ドジョウ Misgurnus anguillicaudatus
ドジョウ科ドジョウ属

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ドジョウ

【生息場所】 田んぼの中、周囲の用水路、ため池、河川など至る所に生息している。泥底を好み泥によく潜る。産卵期には積極的に田んぼに入り込む。
【外観・生活】 全長は20cmほどになる。土色の細長く筒状の魚体に、5対10本の口ひげがトレードマークだ。体色は茶褐色で背部に不明瞭な斑紋をもつ。 色の濃い個体や薄い個体、斑の散らばりなど、地域性異なのか生活環境によるのか様々な個体がいる。 腸でも空気呼吸ができる妙技の持ち主で、水中の酸素欠乏には強い。 腸の末端部には毛細血管が網目状に発達し、飲み込んだ空気を蓄えガス交換できる仕組みをもっているからだ。 体は微少な円鱗に覆われているが、それを覆う表皮からたくさんの粘液を出しているため、簡単に掴むことができない。 掴もうとしても指と指の間からいとも容易くニュルと抜けてしまう。抜けるあの感触は独特のものだ。 繁殖期は初夏で田植えの終わった水田などで行われ、背びれ前後の体側背側に2つの筋肉の隆起をもった雄が雌の腹部に巻き付いて産卵・受精させる。 雌の腹は鱗が剥がれ、締め上げられた傷跡が残るほど。 冬には10~20cmも泥中にもぐって、多数が集まってまゆのような空洞をつくり、粘液で乾燥を防ぎながら皮膚呼吸をして冬眠する。 イトミミズやアカムシ、水生昆虫や藻類を食べる雑食性だ。
【捕る】 タモ網を使う。底泥を大きくかき混ぜるようにして追い込むと良い。 水が落とされた田んぼや水路のわずかな水たまりに集団になっていることも多く、そのような場合は容易に捕まえることができる。
【飼う】 飼育は容易で人工飼料にもよく慣れる。砂に潜っていることが多いが、砂から頭をちょこんと出しているときのキョトンとした眼が大変かわいい。 丈夫でとっても長生きするので飼育をはじめたら責任をもって最期まで飼おう。
【その他情報】 ドジョウは遺伝的に異なる幾つかの系統があることがわかっていたが、2017年発刊の「日本のドジョウ」において4種に整理され、 従来のドジョウに加え、キタドジョウ、ヒョウモンドジョウ、シノビドジョウという3種の新標準和名が提唱されている。 ドジョウは泥鰌と書くが「泥生」が語源とされ、泥を好む本種の生態を知ればなるほどだ。 柳川鍋などで食用にされ、童謡にも歌われていることから、古くから人の生活に極めて身近な魚のひとつと言えよう。
しかし近年、よそ者が入り込み、在来ドジョウが急速に姿を消している。 ひとつ目のよそ者は、ドジョウはドジョウ(Misgurnus anguillicaudatus)でも「中国大陸産ドジョウ」。 釣り餌や食用などとして輸入・販売された個体が遺棄、放流され、各地で定着、生息域を拡大している。 二つ目は、外来種「カラドジョウ」。これも中国や朝鮮半島から食用ドジョウの輸入に混じって日本に入り込み、 各地で繁殖したり、本種と交雑したりしている。 「中国大陸産ドジョウ」は、在来ドジョウより背鰭分枝軟条数が多く(在来が主に6本に対し、主に7~8本)、 腹鰭・尻鰭・尾鰭間の長さの比が異なる(腹鰭・尻鰭間がより長くかつ、尻鰭・尾鰭間がより短い)特徴をもつ。 また、外来種「カラドジョウ」は、在来ドジョウと比べて口ひげがより長く、尾柄の膜鰭が発達し、体高も体幅も大きくなる傾向にあり、 全体的に太短い体形をしている。 ぞれぞれ上記ポイントで形態的に区別できるとされるが、見慣れていないと一般には容易ではないだろう。 大阪府内では2000年代に入り急速に在来ドジョウが減少し、中国大陸産外来ドジョウが急速に増加していることが明らかにされている。 日本各地で同様の事態が起こっている可能性が指摘されており、在来ドジョウは危機的状況にあると認識すべきだ。
※外来種「カラドジョウ」は こ ちら
【コメント】 コイやフナなどと並んで最もよく知られた淡水魚のひとつ。 ごく普通に見られるが、腸呼吸ができ、皮膚呼吸の能力も高く、酸素が欠乏しがちな泥底環境でも生活できるように進化した特殊な魚だ。 全く派手さがない土色で細長い筒状の体をしていて、体表はヌルヌル。掴もうとしてもなかなか掴めない、あの感覚は独特で是非体験して欲しい。 ドジョウと言えば、幼い頃に魚屋の店先で売られていたドジョウを思い出す。 ベージュ色の大きな桶の中にたくさんの個体が入れられていて、水中をクネクネしながら次から次へと上下していた。 おそらく桶の中は酸欠状態で、ドジョウたちは得意の腸呼吸で、 水面に口先を出して空気を吸い、肛門からプクプクと泡を出しながら身を返すことを繰り返していたのだ。 当時、その上下運動に理由があるなんて思うことすらできなかったが、その様子が面白くて魚屋の前を通るたびに母の足を止めて桶をのぞいていた。 最近、在来ドジョウが急速に減少し、外来ドジョウが急速に増加していることが明らかにされてとても気になっている。 子供の頃に見た魚屋のドジョウ、売れ残りが遺棄される可能性を考えれば、住んでいたところと同じ水系産であったことを願うが、どうだろう。 1970年代後半頃の話で、流通もある程度発達しているとすれば、日本の他地域あるいは中国大陸産のよそ者だった可能性は高い。 当時はただただ純粋にドジョウの上下運動する生態を興味津津で見ていた。適切に扱われていたらいいんだけど、そうでなければ複雑な心境だ。

