ゴクラクハゼ Rhinogobius similis
ハゼ科ヨシノボリ属

Top > 観る > 日本淡水魚 > ゴクラクハゼ

ゴクラクハゼ

【生息場所】 河川の下流域と汽水域の流れの少ない砂底に生息している。比較的塩分の低いところを好むようだ。
【外観・生活】 全長は9cm程度になる。体側にはにじんだような濃褐色の斑紋が5~6個並び、青または青白く輝く小斑点が散らばる。 吻は比較的長く、上あごが下あごよりも前に出ているので、鼻の下を伸ばしたような顔に見える。 頬にはミミズが這ったような、渦のようなウネウネ模様をもつ。第1背びれは伸長しない。 眼の直後まで鱗があるのは、ヨシノボリの仲間で本種だけの特徴だ。 産卵期は初夏から秋と長く、雄は第2背びれや尻びれ、尾びれの朱色や黄色を色鮮やかにする。 雄は石の下を掘って産卵床をつくり、雌を誘い込んで産卵する。雄は卵を孵化まで保護する。 孵化した仔魚はただちに海へ下り、秋までに2~3cmに成長して河川を遡上してくる。 秋や春のはじめに捕れる全長5cmぐらいまでの幼魚は、同時に捕れるヒメハゼやウロハゼの幼魚と酷似するが、 本種は受け口でないことや体側に5、6個のやや大きい斑があることなどから区別できる。 雑食性で底生小動物や水生昆虫、付着藻類などを食す。
【捕る】 タモ網で捕る。ハゼ釣りをしていると(本命の)マハゼに混じってたまに釣れると聞いた。
【その他情報】 本種はかつて大阪府では絶滅危惧Ⅰ類に分類されていたが、2014年の改訂で絶滅危惧種から除外された。 おそらく急に増えたわけではなくて、再調査してわかった結果だと思うが、そんなこともあるのね・・・。
【コメント】 海のない奈良県で生まれ育った私にとって、汽水域は全く馴染みのない未知の領域だった。 潮の満ち引きを考えて釣りや魚捕りのタイミングを図るというのが面倒だし、 どんなところにどんな生き物がいるのか、そもそも勘が働かないので、長い間、足を運ぶ気がしなかった。 しかし、たまたま汽水域の水辺に行くことがあり、そのとき捕まえた最初の魚が本種の成魚だった。 海に近いところで捕れたという私の変な思い込みにより、本種の南国的な派手さが増して見え、これまで見たことがない新しい類の魚に思えた。 その出会いはとてもうれしかったが、汽水の魚をほとんど知らなかった当時の私は、簡単に捕れた魚=有名で個体数が多い魚=マハゼだとその場で思い込んだ。 しかし、現場で撮った写真と図鑑を見比べるとどうも違う。顔には渦のようなウネウネ模様があるし、体には青くキラキラしたウロコがある。 その後、ゴクラクハゼであることはすぐにわかり、解説部分を読むと知らないことばかり。 図鑑をめくると汽水のハゼはかなり種類が多くて、こんなのが捕れたらいいなあと、ページをめくるたびにワクワクした。 最初に捕れたのが超普通種であるマハゼではなく、本種で良かった。汽水魚への興味の扉を開いてくれた。

