タカハヤ Rhynchocypris oxycephala jouyi
コイ科ウグイ亜科ヒメハヤ属

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タカハヤ

【生息場所】 山間の渓流域や川の上中流に生息している。アブラハヤと混棲する河川ではより上流にいる。水深10cmにも満たないような浅い流れにもいる。
【外観・生活】 体長は10cm程度。体色は黄褐色から灰褐色。 体側に暗色縦帯をもつ場合もあるが不明瞭か全くわからない個体が多い。ただし、繁殖期には明瞭になる個体が多いように思う。 体側には黒斑点が不規則に分布するが、背側から腹側までほぼ一様の濃さで分布する傾向が強い。 つかむとヌルッとしていてまるで体に油を塗っているようで、その感触は独特。手に油が付いてすぐに拭きたくなるような、何とも気持ち悪い感じになる。 本種はそんな感覚も含め近縁種の「アブラハヤ」に酷似するが、 よりずんぐりしていて尾柄がより高く(尾柄高/頭長=50%以上、尾柄長/尾柄高=2以下)、鱗はやや荒く(側線上部の横列鱗数=18以下)、 体側の縦帯が不明瞭な傾向にあり、尾びれ後縁の切れ込みがより浅い、眼はより小さく、頭の形もより幅が広く平べったいとされる。 しかし、変異が多くてその区別は容易ではない。 産卵期は春から初夏であり、雄は胸びれや腹びれが長くなる一方、雌の吻はヘラ状に伸びて何ともユニークな天狗顔になる。 本種は川底の砂礫にもぐって卵を産むが、その際にへら状に変形した吻が役立つという訳だ。 開けたところにはあまりおらず、岩陰などに群れていることが多い。雑食性で底生動物や付着藻類などを食べている。
【捕る】 河川上流域の淀みの中や、石の陰、植物の脇などに隠れている。釣り、タモ網で捕る。かなり貧食でエサがついていない釣り針にも食いつくと聞く。 本当だろうか???
【その他情報】 本種はオイカワとは競争排除的関係にあって、オイカワとの共存は本種に一方的な不利なすみ分けをもたらすそうだ。 オイカワが生息する河川ではオイカワよりも上流に生息し、淵内に共存する場合には、オイカワが淵頭や流心部を占めるために本種は岸寄りに追いやられる。
【コメント】 山の方や上流域にあまり行かない私にとって本種は馴染みの魚ではないが、大阪でも結構あちこちで確認できる。 魚捕りをしていて「カワムツばっかりや~」はよくあることが、ある程度の標高に行けば「タカハヤばっかりや~」というところも案外多い。 数多く捕れるが食用とはされないことや、普通の体形に地味な体色、さらにヌルッとした手触り感もあって、 華がないというか、印象に残らない種ではあることは否めない。かつてはアブラハヤの亜種として扱われることも多かったとのこと。 本種の方がよりずんぐりしていて・・・と形容されるが、実際は悩ましい個体も多く、特に冬に捕れる個体は判別が難しい。 両者の区別に用いられる「尾柄高/頭長」や「尾柄長/尾柄高」などが、範囲に入らない。 体の模様はあてになるのかならないのか良くわからないし、側線上部の横列鱗数は鱗が細かくて数えられない。 定量的な数値で確認しなくても、パッと見た感覚で識別できる人間の能力というのは大したものだが、 それには、そのベースとなる両者の元データ量(経験)がものをいう。 アブラハヤは関西で出会う機会が少ないが、少しずつ機会を重ねてきた結果、最近は両者の違いがだいぶわかってきた気がする。

春の個体。捕れてすぐはこのような体色。 光の加減では金粉や銀粉を散らしたように見える。手の間を滑り抜けるようなヌルッとした独特の感触は、正直あまり馴染めない・・・。

春の個体。 カワムツと一緒に落ち込みの下に隠れていた。アブラハヤよりずんぐりした印象だ。繁殖期を向かえ、体側中央の黒い縦帯が明瞭になっている。

春に捕った個体。全長10cm程度。 よく似たアブラハヤと異なり、尾柄は高く、体側中央の縦帯は不明瞭で、尾びれは丸くて後縁の切れ込みは浅く、尾びれ基底中央に暗色斑はないとされる。 この個体はそのお手本みたい?

