カゼトゲタナゴ(北九州集団) Rhodeus smithii smithii
コイ科タナゴ亜科バラタナゴ属

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カゼトゲタナゴ

【生息場所】 北部九州に分布し、湧水が豊富な細流や水田を流れる農業用水路、小規模な河川などの比較的透明度の高い、やや流れのある砂泥底に生息する。
【外観・生活】 全長5cm程度で、日本産タナゴ類では最も小さく、雄の方がやや大きい。 体側には雌雄ともに鮮やかな青色の縦帯が入り、その起点は背びれ・腹びれより前方にあり先が尖る。肩部にも青色斑がある。 稚魚、幼魚や雌の成魚の背びれ前方部中央には黒色斑があるが、雄の成魚では大きくなるにつれて次第に消えていく。口ひげはもたない。 繁殖期は春から初夏にかけてで、雄は美しい婚姻色を帯びる。腹縁は黒色に、背びれ前上縁と尻びれ下縁は朱色に染まる。 さらに吻端は紅をさしたように朱色になり、眼の上縁も朱色になる。雌は産卵管が伸長し、主にマツカサガイやイシガイなどの小型の二枚貝を選んで産卵する。 稚魚は貝から孵出すると流れのないところに群れて過ごし、1年で成熟する。雑食性で付着藻類やユスリカなどの小動物を食べている。
【捕る】 川岸に生える草の陰をゴソゴソ動かして下流側に構えたタモ網に追い込む。タナゴ釣りの仕掛けで釣ることもできる。
【その他情報】 本種に酷似した魚に山陽地方に生息するスイゲンゼニタナゴがある。 両者はこれまで別亜種として扱われてきたが、2013年に出版された日本産魚類検索・第三版では両者の違いは亜種未満であるとし、 日本に生息するスイゲンゼニタナゴを、カセトゲタナゴ(山陽集団)とした。 しかし遺伝的な差異はあるそうで、別亜種のまま扱うべきとの意見もあり両者の分類はまだ整理中といったところだ。 また地域間の隔離が進行し、4つの遺伝的集団が認められている。 本種が好む農業用水路などの生息地は圃場整備や河川改修などによって好適な環境が急速に失われつつあり、 改修後に絶滅したと考えられる場所も多数あると聞く。タナゴ類に共通するが、産卵する二枚貝が繁殖する環境を残すことも重要だ。
【コメント】 小さくてとても可愛いタナゴ。可憐で上品、そんな雰囲気をもつ。 背びれと尻びれの縁にある朱色と、その間にスーッと1本入る鮮やかな青色縦帯がとても美しい。 そこそこの個体数が確認できるところはまだあって、産卵母貝と思われるマツカサガイやイシガイもいたし、 背びれに黒点がある稚魚もたくさんタモ網に入ったので、その環境を大変うれしく思った。 その一方で、すぐ向こう側には大きな口を開けた新しいコンクリート護岸が見られ、無機質な環境がジワジワ迫ってきている感じだった。 生き物に配慮しない人間都合のみの圃場整備や河川改修は、本種の住まいも根こそぎ奪ってしまう極めて暴力的な行為だ。 そんな状況を目にすると、何年か後もこの地に生息できているだろうかとすごく心配になる。現状のままでは本種の生息地を狭める一方だ。 ベクトルを変えて、良好な環境が広範囲で維持され、本種もあの種もこの種も「もういらん!」って言うぐらいに生息している、そんな状況に戻らんかね。 私たちにできることはなんだろうか、この小さな命を手にして考える。

春に農業水路で捕まえた雄。 全長は4cmを超えるぐらい。体側にある青色の縦帯が美しいね。肩部にも青色の斑がある。 尻びれの朱色もいいアクセント。可憐だ・・・。

上と同所で捕まえた 別個体。 流れが緩やかな深みにタモ網を入れると、イトモロコやニッポンバラタナゴ、アリアケスジシマドジョウなどと共にタモ網に入った。 ニッパラに似ているが、本種がもつ体側の青色縦帯が長く明瞭で、やや体高が低い。