春の雄。 全長は9cm程度。体側には暗色の班が並び、頬にはミミズが這ったようなウネウネ模様がある。第ニ背びれは伸長していて美しく色づいている。

春に捕まえた個体。 感潮より少し上流にある淀みでマハゼ、スミウキゴリと一緒にタモ網に入った。全長は9cmを少し超えるくらいだった。これも雄かな。

全長8cm程度の雄。体側には 青または青白く光る小斑点がたくさん見られる。背びれは薄黄色、尾びれ上端、下端も朱色を帯びる。

同所で捕った雌。 全長は7.5cmだった。雌も体側に青白く光る小斑点をもつが、背びれや尻びれはより小さく透明で雄のように色付かない。

梅雨時期に捕まえた可愛い個体。 堰の下のタマリにたくさん群れていた。小さくても青白くキラキラした小斑点がきれいだ。

すくい上げたタモ網にいた本種は 体側の青白い小斑点がキラキラしてきれいだった。畳まれたひれを上から見ると、朱色に色付いていることがよくわかる。

夏の汽水域でたくさん捕れた。 海水が直接混じるところより少し上流を好むようだ。

夏に捕った雄。 本種は体側で青白く光る小斑点についつい目に行くが、ひれは結構大きくて朱色の縁取りや黄色帯などで色付いていてきれいなのだ。

夏、 感潮域上部にある岸際に茂る草の陰でタモ網に入った。全長9cmほどの雌。 この川では川底の石が細かい砂で覆われて以降しばらく姿を見なかったが、数年ぶりに出会えた。前はたくさん捕れたんやけどな。 相変わらずのウネウネ模様、久しぶりっ!

上と同所で捕れた別の雌。 ヨシノボリ、ハゼの仲間だから腹びれは吸盤状で体の下面は白い。体側の暗色斑紋と白、青白色のうろこがきれいで印象的だった。

秋の初めにタモ網に入った雄。 全長約5cmぐらい。ひれが朱色や黄色に染まり、体側の青白色の小斑点が美しい。 山と海が近い小河川の感潮域上部の石がごろごろするところは、本種だらけだった。ボウズハゼもたくさん見られた。

秋に捕った雌と思われる個体。 やや深みのある場所のコンクリートブロックでたくさんの個体が見られた。

秋の汽水で捕まえた雄。 全長9cmほどの立派な個体だ。興奮しているのか頭部は黒い。 第2背びれには鮮やかな黄色の帯があり、尾びれや尻びれにも朱色の縁取りがみられる。大きく鮮やかで、かっこいい!

私が捕った汽水魚第一号。 汽水にいるハゼっぽい魚ということで、はじめはかの有名なマハゼだと思っていた。今見れば全然違うんだけど、一般にはそんなもんかも知れない。

全長3.5cm程度の幼魚。 まだ本種らしさが出ていなくて、似ているマハゼなんかと間違えそう。

早春に捕った3cmに満たない個体。 同じようなサイズの個体がたくさん捕れた。 体側にやや大きい斑紋が5個ほど並ぶので、よく似たヒメハゼでもウロハゼでもマハゼでもない。

春に捕まえた全長約2cmの稚魚。 こんなサイズは同時に捕れる多種と紛らわしくて、悩ましい。でもかわいい。

秋に捕まえた全長3cm程度の個体。 体側に点々模様が見られるからヒメハゼと思っていたが、写真で拡大して本種だと思った。受け口でないからね。

春の淀川汽水で捕った 全長2.5cm程度の幼魚。たくさんのマハゼ幼魚と一緒に数匹捕れた。こっちを向いてニコッと微笑んでいるように見える。
※この個体、恥ずかしいことに長らくウロハゼと間違って掲載してました。まだ汽水ハゼを知らなかった頃でした。やっぱ見慣れないと難しいよね。

一緒に捕れたマハゼ(右)と。 暗色の斑模様や各ひれの条数などがマハゼと異なる。

秋に捕った個体。 がっしりした体つきをしている。

上から見ると、 カマツカに似ているような印象を受ける。全体的な雰囲気が。春に捕った個体だけど少し痩せてるかも?

裏面から。 ハゼの仲間だけあって腹びれは吸盤化している。でも流れを好まないことから、吸着力はあまり強くないのかも。

よく見ると 目の後ろまでウロコがあることがわかる。ホッペのウネウネ模様はどこか南国チックな印象だ。

雌の頭部。 雄と比べると地味な印象。 ヨシノボリの仲間は、総じて雌は吻が短い(雄の方が鼻を伸ばしたように見える)が、本種はそんなことないね。

胸びれは左右に大きいね。

雄の個体を正面から。 両眼は上についていて、接するか接しないかぐらい。口は左右に大きく開く。顔を黒く染めて悪そうな雰囲気だ。 唇、ぶあつ!

正面から。 両眼の間から口にかけては模様がない。鼻の下を伸ばした人みたい。

last modified : 2023/10/19
created : 2012/4/2

ごあいさつ

行く

捕る

観る

飼う

お願い!

コラム

Copyright © 雑魚の水辺 Since 2010
inserted by FC2 system