ヒトミハゼ Psammogobius
biocellatus
ハゼ科ヒトミハゼ属
【生息場所】
河川の河口や汽水域に生息し、泥底や泥砂底を好む。単独でもぐっていることが多い。
【外観・生活】
全長は8cmほどになる。頭部は縦扁し、体は細長い。
吻が尖り下あごが突き出る。体は全体的に黒っぽく、褐色の模様がある。眼の上部に半楕円形の虹彩皮膜があるのが特徴で、眼は上部が欠けた形をしている。
腹びれ、尻びれ、尾びれ下部に縞模様があることも特徴とされる。ウロハぜに似るが体はより細長く、吻も突き出ることなどから区別は可能だ。
動物食性で魚を好んで食べるようだ。
【捕る】
潮が引いた澪筋などの底にタモ網をあって表面の砂泥ごと引きずって捕る。
腐敗や分解が進んで黒くなった落ち葉や小枝などのゴミに紛れる体色をしているので見落とさないように。
【その他情報】
本種はかつてウロハゼ属に含まれていたが、ヒトミハゼ属がつくられ本種も入れられた。
ハゼの図鑑などを見ていると体全体が褐色のものや黒と褐色の斑模様のものなど、体色にはバリエーションがあるようだ。
【コメント】
本種はなんとといっても「眼」が面白い。虹彩皮膜ってやつが眼の上部の一部を覆っていて、眼の形が少し欠けたお月様みたいになっている。
小さな眼だからよ~く目を凝らさないとわからないけど、そこに本種の個性がある。体全体の感じはウロハゼに似ている。
体色がよく似た個体もいるので紛らわしけど、尖がった口やより細長い体形などに注目すると区別できる。
大型個体は全体的にがっしりしていて、とてもかっこいい。加えて目を引くのは、ひれの黒白縞模様だ。
尻びれなんて見えないところに美しい模様をもっているなんて、さすが南方系のハゼ、おしゃれだね。
本種は太平洋沿岸に分布し、毎年毎年南方で生まれた個体が黒潮に乗ってやってくる。
紀伊半島には定着していないそうで、たどり着いたもののやがて低温で死んでしまう運命だ。
そんなに個体数も多くないので、出会いに感謝・・・なんて思っていたら、
はじめて捕まえたその翌年の秋に、全長8cmほどの個体(トップ写真の個体)を捕まえた。
このサイズだから紀伊半島で越冬したに違いない。本種は死滅回遊魚だと思っていたけど、どうもそうではなくなってきているらしい。
紀伊半島でもこれまで見られなかった南方系のハゼが見られるようになるとか、大きな成魚が捕れるようになると想像するとワクワクする。
けれど、温暖化の影響かと思うと、複雑です。
秋のはじめ、
潮が引いた澪筋でタモ網に入った全長3cmほどの個体。黒い落ち葉や小枝に紛れていてもう少しで見落とすところだった。
逆に言うとこれらのゴミにうまく紛れて生活しているんだろうな。
この個体も全長3cmほど。
ウロハゼを細長くしたような感じ。
秋の汽水の砂泥底で捕まえた個体。
全長約8cm。横から見ると、吻が尖り背に向けて直線的に盛り上がって、尾びれにかけて直線的に低くなる三角形のシルエット。
尻びれや尾びれ下部。
黒白縞模様が美しい。見えないところにこんなお洒落をしてるんだね。
上の個体を真上から。
ウロハゼに似ているが、ウロハゼがもつような背の暗色帯は不明瞭になることもある。
上から見るとこんな感じ。
背面に薄く横帯が見られる。
この眼、見てっ、
面白い!上部に楕円形の膜が被さってるー。眼から口元にかけて二等辺三角形の白色帯があって涙を流しているみたい。
口がとがり、下あごが突き出る・・・やんちゃ顔です。
成魚の頭部。
眼は上部にやや飛び出していて、眼の上部は被膜で覆われている。ウロハゼみたいに黒っぽい顔でガラの悪い雰囲気がある。
突き出た口は
大きく裂ける。
頭部は縦扁し、
背面には褐色の帯が見られる。横から見るとシャープでかっこいい顔をしているのに、真正面から見ると眼が上に出て、頬が膨れておたふくっぽい。
かっこいい雰囲気がかなり薄れるな・・・。
created:2022/9/18