カワヨシノボリ Rhinogobius flumineus
ハゼ科ヨシノボリ属

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カワヨシノボリ

【生息場所】 河川の上中流域の比較的水のきれいな川に生息している。その名の通り流れのある川に見られ、止水域である池などでは見られない。
【形態・生活】 日本固有種で全長は6cm程度。ヨシノボリの中ではスマートな体形をしていて、雄は第1背びれが伸張する。 吻先から眼にかけて2本の赤色線があり、頬には小さい赤色斑点が散在する。胸びれ基部には三日月模様の赤色線がある。 ベースとなる体色は暗褐色から薄褐色までいろいろあるが、全体的に赤っぽい印象だ。 産卵期の雄は暗褐色の体に第1背びれ前縁を白黄色に染め、コントラストが効いて美しくなる。 雌は腹が薄黄色っぽくなる。一生を淡水で過ごすため、比較的大型の卵を産む。 それは孵化してから親と同じ河川環境で生活するために、大きな体で生まれる必要があるからだ。 また、類似するヨシノボリの中で本種は胸びれ条数が少ない(15~17本、まれに18本)ことが特徴で、 17本以下であることさえ確認できれば本種で決まりということになる。 胸びれ条数が少ないのは、本種の稚魚が流されないように胸びれを小さく進化させたことと関係があるそうだ。 雑食性で主に水生昆虫を食べる。
【捕る】 水通しの良い川の瀬で、下流側にタモ網やサデ網を構え、転石の下で足を動かすか、ゴロリとひっくり返して捕る。 または、川岸に垂れる草の下や水草の中で足を動かし、タモ網に追い込む。 生息している場合は個体数も多いので難なく捕れる。アカムシをエサとして釣れることもある。
【飼う】 飼育は難しくない。ただし、なわばり意識が強く混泳魚にもちょっかいを出す。 腹が減っているとひれをかじることがあるので、本種同士を混泳させる場合も障害物を多めに入れるなどの工夫が必要。 人工飼料にはあまりなつかないので、餌はアカムシなどが良いと思う。
【その他情報】 本種は未だ分類が混沌としているヨシノボリの中で、比較的早く(1960年以降)から個別種として扱われてきた。 それ以前は、ヨシノボリの仲間は「ヨシノボリ」と「ゴクラクハゼ」の2種だけとされていて、ヨシノボリの中から本種が分離された。 本種は遺伝的、形態的に複数の集団に分けることができ、形態的には、富士型、赤石型、斑紋型、壱岐佐賀型、無斑型などが知られている。 なお、このページで紹介する個体は、無斑型とされる集団だ。 食べたことはないが、ヨシノボリ類の中では最も美味いらしい。
※北部九州で捕まえたカワヨシノボリ(斑紋型)は → こちら
【コメント】 小柄でスマートな赤いヨシノボリ。伸びた吻に大きな眼をもつせいか、ヨシノボリの中では最もカエルっぽい顔に見える。 関西ではよく出会う魚のひとつで、水のきれいな上中流域の川だと、だいたいどこにでもいる。 「ここ、カワヨシとカワムツばっかりや~」は魚捕りあるあるだ。川に入ってまず最初に捕れるのも本種だ。 しかし、数は捕れても全長4cmほどの小さな個体が多く、6cmもあるような個体はあまり多くない。 観察水槽に入れると、手にした以上にスマートな体形であることに気付く。 胸びれを除くひれは赤や橙色で、繁殖期の雄は第1背びれの前縁を白黄色や薄水色に染めるが、それ以外は案外地味だ。 性格は繊細な方ではない。捕まえた翌日に水槽壁に卵を産んでいたことがあって、私は過去に同じことをしたモツゴを思い出した。 外来魚がはびこる郊外のため池でもしぶとく生き続けているモツゴと、幅広くどこにでも生息している本種。 競争優位になるためには、ある程度の図太さが必要なのかも知れない。

啓蟄を過ぎたころに捕まえた雄。 河川中流のサラサラ流れる瀬で石を足で転がして捕まえた。ひれは赤っぽく、やや橙色が混じったような感じ。 胸びれ基部には三日月模様の赤色腺が見られる。全長5.5cmほど。

早春の雄。 第1背びれが伸張している。体側中央には濃色の縦斑が並ぶ。

早春に捕った個体。頬には点々が並ぶ。

春のはじめに捕まえた。 全長5cmに満たないぐらい。本種はヨシノボリ類の中では全体的にスマートな体形で赤っぽい。 河川の上中流域で石をゴロゴロすると捕れる、関西ではお馴染みの魚だ。

河川上流部で捕まえた個体。 全長は6cm程度。体に斑紋は見られず、ひれはオレンジ色をしている。最近、本種は変異に富むなあと改めて感じている。

春の農業水路で捕った雄。 たくさん捕れたが、雌はお腹が大きく雄は婚姻色に染まっていた。その中で最も大きく色濃かった個体。

春の雄。 本種は他のヨシノボリ類に比べると体が細長くてスリムだ。尾びれ中央の模様が少し変わっている。

春に捕まえた全長5.5cmの雄。 繁殖期を迎えると雄は体を黒っぽくして、背びれの縁を白黄色に染める。これがよく目立つ。

春に捕まえた全長約6cmの雄。 のど部や尾びれ、背びれ、尻びれが橙色だ。小型のヨシノボリであるがカッコイイ。

石を蹴って転がして捕まえた。 帆を張ったような第1背びれがかっこいい。この個体も全長6cmくらいだった。

春に捕った雌。 上から見るとポッコリとお腹が左右に張り出していた。腹部が黄色く色付いている。

春に捕った全長4cm程度の個体。 第1背びれ前縁が白黄く、ノドの橙色が目立つ個体だ。「気を付け」する姿勢がとても愛らしい。

少しコロッとした個体。 比較的強い流れがある草の根元でタモ網に入った。

春に捕った個体。やせてる?

