カマツカ Pseudogobio esocinus
コイ科カマツカ亜科カマツカ属

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カマツカ

【生息場所】 河川中下流域、湖沼、用水路などの砂底や砂礫底に生息する。
【形態・生活】 全長は20cm程度。体は細長くて底モノ独自の特徴的なスタイルで、上から見たときの胸びれを広げた姿はなかなかかっこいい。 体色は薄褐色をベースとした迷彩模様。背面と側面に暗色斑があり、その輪郭はぼやけている。 長く尖った吻をもつ馬面の顔で、横から見ると口から頭頂にかけてやや反り返ったような形状だ。 眼は上方についていて、一対の白い口ひげをもつ。口は下方に伸ばすことができ、唇には小さな乳頭突起が密生していてブラシみたいになっている。 驚いたときなどに砂に潜る習性があり、ザザッ、ザザッと頭から突っ込んで姿を消す。 眼だけを出して周囲の様子をうかがっているようなことも多い。底に腹を付けて生活しており、コイやカワムツのように遊泳しない。 主に底生動物を食べる雑食性。少しずつ前進しながら、口を伸ばして底砂とともに吸い込み、えらから砂だけを吐き出しこしとって食べている。
【捕る】 見える個体をタモ網に追い込んで捕ることは比較的難しい。近づいても逃げられることが多い。 砂や礫の中に潜って姿を消していることが多いので、砂や礫ごと表面を薄く削ぐようにタモ網ですくって捕る方法が有効だ。 川虫などをエサにして、底付けで流して釣ったこともあるが、本種がかかる前に他の魚がかかることが多く、あまり有効な手段ではない。
【飼う】 飼育は容易。底の掃除屋さんとして活躍するが、きちっとエサが行き渡るようにしないと痩せていく。 両胸びれをピンと立てて頭を持ち上げジーッとしている姿は大変かわいいが、 フナやタイリクバラタナゴのようにエサをくれる人になつくことも愛嬌を振りまくこともない。 人の姿を見つけるとすぐにUターンして水槽の奥に逃げ込み、ザザッ、ザザッと砂に潜ってしまう、とてもクールな奴だ。 驚くと素早く逃げようとして、水槽壁に勢いよくぶつかり怪我をすることもあるので注意が必要。
【その他情報】 カワギスとも呼ばれ、食べるとたんぱくでおいしいという。塩焼きや唐揚げ、天ぷらがうまいらしい。 たまに20cmくらいの大型個体がタモ網に入るたびに持ち帰って食べようかと考える。が、未だ試したことがない・・・。
”カマツカ”はこれまで1種だと考えられていたが、遺伝的に異なる3つの集団(グループ1~3)の存在が明らかにされていた。 そして2019年4月、グループ1が本物の「カマツカ」で、グループ2およびグループ3はそれぞれ別種として新種記載され、 「ナガレカマツカ」、「スナゴカマツカ」という標準和名が与えられた。 関西にはカマツカとナガレカマツカの分布域が重なっており、両者は口ひげの長さ(本種は眼の前縁を超えない)、 口唇の乳頭突起(本種は発達が弱くて小さい)、胸びれの形状(本種は棘状軟条が長くて、胸鰭外縁が後方に緩やかに湾曲)、 体の斑紋(本種は背や体側の暗色斑がぼんやりして輪郭が不明瞭)などの形態的特徴や、生息環境(本種はより流れが緩やかな場所に多い)に違いがある。 ちなみにスナゴカマツカは本州東部に分布する。 ナガレカマツカとスナゴカマツカは古い系統のカマツカで、それらの共通祖先が古い時代に日本に分布を広げ、 前者は西日本の上流域に、後者は本州東部に生き残った種。 カマツカは新しい系統で、その祖先は先の2種よりも後に日本にやってきて、本州西部、四国、九州に現在分布している種だ。
※ナガレカマツカは こちら / スナゴカマツカは こちら
【コメント】 浅く透明度の高い川では、本種が水底にいるのが見えることがある。 「あっ、あそこにいる」と思って近づくと本種は水底に沿ってササーッと素早く逃げ、一定距離を保ち静止する。 「次こそは」と思って近づいてもまた同じことの繰り返し。終いにはザザッと砂礫に潜り、眼だけを出して周囲の様子をうかがう。 隠れることにはよほど自信があるのか、一旦潜ると近寄っても簡単には動かない。 だからカマツカを捕るにはいそうな砂礫底の表面を剥ぐように、砂礫ごとタモ網ですくいとる方法がベターということになる。 ところで本種は写真を撮る際、観察ケースの中で静止してくれるのはありがたいのだが、ほとんどの場合、背びれを畳んでしまうことが残念。 ケースを左右に上下に揺らしたり、教えてもらったように着水する瞬間を狙ったり、何とか工夫してみるのだがなかなか思うようにならないものだ。 本ページの背びれを広げた写真は絶妙なタイミングで撮れた「たまたま」の写真。実は結構苦労している。

