クロダイ Acanthopagrus
schlegelii
タイ科クロダイ属
【生息場所】
主に内湾の浅海の砂泥底や泥底に生息し、磯にも出現する。河川の河口や汽水域によく入り込み、ときには淡水域にも遡上する。底付近を泳いでいる。
【外観・生活】
全長は60cmにもなる。体高が高く側偏していて、いわゆるタイ(鯛)の体形をしているが、吻がやや突き出ている。
体色はその名の通り黒っぽい銀灰色で、ひれも黒っぽい。
小型個体は体側に6~10本程度の暗色横帯が見られるが、大型になるとあまり目立たなくなる。繁殖期は春から夏にかけてで、海域で行われる。
夏から秋になると稚魚や幼魚は淡水の影響が大きく餌が多い河口や汽水域に好んで集まり、純淡水域にもやってくる。
ちなみに秋から冬の間は内湾周辺の深場に移動し、低温を避けて越冬するそうだ。
視力が発達していて警戒心が強く、雑食性の強い貪欲な肉食魚。甲殻類、多毛類、貝類を好み藻類も食べ、稚魚期にはカイアシ類やヨコエビ類も食べるそうだ。
【捕る】
専門雑誌があるくらい、釣りの対象として人気が高い。夜行性が強いので夜が釣りやすいとされる。
釣り糸に気付くほど繊細とされるが、濁りがあるときなどは昼間でも釣ることができる。
泳ぎは素早く、植物の根元や障害物の陰に隠れることもないので、タモ網で捕る場合は逃げ場所がないところに追い込めた場合だ。
【その他情報】
よく似た魚にキチヌがいる。キチヌは腹びれ、尻びれ、尾びれ下部が鮮やかな黄色をしていて、体はより明るい銀色をしている点で区別がつく。
また本種は側線上方横列鱗数は6~7枚(キチヌは4枚)、側線鱗数は53(48~56)枚(キチヌは46(43~48)枚)なので、
鱗はより細かい印象を受ける。
クロダイ類は性転換する魚としても有名だ。体長9cmまでは性的未分化であるが、
10~27cmでは雌雄同体の両性魚で春には精巣が発達して雄として振る舞い産卵に参加、
26~30cm(5歳魚)以上で性が分化し圧倒的多数は雌になるそうだ。美味しい魚で刺身、塩焼き、洗いなどで食べられる。
【コメント】
関西では「チヌ」と呼ぶ、黒っぽいタイ。スズキやボラなどと並んで汽水域を好む魚で、やや深みのある河川の川岸近くを1匹または数匹の群れで泳ぐ姿がよく
見られる。
悪食として有名で、スイカの白い皮をエサにして釣るという話を聞いたことがある。
カニやエビ、イソメなどはわかるのだが、初めて目にするようなものにまで積極的に口にするとは、何と食いしん坊なんだろう。
トップ写真はハゼ釣りをしていたときに外道で釣れた個体。前日まで雨が降り続いていたため水がやや濁り、川の流れも比較的速かった。
エサを落とすとすぐにアタリはあるのに針にかからず、エサだけが上手に取られることが続いた。
マハゼではない器用な小魚の仕業だなと思っていたところ、やっと針にかけたのがこの個体だった。
写真を撮り終え、ハゼも思うように釣れないので次からとことん勝負!と思った矢先、潮が良くなったのか、ハゼ類の爆釣タイムに突入。
結局、手にしたのはこの個体のみだった。
近くでは15cmくらいのキビレをたくさん釣り上げている方もおられたので、当日はチヌ釣りには適した条件だったのかも知れない。
また秋のハゼ釣り行ったら釣れるかなあ・・・。
汽水域で釣った暗色横帯が残る幼魚。
全長は8cm程度だ。イソメをエサにハゼ釣りをしていたら食い付いてきた。いわゆる鯛の体形をしていて、安易に触るとひれのトゲトゲが痛い。
手を近づけると警戒してひれを開く。
こんな個体はキチヌと間違えそうだ。
幼魚の頃、尾びれや背びれの根元部分が薄黄色い場合がある。キチヌとは黄色の場所が違う。
全長40cmほどの個体。
夏の汽水域で5,6匹がコンクリートで固めれらた川岸付近に群れていたので、タモ網ですくい捕った。うまくやれば、成魚だってタモ網ですくえるぞっ。
秋に釣った全長は12cm程度の個体。
体は黒っぽい銀灰色で鱗に沿ってキラキラする。小型の間は暗色の縦帯がある。
外に出すとこんな感じ。吻が突き出ている。
悪食と聞くと、何でも突きそうな意地悪な口に見えるから不思議。
初夏の干潟で捕まえた稚魚。
全長15mmくらい。潮が引いた転石の陰で複数匹が同時に確認できた。太い横帯と細い横帯が交互に並ぶ。おそらく本種でよいと思う。
上から見ると、
大きな胸びれをもつことがわかる。
大きな目をもつ細長~い顔だ。
泳ぎは瞬発的に素早く、水面から飛び出すこともある。
成魚の口の中。
細かい歯が上下左右に層状に並ぶ。口にしたものをすりつぶして食べているようだ。
ダイ(タイ)と名が付くように、確かにタイの顔をしている。
しかし、タイに比べると口が尖る。口でつまんでエサをとるのに適した形状だ。
鱗はキビレに比べると細かい。
側線上方横列鱗数は6~7枚だ。
created:2014/8/27