クチサケハゼ Oligolepis stomias
ハゼ科ノボリハゼ属

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クチサケハゼ

【生息場所】 河川汽水域の泥底に生息する。感潮域の上流側に多い。
【外観・生活】 全長は7cmくらい。体は側扁した円筒形で細長く、頭部が大きくて吻がまるい。 体色はクリーム色で腹部は白く、背面には茶褐色の斑点が散在し、体側には暗色斑が5つ縦列する。 名前の通り口が大きく裂けて、口の後端は眼の後縁を超える。 眼下には上あご部で後方に折れ曲がるL字型の太い暗色帯があり、よく似たハゼ類が同時に捕れる中で、ぱっと見たときの区別点となる。 第1背びれには暗色の縦帯をもち、第2背びれや尾びれには暗色点がある。尾びれは大きくてその先端が尖る形状をしている。 泥底に穴を掘ってすんでおり、大きな口で泥表面を口に入れて有機物や小型生物を食べている。驚くと半身を泥に埋めるようだ。
【捕る】 泥底にタモ網をあてて引きずる。
【その他情報】 南方系の魚で、熱帯、亜熱帯地域に多い。国内では黒潮の影響を受ける千葉県以南で確認されているが、温暖化の影響か確認地点が北上している。 よく似た種類にノボリハゼがある。 本種はノボリハゼと比べると、口がより大きくて、口の後端は眼の後縁を越え、眼下の黒色横帯はより太く、L字型に折れ曲がる。 両者はすみ分けもしているようで、本種の方がやや上流側に生息している。
【コメント】 本種は眼の下にあるL字型の太い暗色帯、まるで涙を流したように見える模様が特徴。一発でこの魚とわかるアイデンティティだ。 「クチサケ」と聞くと、70年代後半に流布されたとある都市伝説が真っ先イメージされ、 もうちょっと違う名前はなかったのかとも思うが、名は体を表しているかな。 尖形をした長い尾びれとか、体側にある光の加減で水色に輝く大きな斑なんかは、南方系の魚らしいところ。 黒潮に乗ってはるばるやってくる個体もいるだろうが、本種の確認地点が北上していたり、定着している他の南方系の種類が増えたりしていることを考えると、 これらの個体を捕まえた紀伊半島ではすでに定着しているのかもしれない。 本種はやや軟かい泥底の干潟で捕まえることができるが、 軟泥底は「足が抜けなくなるかも」という恐怖すら感じる場所があるから、できればあまり足を踏み入れない。 「そんな場所にはまだ出会ったことがない魚がいるんだろうな・・・」、踏み入れたいけど、踏み入りたくない、葛藤が続く。

秋のはじめに捕まえた全長約6cmの個体。 軟泥底で泥ごとタモ網ですくった。頭が大きく、口が大きく、尾びれが菱形で大きい。ユニークな形態をしたハゼだ。

秋に捕まえた個体。 全長5cmくらいだった。尾びれは少し先が切れているのかも。頭が大きく尾にかけてすぼまる体形だ。体側には明瞭な暗色斑が5つ縦列する。

「クチサケ」と表現される大きな口。 眼の下にはL字型の太い暗色帯、胸びれ後方には水色に輝く大きな斑がある。鰓蓋も細かく光っている。 眼の上が赤いのは捕まえるときに怪我をさせてしまったからかもしれない。もしそうなら、ごめんなさい。

正面から。張り出した眼、その下の暗色帯、大きなたらこ唇は悪者 の面構え。

胸びれは透明だ。 眼下の暗色帯と左右に裂けた大きな口に目がいく。

口はこんな風に開くんだ~。なるほどこうなっていたんだね~。

背面には茶褐色の斑点が散在する。 上から見た全体的な印象はタビラクチに似ている。

手に乗せたらこんな感じ。 光の角度によってはほほから鰓蓋にある金色キラキラの細かい点々、 胸びれ後方にある水色メタリックの斑がきれいなんだけど・・・。

捕れた干潟に戻したところ。 泥底に体を半分埋めて、しばらくの間じっとしていた。

last modified:2021/9/24
created:2019/9/26

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