A.在来ドジョウと思われる個体

春に捕まえた全長約6cmの個体。 冬に休眠していたせいか、ほっそりしていた。農業用水路の岸側に溜まった泥を足でかき混ぜるとタモ網に入った。

農業水路で捕まえた個体。 三面コンクリートであっても枡(マス)などの変化があれば、そこに砂泥が溜まり、生き物が生息できる環境ができる。

春に捕まえた個体。 観察ケースに入れると、上下左右に落ち着きない動きをしながら、お尻なら空気がプクプクプク~。得意の腸呼吸だ。

春に捕まえた全長約11cmの雄。 きれいな水が流れる川であったが、草が生えているところの泥底から出てきた。体は黄褐色だ。

たまりのような場所で春に捕った雄。 全長は9cm程度だったが、体にメリハリがあるというか・・・何か違う。

上の個体を捕った近くの小川で捕った個体。 小さい個体であったが、かなり細長い。手にしたときはタウナギとか太いミミズかと思ったほど。 画像を横方向に引き伸ばしたように見えるが、そんなことしてないよ。

砂泥底で捕まえた雄、 赤褐色の体で全長は9cmぐらい。

上と同所で捕まえた雌。 細長い体でやや大きめの暗色班が比較的目立つ。

春に捕まえた雄。 土色で背景が土だとわかりにくい・・・。背鰭分枝軟条数は6本、 尻びれの位置等の特徴からこの個体は在来系統だ。

大きな個体が捕れた。 全長18cmほどの雌だ。田植えの準備が進む用水路でタモ網に入った。太っとい体にこの長さ、存在感抜群やわっ!

