これまで遊んできたコイ、フナ、モロコといった在来魚にはない体の形やひれの様子、体の模様などが珍しく、釣れた当初はうれしかったが、 超簡単に釣れる上、そのうち本種ばかりが釣れるようになったため、子供ながらに何か複雑な気持ちになったことを覚えている。 現在、外来生物法で特定外来生物に指定されており、飼育・運搬・保管・販売・野外に放つなどの行為が法律で禁止されているほか、 日本の侵略的外来種ワースト100、生態系被害防止外来種リスト・緊急対策外来種などに指定されている。

全長17cmくらいの個体。 ブルーギルのギルとはえらという意味で、えらから突き出た濃青部がよく目立つ。 用水路で五目釣りをしていたらニゴイやフナに混じって釣れてきた。釣った個体数は在来種よりも本種の方が多いという事実にとてもブルーな気持ちなる。

初夏に捕まえた個体。 残念なことに稚魚もたくさん捕れた。オオクチバスも同時に捕れたのだが、このコンビが入り込むと、在来種は壊滅的な打撃を受けることが多い。

ここでもまたこの魚が釣れた・・・。 ゆったり流れる大きな水路では、岸近くに群れているようだ。コンクリート壁近くに餌を垂らすと、次から次に簡単に釣れた。全長13cmくらい。

琵琶湖流入河川で釣った個体。 やや体が青っぽい。

琵琶湖で釣れた個体。 針を外して放っておくと近くで旋回していたトンビが持ち去っていった。

淀川のわんどで捕まえた個体。 市内のわんどはブラックバスを狙う釣り人があちこちにいて、カダヤシだのブルーギルだのがタモに入る。特定外来種ばかり・・・。

郊外を流れる河川の淀みで採捕した個体。 全長は7cm程度。同所ではカダヤシもたくさん捕れた。 桜の花びらが川面にたくさん散って模様を描いていたが、捕れる魚が外来魚ばかりでは台無しだ。

上と同所、同時期捕れた5cm程度の若魚。 本種の特徴であるエラ後端の濃青色はまだ見られない。このくらいのサイズの個体がたくさんいた。

春、 雨で増水した河川の淀みでタモ網に入った。 全長約6cm。太陽の光を浴びてうろこがキラキラ。

春の終わりに捕まえた個体。 水から引き上げたときのこの鮮やかなスカイブルーに驚いた。手のひらサイズだったのでぱっと見たときはタナゴ類かと思った。 この色なに?婚姻色?

初夏の河川で釣った未成魚。 遠くに投げるとかからないのに、コンクリート壁近くに餌を垂らすとすぐに食らいつく。普段から壁近くで生活しているようだ。 本種の特徴であるえらぶた上部の濃青色部はまだ十分に発達していない。

冬の用水路でまた入った個体。 この水路では、数は多くないが小さな個体がポツポツと捕れる。ため池とはつながっていないと思うけど、供給源はどこだろう。外来種はしぶとい。

冬のはじめに捕まえた幼魚。 横縞模様がよく目立つ。水が少なくなった用水路の淀みにいた。 もう慣れたけど、はじめて訪れた場所でも捕れるととても残念な気持ちになる。

雨後の用水路で。 岸よりのボサがある淀みで捕れた。上流のため池などから流れ出た個体と考えられる。

冬の農業水路で捕れた4cm程度の若魚。 上流にはため池がありそこから流出した個体だと考えられる。

全長2cm程度の幼魚。 用水路の淀みでボサを蹴るとタモ網に入った。そこではオオクチバスも同時に捕れたのでイヤな気分。

幼魚を真上からみるとこんな感じ。 体色はオリーブグリーンで縞々模様が見られる。水の透明度が高い場所だと、胸びれをひらひらさせながら定位している姿が見られる。

全長5cmくらいの個体を正面から。 やや尖がったこの口で卵やら稚魚なんかを食べて、在来魚を減らしている。

米国オハイオ州で釣ったブルーギル類。 口と同じほどの太さの大きなワームに食らいついてきた。全長は20cm以上あるが、日本のブルーギルとは体の模様が違うようだ。 原産地である米国にはたくさんのブルーギルファミリーがいるのだろう。

早春、郊外のため池で採捕した稚魚。 出水口の周囲に集団でいたのでタモ網でひとすくいすると、百匹程度が一度に捕れた。 郊外の住宅地にあるため池は、農業用として使われることもなく、池干しなどのメンテもされないので本種がいつまでも大量に生息している場合が多い。

※日本国内で採捕した個体はその場で撮影し、その後適切に処分しました。

last modified:2022/7/2
created:2012/1/7

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