タネハゼ Callogobius
tanegasimae
ハゼ科オキナワハゼ属
【生息場所】
河川汽水域やその周辺の海岸に生息し、泥底から砂泥底の転石やカキ殻の下などに潜む。
【外観・生活】
全長10cm程度。頭部は縦扁し、体は側扁して細長い。体の割に胸びれは大きく、特に尾びれは後方に大きく伸びる。
若い個体は体に3~4本の赤褐色の帯模様があるが、成熟すると全体的に暗褐色になる。
口は上を向き、ほほには皮皺(ひしゅう)と呼ばれる皮膚のひだがあって、成魚はちょっとグロテスクな感じ。
一生の大部分は汽水で過ごし、通常は砂泥底につくられた甲殻類の巣穴などに潜んでいるとされる。
動きはゆっくりで、左右に広げたうちわ状の胸びれを漕ぐように動かして、スーッ、スーッと水底を這うように移動する。
こんな特徴的な泳ぎをする魚は本種以外に見たことがなく、その様子は大変かわいい。
【捕る】
汽水の浅いところにある転石をひっくり返したり、ヨシなどの障害物の周囲を追い込んだりしてタモ網で捕まえる。
【飼う】
塩濃度への適応力は高く、真水以外であれば長期に飼育できる。フレークや細粒などの人工飼料も食べるようになるので飼育しやすい。
大人しいので他魚との混泳も可能だ。
ただし、冬季の水温低下には注意が必要。水温が15℃ぐらいまでなら大丈夫だが、10℃近くになるとそのうち死んでしまう。
【その他情報】
本種は南方系の魚で、国内では黒潮の影響を受ける地域に分布し、国外では台湾やフィリピンなどに分布する。
国内ではこれまで相模湾以南で確認されていたが、近年東京湾内でも確認され、生息分布を北に広げている。
南方で生まれ黒潮にのってやってくる死滅回遊魚と思われていたが、関西だと和歌山では定着している可能性がある。
【コメント】
体に対して不釣り合いなくらいの大きなひれをもち、オールを漕ぐような泳ぎ方が特徴の魚。
出会いたいと思っていた魚のひとつだったので、ヨシの根元をガサゴソして引き上げたタモ網に横たわる姿を見たとき「やった!」と思った。
その後、観察ケースに入れて、その姿かたちやゆ~ったりとした優雅な動きを見てすぐに本種のファンになった。
そんな印象的な出会いをくれた場所は過去何度か行ったことがあるところだが、その年(2018)年は大型台風がいくつも直撃した影響か、
川の様子が変わり、泥底だったところも砂底になっていて、捕れるハゼ類の顔ぶれもこれまでと違っていた。
それ以降、同じ場所でタモ網に入ったことはないので、そのときはたまたまの可能性が高いが、「いつか出会うだろう」のいつかはちゃんとやってきてくれた。
その後、いくつかの河川の転石やカキ殻のある砂泥底でタモ網に入った。
秋に捕れる幼魚はやや頭部が大きく、体は白っぽくて帯模様が明瞭、胸びれも白黒のツートンカラーがはっきりしてとてもかわいい。
成魚よし、幼魚よし、いい魚です。
干潟にある砂泥底のたまりでタモ網に入った。
赤褐色の細長い体にアンバランスなほどの大きなひれが特徴だ。言われてみれば南方の魚っぽい。
多くのハゼ類がひれを畳んで撮影に困るのに、本種はピンと立ててくれる。
胸びれは吸盤状になっていて、
ちゃんとハゼだ。
夏、違う干潟で捕まえることができた。
潮が引いてできた泥底澪筋にポツンとあった石をどけるとタモ網に入った。久しぶりに出会えてうれしい。
ひれが切れていたり欠けていたりしているが、10日ほどで完全に元通り。はやっ!
上と同じ干潟で捕まえた個体。
川の水が流れ込む石がゴロゴロしているところに隠れていた。全長5cmほど。腹部がやや膨れていて黄色いのは、卵をもっているから???
秋に捕まえた個体。
この川は全長数cmから5cmほどの幼魚がたくさんタモ網に入った。胸びれや尾びれが大きくて、ふわっふわっとした印象だ。
未成魚は尾びれ先端が尖っている。
手を広げて「飛行機~」って言いながら飛んでる格好してるみたい。
潮が引いた秋の干潟で捕まえた。
全長5cmに満たない個体。ここはやややせている個体が多かったなぁ。
礫泥底をかき混ぜて捕まえた。
全長は4cmに満たないぐらい。タモに入った礫の間から姿が見えるとテンションあがる!
秋、石がゴロゴロしてやや流れのあるところでタモ網に入った。全長は
6cmぐらい。細長い体で、ひれはどれも比較的大きく、尾びれは後方に伸びる形状だ。
潮が引いた河川、川からの水が落ち込んで深くなったところの周辺部分で捕
まえた。石や棒などの障害物があるところを好む。ちなみに尾びれを畳むとこんな感じ。
全長は5cmぐらいだった。
全長約3.5cmの個体。小さくてもちゃ~んとひれ、大きいねー。
秋、やや硬い砂泥底に点在する石の陰でタモ網に入った。
秋に捕まえた幼魚。
全長わずか2cm。石の隙間に隠れていた。幼魚の体のバランスは頭部がやや大きいね。
体は白黒で、
胸びれが上部が黒く下部が白いツートンカラーで印象的!かわいいね。
潮が引いた川の浅いところでタモ網に入った。小石が集まったようなところ
だった。横帯をもつこげ茶色の細長い体で、こんなユニークな形の尾びれをもつ。色は黒い。
上から見るとこんな感じ。
細長い体に縞模様があり、ツートンカラーの大きな胸びれがよくわかる。 頭部には吻先から眼を通り背に向かう2本の濃赤褐色のラインがある。
少しわかりにくいが、
ほほのあたりには皮皺(ひしゅう)と呼ばれるひだがある。口は上向きでちょこっと付いている。酔っぱらったような赤っぽい顔がええ感じ。
胸びれを大きく振って体を反転したところ。
それぞれのひれが大きくて、顔が小さく見える。
黒っぽいしわしわの顔で口は上を向く。胸びれは大きく、上部が黒で下部は
透明のツートンカラーだ。
正面から見ても胸びれデカッ!
この大きな胸びれを前後に大きく動かして、水底を這うようにスーッ、スーッと移動する。
その姿がとてもかわいい。
created:2018/11/3