春、三面コンクリートで 砂泥が溜まっているところで捕まえた雄。ボディラインにメリハリがあって、いいスタイルだ。

腹びれ近くに 鱗が剥がれた跡をもつ全長11cmぐらいの雌。産卵時に雄にギューッと巻き付かれたためにできたものだ。 周囲に田んぼがある中流河川では、たくさんのオオシマドジョウが生息する水がきれいな砂泥底でも捕れる。

初夏の淀川流入河川で捕れた雌。 全長14cmぐらい。体高があってずんぐりしている体形だ。肉付きがよくて、背の肉は左右に盛り上がっている。

同所で捕れた雄。 やや口ひげは長いが、背鰭分枝軟条数は6本で、他の形態的特徴を備えている。暗色斑はほとんど見られない。背びれの前方と後方に、産卵時に雌に巻き付くた めのこぶ状突起が見られた。

梅雨入りの曇り日に捕まえた個体。 カジカがいる大きな石がゴロゴロした場所の砂たまりでタモ網に入った。同所ではアジメドジョウやシマドジョウも同時に捕れた。 ドジョウって川の縦方向に幅広く生息している。

真夏の農業水路で捕まえた個体。 冷たい水が勢いよく流れていたが、砂泥が溜まっているところをすくうと姿を現した。

初秋に捕まえた個体。

淀川から取水する水路で捕まえた。 背鰭分枝軟条数は6本、 尻びれの位置等の特徴からしてこの個体は在来系統で良いと思う。

秋に捕まえた個体。 水の透明度が高くさらさら流れる砂底の川であるが、周囲に水田があるから生息しているのだろう。 ずいぶん細長かったので水から上げた瞬間はスナヤツメかと思った。

コンク水路の泥が溜まったところでタモ網に入った。 背鰭分岐軟条数は6本、体色、口ひげの長さ、尻びれの位置などから在来でしょう。体、細いな。

秋の終わり、ワンドで捕まえた個体。 全長7cmほど。良かった、ここはまだ在来が残っていて。

きれいなツートンカラーの個体。 コンクリート水路のマスに溜まった泥の中にたくさんいた。

田んぼ、泥汚れた用水路など、本種はどこにでもいる。

河川中流部で冬に捕まえた個体。 全長14cmくらい。下流側にタモ網を構え枯れた水草を足でほじくると入った。寝ているところを起こしてしまったかも。

冬の農業水路、 砂泥が溜まった場所でタモ網に入った。全長は約7cm。体はずいぶん細いね。

細長い個体。 冬に捕れた個体だから痩せているのだろうか。体色や全身に広がる暗色斑はバリエーションに富む。

口ひげは放射状に広がっていることがわかる。 上から見ると実はかっこいい。

上から。 シマドジョウ種群やスジシマドジョウ種群のような大柄の模様はない。 ちなみに画面上が雌で下が雄。胸びれの形で区別するとわかりやすい。雌は丸い形で、雄は根元に骨質板があり尖った形をしている。

在来ドジョウのボディ後半。 外来で分布を広げている中国大陸産ドジョウと形態的に区別できる。在来は背鰭分枝軟条数は主に6本(外来は7~8本)で、 腹鰭基部と尻鰭起部の長さは、尻鰭基底後端部と尾鰭基部のそれより短い(外来は逆に長い)。

雄の胸びれを拡大。 胸びれ基部には雄特有の骨質盤があり、種類の同定に使われる。斧状をしていて後端は丸い特徴がある。

全長7cmほどの個体の頭部。 放射状に口ひげが広がって、眼がパッチリ。とってもかわいい~。

雄の頭部。 胸びれ基部に骨質盤が見られる。棘状軟条と第1分枝軟条が太くてよく目立つ。 オレンジ色で縁取られる小さな眼は真ん丸で、キョトンとした感じがかわいい。

雄の頭部。 体色は濃くて、口ひげが太短い。ドジョウの顔もいろいろだ。

別の雄。

体は円筒形。 どこか無邪気な感じがしてかわいいね。

ドジョウと言えば、ニョロニョロした体と口ひげ。 トレードマークでもある口ひげは5対10本ある。コイ、ナマズ、モロコの仲間など口ひげをもつ種はいろいろいるが、本種はそれらの中で本数が多い。 こんな顔の”おじさん”いるかも。

全長18cmほどの個体。 太っ!でかっ!口ひげの付け根も太く、顔つきも違う・・・。

同所で捕まえたチュウガタスジシマドジョウと。 口ひげの本数も長さも、頭部の形も、体色も違う。

春に農業水路で捕まえた雌。 でかい!