早春に捕まえた個体。 頭部が比較的大きくて前のめりな印象を受ける。腹を底につけるスタイルだ。 河川合流する支流で、2本の網で逃げ道をふさぐように上から追い込んだ。 とてもきれいな水だったので自宅に持ち帰って食べたら良かったかな・・・。

頭部はシャベルのような形。 斜め方向に頭から砂に突っ込んでザッザッザともぐる。体はぼやけた暗色斑が入る迷彩模様だ。

中流域で捕まえた小型の個体。 眼がキョロリとして、ちょっととぼけた感じ。かわいい。

春に捕った個体。 全長は11cm程度だった。中流域の河川で、砂礫底の表面をそぐようにタモ網を動かすと、オオシマドジョウと一緒に入った。明るい砂礫模様をしている。

この個体はお腹が大きいので雌かな。 全長は約15cm。今回はこんな大型の個体が数多く捕れた。

春に捕まえた全長約9cmの個体。 オイカワの稚魚やコウライモロコの稚魚が群れている砂泥底の用水路でタモ網に入った。

三面コンクリート水路で捕まえた 全長約8.5cmの個体。砂泥底が溜まったところでチュウガスジシマドジョウと一緒に入った。 下へ下へ行こうとして、観察ケースの隅を突いているところ。

琵琶湖に流れ込む水路で捕まえた。 全長は13cmほど。前のめりな体形というか、体の重心が前方にある。体は渋い銀色で暗色斑は特に不明瞭だ。

春に捕った個体。 流れの早い農業用水路の水草脇の砂底で大型個体が数匹まとまってタモ網に入った。背伸びして観察ケースにKissをしている(ように見える)。 ごめんね、狭いところに入れて・・・。

全長13cmほどの比較的大きい個体。 春の終わりに砂底でタモ網に入った。珍しくひれをピンと広げてくれたのは良いが、眼の周囲が真っ黒。ちょっと不気味な感じ?

体高が低く、すーっと伸びやかな体形。 いいね、かっこいい。

初夏の個体。 体上部には多数の黒色斑が散在し、腹部は銀白色。中流域の広い砂底のある場所、岸近くの竹の枝が重なっているところでタモ網に追い込んだ。 全長は15cmを超えるぐらいだった。

夏に捕まえた全長約10cmの個体。 淀川から水をひく砂泥底の用水路でタモ網に入った。カネヒラ、ニゴイ、オイカワ、タモロコ、モツゴ、フナ、コイなどにぎやかな水路だった。

夏の京都で捕った個体。 砂礫底の岸近くでタモ網に入ってくれた。

秋の京都で捕った個体。 体は黒っぽく、全長は17cm近くあった。手の中でグネグネ力強く動く感覚が今も残っている。

秋の京都の用水路で 捕った個体。流れが速くてコンクリート底むき出しのところにはいなくても、砂礫が溜まったマスの中に潜んでいる。

淀川の水路の砂泥底でタモ網に入った。 全長約15cm。この吻の長さはカマツカ。背びれを広げてくれることがあった、いい個体だ!

秋の奈良で捕った個体。 口ひげが妙に短い。砂が溜まった田んぼ脇の狭い用水路のマスにいた。

奈良の用水路で捕った若魚。 この用水路ではこれまで確認できなかったのに、急に現れた。数日前の大雨で入り込んだのだろうか。

全長16cmほどの大きな個体。 秋の琵琶湖に近いところでタモ網に入った。この個体は吻が長くて両眼の間がくぼんだ独特な顔だな・・・。

冬の初めに捕まえた個体。 全長約9cm。琵琶湖流入河川でタモ網に入った。琵琶湖周辺のカマツカは独特の感じがある。

冬に捕まえた個体。 全長17cm程度。このサイズは観察ケースに入りきらない。やっぱ、美しくかっこよかったですっ。

冬の個体。全長15cm程度。

冬の京都で捕った個体。 目から口先にかけて長くやや反り返った吻部をしている。体は黄褐色で、体側の暗色斑はあまり目立たない。

冬の個体。 痩せているのか妙に細平べったかった。こんな形をしたサメがいそうだ。

冬の終わりに捕まえた幼魚。 全長7cmほど。岸に近い砂泥底をかき混ぜるとタモ網に入った。頭部は大きく、体はやや痩せている。 冬の間は活動がおちて、あまり餌をとっていなかったのかな。