流れが強い河川で 石をどかすとタモ網に入った。 尾びれの橙色がよく目出つ全長5cmに満たないやや小型の雄。繁殖期を迎えているようで、お腹が大きな雌も同時にたくさん捕れた。

5月中旬に捕まえた全長約5.5cmの雄。 繁殖期で、タモ網に入った雄の背びれはどの個体も白黄色に色づいていた。

春の終わりに捕まえた雄。 全長4.5cmくらい。白波がたつようなかなり流れの速い瀬でタモ網に入った。なんだろう、いつも見る個体とどこか違う気がする・・・。

上の個体と同所で捕まえた雌。 たまたまかも知れないが、なんか眠そうな目つきが似ている・・・。

梅雨時期に捕った雌。 卵をもっていると思われる。

夏に捕った個体。 体色は全体的に黒っぽいが吻のあたりやのど、えら下部のあたりが薄灰色だった。

夏に捕まえた全長6cmほどの立派な雄。 川面をのぞいているとひれが鮮やかなこの個体が見れたので、前後からタモ網でゆっくり挟み撃ちして捕まえた。

山間を流れる川で捕まえた。 この個体は全長7cmほどだが、この川に生息する個体は、体がでかい。違和感を感じるぐらい大きい。

秋の初めに捕まえた。 本種が捕れる場合は、一度にたくさん捕れることが多いんだけど、ほんの数匹しかタモ網に入らなかった。 シマヒレヨシノボリが生息していそうな環境だったが、このスマートな体形、胸びれ条数から本種とわかる。

秋に河川上流部で捕った個体。 全長は5cm。かなりの個体数が確認できたが、ここの個体群は尾びれの付け根に橙色が出ている傾向にあった。 パッと見たときから普段見慣れている地域の個体群とは違うように感じた。

秋に捕った個体。 ひれの朱色がとても鮮やかだ。

秋の個体。 頭をあげてポージングしてくれました。スマートな姿がええ感じです。

秋の終わりの河川で立派な雄が捕れた。 背びれ、尾びれ、尻びれが妙に赤く染まっているが、ピンと広がってかっこいい! ガメラの怪獣のような、爬虫類のような顔に見えるのは私だけ?

冬に捕ったペア。 大きな石をゴロリとひっくり返すと同時に入った。雄が胸びれで雌の肩を抱いている。デートの邪魔をしてしまったのなら、ごめんなさい・・・。

立春間近の冬に捕った個体。 観察ケースの中で多くの個体が背びれを畳んでいる中、本個体だけが常に第1背びれをピンと立てていた。赤紫色のひれが美しい。

冬に捕った濃褐色の個体。 本個体は第1背びれが鋭く尖っていない。胸びれ条数は15本だ。

冬に捕った薄褐色の個体。 第二背びれや尾びれには点列が、頬には暗色の小斑点が見られる。

冬に捕った3.5cmほどの個体。 水通しの良い三面コンクリート水路底にいた。

冬に捕った別個体。

夏に捕った全長2cmに満たない幼魚。 用水路のコンクリート底にたくさんいた。胸びれ条数は15本か16本。

冬に捕った幼魚。 石がゴロゴロしている河川上流部で捕った。全長は2.5cm程度。頬には点々模様があり、体側中央に赤褐色の点列がある。

置物みたいに、ひれをピンと広げてポーズ。 顔はどこかカエルみたい。

早春の雄。 濃褐色体に背びれの明色が目立つ。

繁殖期の雄を真上から。 頭部にはニョロニョロの模様があり、白く縁取りされた赤紫色のひれが目立つ。粋な着物をまとっているようだ。

観察ケースの壁面にくっついたところを パチリ。お腹がぷっくりしている雌。

冬の雄。 薄褐色の体に赤褐色の斑点模様が蜜に入る。繁殖期のものとはずいぶん違う。

夏に捕まえた雄。 背から見た感じではあまりわからないが、腹面は白く、尻びれは鮮やかなオレンジ色だ。美しい。

春の雄の背びれ。 ひれの縁は白黄色に染まり、第1背びれ前方には水色も入る。これらの色彩がひれを目立たせる。

流れのある川で釣りをしていると たまに釣れる。

ほほには赤褐色点が散在する。 胸びれ付け根には三日月模様の細長い模様がある。唇はたらこ。

ほほに散在する点、 眼から吻にかけてある線、背面にあるウネウネした模様、胸びれ付け根の三日月模様も赤色。

カワヨシノボリの顔。 たらこ唇で、目から鼻先にかけては赤色線がある。本種の特徴は胸びれ根本に赤色線があり、条数が少ないことだ。ちなみに本個体は16本。

胸びれ条数は16か17本。 胸びれ付け根にある太い赤色線がわかりにくくても、その段階で本種と同定できる。

真正面から。 唇は分厚くて、眼から吻先にかけて走る赤線がよく目立つ。

河川の上流域で手にした石の裏に 卵が生みつけられていた。本種は比較的大型の卵を産む。それは孵化してから親と同じ河川環境で生活するために、大きな体で生まれる必要があるからだ。 卵を守っていたであろう雄さん、ごめんなさい。

last modified:2022/3/13
created:2012/1/7

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