B.(中国大陸産)外来ドジョウ or 交雑と思われる個体、疑わしい個体

春のワンドで捕った個体。 比較的水の綺麗な砂泥底にいた。体色は銅のような、鈍いゴールドのような、金属光沢をもつ。

上と同時に捕った個体。 尾びれが大きいように見えるのは体をくねっているからかな。 腹部には産卵時に雄が巻き付くことで付いたと思われる傷跡がある。

春に捕まえた個体。 砂泥底でタモ網に入った。金属光沢をもつ黄緑褐色でずんぐりした体をしている。

町の中を流れる川で捕まえた。 この川はイベントで金魚の放流も行われているようなところ。金属光沢があり、在来とは明らかに異なる違和感を覚える。

この個体も鈍い黄銅色。 違和感しかない。

淀川の支流で捕まえた春の個体。 全長12cmくらい。明るい観察ケース内は落ち着かない様子で、右往左往しながら盛んに腸呼吸を繰り返していた。 口を水面に出したかと思うと翻す姿勢で腸から空気がプクプクプク。。。

春に淀川から取水する用水路で捕まえた個体。 赤っぽい体色に暗色斑が散在する。

初夏に捕った大型個体。 全長は15cm程度で体高があり立派な体つきだ。体全体に斑点模様があり、この個体も腹部に傷跡が見られる。

初夏に捕った全長7cm程度の個体。 この個体は口ひげが長く、口ひげの長さと口ひげ基部から瞳中央までの長さがほぼ同じ。他の特徴から外来種のカラドジョウではないとは思うが・・・。

夏の水路で捕まえた。 体は白っぽく、てずんぐりした体形だ。

秋に捕った全長5cm程度の個体。 ずんぐりした体形をしている。田んぼの脇にある水路の泥の中にたくさんいた。

秋分の日に農業水路で捕まえた10cm程度の個体。 晴れの光をあびて金属っぽく輝く。背鰭分枝軟条数は7本で、腹鰭・尻鰭間が長いので、中国大陸由来の外来系統と思われる。 中小サイズのドジョウに加え、メダカ、フナの水田3コンビが一緒に捕れた。

秋、奈良の農業水路の砂泥底でタモ網に入った。 全長約8cm。体には金属光沢があり、はっきりとした「ひょうもん」模様はこの辺では珍しいかも。

冬の個体。 コンクリート水路の泥たまりで底をすくうと泥や落ち葉に混ざって姿を現した。尾びれが再生中のようだ。

冬に捕った 全長5cmほどの個体。今年の春に生まれた個体だろうか。

夏に水田脇の小溝で捕った個体。 全長は2cm程度で小さいが、背鰭分枝軟条数は7本、腹鰭・尻鰭間が長く、中国大陸産外来系統と思われる。 フナやメダカの幼魚に混ざってたくさん捕れた。

中国大陸産ドジョウのボディ後半。 中国大陸産ドジョウは背鰭分枝軟条数は7~8本(在来は主に6本)で、 腹鰭基部と尻鰭起部の長さは、尻鰭基底後端部と尾鰭基底部のそれより長い(在来は逆に短い)。

正面から見た感じでは 在来との違いがわからない。眼はやや大きい傾向?

東京浅草の老舗「駒形どぜう」で頂いた 「どぜう鍋」。お店の方からこのドジョウは国内で養殖されたものと聞いた。肉厚で泥臭さもなくとても美味!なんだけど、もしかしたらカラさんかも?

last modified:2024/4/11
created:2012/1/7

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