春のはじめに捕まえた幼魚。 小さいと頭が比較的大きいね。ひれを広げてくれた。いやー、かわいいね。

春に捕まえた幼魚。 軟らかく積もった砂底で、同じサイズの幼魚ばかりタモ網に入った。大きなオオシマドジョウも一緒に捕れた。

全長3cmほどの幼魚。 秋の中流河川で捕った。

冬の幼魚。小さくてかわいい。

兵庫県で捕った個体。 体が黄色っぽくて吻も短いところは、ナガレカマツカみたい。ただ、体の斑紋の境界は曖昧で、口ひげも短い。

水中で静止する。 砂底から砂礫底に生息する。驚くと砂に潜る。上から見た模様は水底のそれとソックリだ。

大阪府の個体。 淵のやわらかい砂礫底をすくうと、オオシマドジョウと一緒に捕ることができた。背面に斑紋が並ぶ。

大阪府の用水路で捕まえた個体。 砂泥底でタモ網に入った。上からも白い口ひげが見える。口ひげはそこそこ長いが、本種はその後端が眼の前縁を超えない。

京都の水路で捕まえた。 スーッと伸びた体形で、吻が長くて尖がっている。本種は胸鰭外縁が後方へ緩やかに湾曲する形をしている。ザクッというと1/4楕円みたいな形。 この個体のように背面の暗色斑は不明な個体もいる。

大阪府で捕った若いカマツカを上から。

兵庫県の個体。 本種は胸びれや腹びれを左右に広げているのがデフォルトの静止スタイル。なかなかかっこよい。

兵庫県の個体。 全体的に体色が濃い。周囲の環境により体色は微妙に違う。

兵庫県の個体。 上とは変わって明るい褐色をしている。この個体は上から見ると吻が丸くて頭部の感じが違うように思う。

兵庫県の個体。 広く開けた中流河川で捕まえた。手でにぎるとグネグネグネと力強く体をひねる。

京都府の個体。 胸びれが緩やかにカーブする。

京都府の個体。 スマートな体をしている。

秋に捕まえた京都府内の個体。 胸びれが前縁が急な弧を描き、四角っぽい。

春の兵庫で捕まえたお腹の大きい雌。 体の中央部が膨らんでいて、細長い菱形をしている。

早春に捕まえた滋賀県の個体。 琵琶湖に流れ込む河川中流域の砂が堆積した流れが緩やかな場所でタモに入った。

春、滋賀県内の水路で捕まえた お腹が大きい雌。お腹が膨れているので、背もクッと盛り上がっていた。

冬の初め、琵琶湖流入河川で捕まえた。 体は褐色でこの個体は斑紋が不明瞭。頭部が細長く、吻が尖る。

ひれを広げた様子。 かっこいい!

腹面は真っ白だ。

上と同じ個体の頭部を拡大してみた。 こんなアングルだと竜のように見える。かっこいい。

カマツカの頭部。 カマツカの口ひげは眼の前縁に接する垂線を超えず、口唇にある乳頭突起は小さく、細かいブラシみたいになっている。

カマツカ別個体。 口唇にある乳頭突起のブラシ感はこんな感じ。多少個体差はあるが、細かいね。

口ひげが長い個体。 ナガレカマツカやスナゴカマツカと外観上の違いとされる口ひげの長さだが、この個体は眼の前縁に接する垂線を超える。 主要な同定ポイントではあるが変異があることも頭の隅に。

口を裏から見るとこんな感じ。 口の周りは細かな乳頭突起が密生している。 本種は琵琶湖のような止水から比較的流れが急なところにまで生息しているので、吻の尖り具合や乳頭突起の細かさにはある程度の幅がある。 ただし、近縁のナガレカマツカほどモシャモシャ発達していないし、口ひげもより短い。

カマツカを正面から。 白い口ひげがよく目立つ。

1対の白い口ひげが目立つカマツカの顔。 口を突き出して砂中のエサを食べる。馬面の面白い顔だ。デフォルトでは背びれは畳まれている。

春に捕まえた全長12cmほどの個体。 胸びれは体の横から左右方向に広がる。かっこええフォルムやな。額にある細かい粒々は泥?

冬に捕まえた全長15cmほどの個体。 真正面から見ると頭部は真っ黒。白く細かいぶつぶつは何?追星?

白い唇にはイボイボの小突起。 カマツカとナガレカマツカはこの小突起の大きさに違いがある。 ところでこの写真、このアングルからはハゼみたいに見える。

口は下向きにこ~んなに伸びる。びろ~ん。

口はこんな風に真ん円に開く。 手でもつとギューギュー鳴いた。カマツカも鳴くんだね・・・。

※ナガレカマツカ種が提唱されて以降、本ページではこれまで「カマツカ or ナガレカマツカ」と題し、これまでに捕まえた個体を紹介していたが、 両者を分割して改めて個別に紹介する。今更ですが・・・(2021/8/13)。

last modified:2024/2/28
created:2012/1/7

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