イシガレイ Kareius
bicoloratus
カレイ科イシガレイ属
【生息場所】
水深100mまでの沿岸の砂泥部に生息しているが、特に稚魚は汽水域に入り込む。
【外観・生活】
全長は50cmになる。いわゆるカレイの形をしていて、腹を下にした場合は頭は右にある。
目のある側面の体色は濃褐色で、淡色の斑点が散在する。目のない側面は真っ白だ。体の両側には鱗がなくてツルツルしているが、
成魚には目がある方の体側の背腹両縁近くと側線の近くに石を並べたようなこぶ状突起がある。
仔稚魚は低塩分の砂底域を好むそうで、春から初夏にかけて浅場で見られ、汽水域にも入り込む。
1年で15cm程度になるが、それまでの小型個体は主に甲殻類や多毛類を、2年成長した21cm以上の大型個体は、マハゼなどの底生魚を食べるそうだ。
【捕る】
春に汽水域の浅場に入り込んで来るのでタモ網で捕る。広く砂底にいるのでタモ網を引いたり、上からかぶせ寄せるようにすると入る。
転石の近くに身を寄せている場合もあり、足で追い込んで他のハゼ類と同時に捕まえることもできる。
【その他情報】
孵化した仔魚は最初両側に目をもつが、体長1cmほどで片方に移動し始める。イシガレイという名は、体側にあるこぶ状突起に由来するそうだ。
刺身、あらい、煮付け、焼き魚などで食用とされる。
【コメント】
「カレイなんて海水魚でしょう」と多くの方が思うだろう。でも河川の感潮域ならこんなカレイが生息している。
それも潮が引いたときには真水がサラサラと流れるようなところでも捕ることができる。
本種と出会ったのは日差しが厳しい春の日、汽水域で転石をどかしながら生き物を探していたときのこと。
引き上げたタモ網の中でビシャビシャビシャ~と平べったい体を震わせていた本種を見たときは「しめた!」と思った。
図鑑やネット情報などで本種の存在は知っていたが、川で実物をはじめて見て、ホンマにいることを実感した瞬間だったからだ。
数匹を捕まえてから川の流れに沿ってザブザブ歩いていると私の接近に気付いた個体が川底から離れ、這うようにススーッと逃げる姿が見えた。
「よし、こいつも捕まえてやろう」と、逃げるたびに目を凝らして姿を追いかけた。
着底するともう見分けがつかないので、泳ぎ去る姿をしっかり目で追わないといけない。
転石の横にスッと隠れたので、ここだ!とばかりに急いでタモ網を構え追い込んでみた。が、網の中は明るい色をした砂と小さな石ころだけ。
水底の忍者にまんまとやられた・・・。
GWに捕まえた全長約8.5cmの個体。
潮が引いて川の水がザーッと流れ込んでいる砂底の表面を削ぐようにするとでタモ網に入った。
バシャバシャ歩くとススーッと向こうへ逃げていく姿もちらほら。明るい砂に紛れて、多くの個体がいるようだった。
春に捕った
全長4.5cmほどの個体。濃褐色の体に白色や薄茶色の斑点が散らばる。周囲の環境に合わせて体の模様が微妙に異なる。
全長5cm程度の個体。
タモ網に入るとビシャビシャビシャ~と元気良く跳ね回るので捕れたことがすぐにわかる。
上と同所で捕った個体。全長は5cm程度。
体の模様が少し異なる。川を歩くと砂底すれすれをススーッと逃げていく様子が見られるが、よく目で追っておかないとすぐに見失ってしまう。
GWの汽水では子供達のよき遊び相手だ。
砂底にタモをあてて、適当に引きづって歩くだけでも入ることがある。
春に捕まえた個体。
全長7cmくらいだった。砂底をザーッとタモ網で引きずると入る。食べるにはまだ小さいかなと思うが、から揚げのつまみにいいサイズかも。
GWに捕まえたイシガレイ。タモ網で砂底を
薄く削ぐように押出して引き寄せて捕まえた。網に入った砂の上でよく跳ねまくる。
縦6cmのケースの角にはまる。
体は底にぴったりと付けながらも、背びれ尾びれは盛んに波打たせ、小刻みにヒラヒラヒラ。
体は砂底にうまく紛れることができる。
早春に捕った個体。
全長3cm程度。ヒメハゼとともに、砂底でたくさん確認することができた。裏側というか、眼のない側面は一様に白いのでタモ網に入るとすぐにわかる。
早春の干潟で捕まえた
全長3.5cmくらいの個体。この季節は澪筋やタマリの砂底をあさると数cmの幼魚がたくさん確認できる。薄っぺらい体をヒラリ。
捕れた場所の砂底に置いてみた。
上手く同化している。
砂底の模様に合わせて
体の模様もある程度変えることができるようだ。ほんとそっくりですごい。
眼のない側は一面が白くて透明感がある。
どこか干物を連想させるので、少し小さいけど食べたら良かったかな・・・と思わせる。
腹側から見るとこんな感じで、すごく薄い。
鋭い眼をしている。
体を浮かして正面から。
まん丸球体の眼が飛び出ている。改めて見ると肉食の顔つき。
何故にこんな体形に進化したのか、
自然は不思議。背びれ前縁は白い。
下?の方から見るとこんな感じ。
眼は片方に寄るが、えらぶたは眼のある側とない側の両方にある。のどのあたりに白く薄いでっぱりがある。
狭い観察ケースの中で反り返ったところ。
眼のない面にも小さな胸びれがあるのがわかる。
【参考】マコガレイ
河川から出た浜で春に捕まえた幼魚。イシガレイによく似ているが、体形はやや細長く、側線が胸びれ上部あたりで湾曲しているなどの点で異なる。
イシガレイほど汽水域で捕れることはないが、まれに侵入する個体がいるようだ。
created:2015/5/3