水田の横を流れる水路で捕まえた雄。 水からすくい上げた網の中に入った本種を見つけるとテンションがあがる!ケースに入れると忙しなく動き回り、ひれを畳むことも多く、きれいな写真を撮るの は意外と難しい。

上の個体と同時に捕まえた雌。 繁殖期でお腹が大きいが、雄のような色鮮やかな体色はもたない。 腹びれ後方から二枚貝に卵を産み付けるための産卵管が確認できる。他のタナゴと比べるとかなり細く弱々しい感じ。

GWの雄。 写真で見るより現物はもっと体に透明感がある。婚姻色を帯びた雄は改めて美しいなぁ。5cmに満たない小さな体に上品な雰囲気をもつ。

全長4.5cmほどの雄。 体高がある立派ないい個体だったのに、明るいところに入れておいたら婚姻色が薄れてしまった。

5月上旬に捕まえた雄。 前方が細く後方が太くなる体側の青色ラインが美しい。腹面や尻びれの縁は黒い。

全長4.5cmほどの雄。

同所で捕まえた雌。 体側のラインは写真で見ると黒灰色・・・。実物は青い。

夏に捕まえた雄。 緩やかに流れる水路で草の陰を蹴り込むとタモ網に入った。 春には見られなかったので、移動しているようだ。鮮やかな青色縦帯がよく目立つ。 繁殖ピーク期よりは少し体色が薄くなっているが、それでもきれい。

別の水路で捕まえた雄。 この水路ではアブラボテやカネヒラも見られた。本種が生息する川の環境は限られ、捕縄整備の名のもとに進められるコンクリートがすぐそこまで来ている。こ こはまもなくダメになる。

若い雄。 雄でも若い個体には背びれ前方部中央に黒色斑が残る。成長につれて次第になくなっていく。

上と同所で捕まえた雌。 腹びれの後ろに白い紐のような産卵管が確認できる。繁殖期の春には長く伸びて二枚貝の出水管に挿入し産卵する。

秋の支流で捕まえた雄。 全長は4.5cmぐらい。眼は赤く、体側の青い縦帯が美しい。背びれ前方には明瞭な黒色斑がある。

この個体も雄だ。 緩やかに流れるところで川をのぞくと、背びれに斑点をもつタナゴ類の群れ見えた。 川の障害物を上手く使って、岸からタモ網2本で挟み撃ちして捕まえた。複数匹が同時に入った。うまくいった!

体色に鮮やかさは少ないが、 スタイルが美しい、とてもきれいな個体だね。全長4cmを超えるぐらいだった。

上と同所でタモ網に入った雌。 背びれ前方の黒色斑はより明瞭で、体側の青色縦帯は雄より暗い色をしている。腹びれの後ろに短い産卵管が見える。

老齢と思われる大型の雄。 全長は5cm超える。尾柄部分がやや変形し、体色も精細さを欠く。 タモ網を入れて、さっきまで見えていた小魚が散ってしまったので、しばらく時間をおいてから戻ってみた。 再びタナゴの群れが見られたので、川の障害物を上手く使って、岸からタモ網2本で挟み撃ち。 すばやくタモ網を上げると複数匹が入っていた、2度目もうまくいった!

秋に捕まえた雌。小さくてかわいい。 体色は地味で、雄の彩度をぐんと落とした感じだね。カワバタモロコと一緒に捕まえた。いい環境だ。

春の雄を後方から。 色鮮やかで、きれいな魚でしょ。

繁殖期の雄を真上から。 この細長い感じを見るとタナゴだな。背面は褐色をしているが、水面を動くと尻びれや背びれの朱色がチラチラ見える。

春の雌。 卵でお腹がふっくら膨れている。

雄を正面から。 体は大きく側扁していて、かなり薄っぺらい。眼の上縁が朱色で、口は紅を差したようだ。 吻には追星と思われる白い小さなブツブツが見られる。

別個体。 大きな目に逆Uの字の口。正面から見て印象的なのは「紅」だな。

秋にに捕まえた雄。 繁殖期ではないので吻に追星はもたない。ほぼ真正面から見ると、体は大きく側扁していて、平べったい感じがよくわかる。

春の水路で捕れたタナゴたち。 本種とバラタナゴ。

last modified:2023/11/1
created:2018/9/7

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