春に捕った全長10cmの個体。 吻がへら状に伸びているので雌だ。繁殖期だからだろうか、体側中央の縦帯が濃くなっているようだ。

春の雌。 卵でパンパンの腹にも目が行くが、真横からだと何とも面白い顔だ。プチ・ピノキオ。

春に捕った全長8cmの個体。 バッカンにしばらく入れておくと体色が随分薄くなってしまい、暗色の細かい斑点模様もわかりにくくなってしまった。

春に捕れた全長4cm程度の個体。 渓流部の落ち葉が溜まっている淀みで捕れた。

初夏の雌個体。 吻が伸びた天狗顔をしている。繁殖期はまだ続いているのかな。

梅雨のはじめに捕まえた個体。 石をごろりと足でひっくり返すとそこに身を潜めている個体がタモ網に入る。 全長5cmくらいの個体から10cmくらいの個体まで何匹も捕れた。勢いよく流れる浅瀬ではカジカ大卵型がポツポツ入った。

夏の上流部で捕まえた 全長8.5cm程度の個体。三面コンクリート部分だったが、メロンくらいの石をゴロリとひっくり返すとタモ網に入った。

夏に捕った全長6cm程度の個体。 本種が生息する上流部は水が大変冷たく、ムシムシした真夏は観察ケースがすぐに曇ってしまう。

ミンミンゼミの声を聞きながら 山里の川で捕った個体。この個体は全長4cmに満たない程度だったが、もっと小型の個体もたくさん見られた。いずれも今春生まれかな。

秋のはじめに捕まえた個体。 とても水がきれいな川で、カジカ(大卵型)やアジメドジョウ、アカザ、カワヨシノボリなども確認できた。

岸の近くのボサをけり込むと入った。 カワムツも一緒に入ったけど、触った感じはカワムツと全然違う。本種は油を塗ったようにヌルッ。目をつぶっても区別できる。

全長8cm程度の個体。 草が繁茂する中流の用水路でタモ網に入った。体色は黒っぽく、背がくっと盛り上がっている。

秋に捕まえた全長10cmの個体。 がっしりとした体をしている。流れがぶつかる転石の陰に隠れていた。 体の細かいメラメラ模様は体側全体に散在しているので、よく似たアブラハヤとは間違わない。

紅葉が美しい秋の終わりに捕まえた個体。 小石がゴロゴロする河川の淵で、どんどん捕れるカワムツに混じってタモ網に入った。 明るいところにおいておくと体色が薄く、赤っぽくなる。尾柄が高くて寸胴な体形だ。

冬に捕った個体。全長8cm程度。 流れが淀む大きな石の下にカワムツと一緒に隠れていた。本種はアブラハヤと異なり、尾びれ基底中央に暗色斑はないとされるが・・・。

冬に捕った全長5cmの個体。

冬に捕った全長5cmの個体。 体側に不規則な黒斑点をもち、それらは背側から腹側まで分布する。

冬に捕った全長9cm程度の個体。 ずんぐり感がないので、こんな個体を見るとアブラハヤとの違いがわからなくなってくる。この個体、捕れたすぐの印象はタカハヤなんだけど・・・。

全長6cmの冬の個体。 この個体もとてもスマートだけど、鱗の感じからタカハヤで良いと思う。

冬に捕った全長3cmに満たない幼魚。 この場所ではタカハヤは捕れてもアブラハヤは捕れたことがないので、多分タカハヤの方だと思う。

岸に生える草の周囲を蹴り込むと、 大小複数匹が同時にタモ網に入った。スマートな個体が多いけれど、全てタカハヤだと思う。

体のこのテカリ具合から、 ヌルッとした感じがわかるだろうか。この後、するするするーっ石の表面を滑り、川に帰っていった。

繁殖期を向かえた雌。

卵をお腹にもつ個体はぷっくり。

正面から。 酷似するアブラハヤよりも平べったい感じ。

繁殖期の雌の顔。 吻はこんな風にへら状に伸びる。河床に頭から突っ込んで産卵するのに、この形状が役立っているそうだ。

last modified:2021/11/16
created:2012/1/7

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