タビラクチ Apocryptodon punctatus
ハゼ科タビラクチ属

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タビラクチ

【生息場所】 比較的大きな河川の泥干潟や淡水の影響を受ける内湾の浅場に生息している。好気性の軟泥底を好む。
【外観・生活】 全長は7cm程度で、細長い体をしている。体色は薄褐色で腹面は白い。 体側に複数の暗色斑と縦帯があり、背面には小黒点が散在して、細長い暗色班が並んでいる。 口は上あごが下あごより出ていて、大きく水平に開く。 眼は背面にあり、特徴的な口と合わせて正面からはカエルのように見える。一度見たら忘れないくらい印象的な顔つきだ。 繁殖期は春の終わりから夏にかけて。孵化仔魚は遊泳生活を送ったのち着底し、約2年で6cmくらいになり成熟するようだ。 テッポウエビ類の生息孔を利用して生活していると考えられている。 泥表面の珪藻類を主に食べるが、ムツゴロウのように干潮時に出てきて動き回りながら採餌することはないようだ。
【捕る】 軟泥底の澪筋などをタモ網で泥ごとすくう。
【その他情報】 干潟の埋め立て、護岸整備、浚渫、ダムなどの影響、底質の有機汚染化などにより、生息環境が奪われている。 現在の生息地も悪化リスクを抱えたままだ。生息地が局所化しており、個体数も少ない。
【コメント】 健康な干潟というのは、まさに本種を捕まえたような場所をいうのだろう。 明るい茶色をした泥はきめ細かくすべすべしており、ズブズブ~と足が沈んでも嫌な臭いは全くしない。 じっとしていると、そこらじゅうからプチプチ、パチパチという音が絶え間なく聞こえてくる。 それはそこにすむテッポウエビなどが発する音で、たくさんの生き物たちがいる証。 それらの生き物が泥をあちこちでかき回して、本種が好む好気性の環境がつくられる。 魚捕りをするには軟らかい泥が難儀だが、タモ網を泥底につけて早歩きしたり、タモ網を投げて引き寄せたりすると、 泥の中から本種が姿を現す。 ニョロッとした細長い体に、カエルのような顔、古代魚とか両生類とかの雰囲気をもつ、十分すぎる個性的な姿の魚だ。 汽水域はいろんな個性が混ざり合うハゼ達の楽園。しかし、それらの個性はなかなか知られることがなく、本種のように生息環境の変化に敏感な種類も多い。 知られることがないが故に、干潟で希少な種類に出会うたび心配になる。

秋の軟泥で捕まえた個体。全長は5cm ほど。泥ごとすくって泥を流すと、テッ ポウエビやツマグロスジハゼに混じって姿を現してくれる。 とてもきめ細かく滑らかな、明るい色をした泥だった。

体は細長く、第2背びれと尻びれは長 い。背びれは透明だけど、尻び れは外側が白く縁取られ、その内側に黒い帯をもつ。

秋晴れの干潟で捕まえた全長約 5.5cmの個体。吻は短く寸詰まづまっ た顔をしている。体は細長くて尾に向けてすーっと細くなる。体側には暗色斑と縦帯をもつ。

明るい色をした軟らかい泥底でタモ網に 入った。 網の中で泥を流すとひょっこり姿を現す。出会うとテンションが上がる、うれしい魚だ。

上と同所で捕まえた、全長5.5cmほ どの個体。魚というよりは、サンショウウオとかトカゲのようだ。やっぱ面白い。

秋の干潟、 潮が引いたたまりでタモ網に入った。泥ごとすくって、ユッサユッサ揺らして泥を取り除くと本種が姿を現した。 出会って嬉しい魚のひとつ。いい環境が残っている!

同所で捕まえた 全長3cmほどの幼魚。細長い体でよくあるハゼの体形だが、カエルのような顔、大きく左右に裂けた口など、とてもユニークな外観をもつ。

きめ細かい泥底を すくって捕まえた幼魚。全長3cmに満たないほどの小ささ。ツマグロスジハゼやノボリハゼの幼魚も同時にタモ網に入った。 すくった泥の中にこのカエル顔をもつニョロっとした姿を見つけると安心する。

トップ写真と同じ個体。 全長3.5cmほど。ケースを動かすと体を浮かせてくれた。

体側中央に縦帯があり、 複数の暗色斑が並ぶ。尾びれは先端が尖る形状で、尻びれと尾びれ下部に暗色部がある。

同所で捕まえた個体をいくつか。1匹ず つだとひれを広げてくれない のに、まとめて入れるとひれを広げるってのは、撮影時にたまにあること。秋晴れの下、泥だらけになったけど、うれしい出会いがあった。いつまでもこ の環境が残りますように、ありますように。

腹を見せてくれた。 のどや腹面は真っ白。細長い体につく背びれや尾びれは長い。尾びれは白で縁取られ、その内側は黒い帯がある。 腹びれはハゼの通り吸盤状。

四角い頭部に細長い 体。ニョロリ。眼は背面の前方についていて、口の左右は頭部からはみ出る。明るい泥色だ。

背面には細長い暗色班が並ぶ。 眼は背面についている。原始的というか、古代魚のような雰囲気がある。

胸びれ前縁が白く縁取られている。糞は 黄色いんだね。

裏面から。 頭部は大きく、口が左右に張り出している。腹面は真っ白だ。腹びれは吸盤状になっていて、こんな風に観察ケースにひっつくことができる。

大きな口、突き出た眼、 大きな円弧を描く吻、横から見てもカエル顔だ。口元近くからほほにかけて暗色縦帯があり、体側にも斑と縦帯がある。両生類の仲間にこんな模様の種類がいそ う。

全長5cmほどの個体の頭部。眼は前寄 りについていて、大きな口が後方に裂ける。ユニークな顔だ。

カエルのように見える個性的な顔。 人間でも人に覚えられやすい顔ってのはあるが、本種もその部類だろう。一度見たら忘れない(られない)。

横に大きく開く口をもつ。 泥表面の珪藻類を食べる点では、有明海に生息する有名なムツゴロウと同じ。でも採餌のタイミングというか場所が違う。 ムツゴロウは水から出た干潟泥面だが、本種はあくまで水中の泥面だ。その対照性が面白い。

太陽光を浴びて銅色に輝く。大きな口の すぐ上にある鼻管は通常下を向く んだね。

仲良く同じ方を向く。奥からのぞく個体 は特にカエルそっくり。かわいい。

真正面から見てもユニークな顔。上の唇 は頭部からはみ出る。背面は極小の突起が散在または並 ぶ。ほほには黒色の帯があって、胸びれは白色で縁取られる。

last modified:2023/11/5
created:2016/11/27

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