トビハゼ Periophthalmus modestus
ハゼ科トビハゼ属

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トビハゼ

【生息場所】 河口域にある軟らかい泥質の干潟に多く生息する。ヨシ原が発達したところに多く、水と陸地が接する付近で見られる。
【外観・生活】 全長8cm程度の汽水魚。体は灰褐色で生息地の泥の色とよく似ている。体側には濃淡の模様があり小さな黒点が散在する。腹面は白い。 眼は大きく、左右がくっついていて頭上に突き出ている。平坦に広がる干潟を見渡すのに役立つのだろう。 眼の下にはくぼみがあって眼をしまうことができ、クリッと動かしてまばたきをしているような仕草を見せることがあって可愛い。 本種の特徴は、胸びれの付け根の筋肉が発達していて、それを腕のように使いながら泥底をはい回ること、 水面や泥面をピョンピョン跳びはねて移動することだ。魚なので当然えら呼吸もできるが、陸上では主に皮膚呼吸をするようだ。 ただ、体が乾くと皮膚呼吸ができないので、時々ゴロリと体を横にして体に水を塗る行動が見られる。 4~10月の活動期には、昼間の干潮時に泥面上で稚ガニやゴカイなどの底生小動物を捕食している。 潮が満ちてくると水から逃げるように岸辺の石や木杭などによじ登って潮が引くのを待つ。魚なのに水中生活は嫌いらしい。 繁殖期は6~8月で、雄は肌色のような体色になって、求愛ジャンプをして雌にアピールする。 雌が寄って来ると雄は尻振りダンスをしながら雌を巣孔に誘い込み産卵にいたる。 夏も終わりに近づけば、小さなかわいい幼魚がたくさん見られるようになり、近づくと散るように逃げる。 1年で体長5cm程度に成長し雄は成熟、雌は2年目以降に体長8cm程度になり成熟するそうで、干潟で見られる大型個体はほとんどが雌ということになる。 11月~3月は休止期で、泥の中につくった巣孔でえさもとらずにずっと過ごす。その期間は私たちの目に触れることがない。
【捕る】 タモ網に足で追い込んで捕ることはできないので、上からかぶせるようにして泥ごとすくい捕る。 警戒心が強く逃げ足が素早いので捕るのは一苦労する。「あ、いる」と思って近づくと水面をピョンピョン跳ねながら逃げ、離れた泥の上でとまる。 また近づいて・・・としてると、そのうち水中に入り泥の中に姿を消してしまう。 泥に足をとられながらなのでこちらも勘弁して欲しいところだが、向こうも追いかけっこはあまり好きではなだろう。
【その他情報】 トビハゼという名は、移動のときに跳びはねることが由来。
【コメント】 本種は陸上生活に適応進化した魚のひとつ。魚なのに水陸両用で両生類のようなくらしをしている。 見た目はとーっても不細工なのに、這ったり、跳んだり、転がったり、まばたきしたり、その仕草は愛嬌たっぷり。 水辺でないと生きていけないのに、水を嫌っているかのような振る舞いはとてもユニークで、魚にもいろいろいるんだなと思わされる。 本種との最初の出会いは、干潟でカニ達の求愛ダンスを眺めていた際、ふと近くの水際に目をやると背びれを広げた個体が目に入ったときだった。 その近くにはさらに2匹いて、写真を撮ろうと近くまで寄ると、3匹とも水面を器用に跳ねて離れていった。 そのさまは、川面に平坦な石を投げて、石がチョンチョンと跳ねる感じで、子供の頃に回数を競った遊びを思い出した。 夏や秋になるとその年生まれのおチビちゃんがたくさん見られるようになる。 歩いて近づくと、泥底を小刻みに跳ねてヨシ原に逃げ込んだり、水面をチョンチョン跳びながら離れて行ったり、 懸命に逃げて、私が進む方向をワーッと空けてくれる。 邪魔してごめんなさいねと思いながらも、とても自然豊かな中にいる感覚になる。 可愛いし、ユニークだし、一度飼ってみたいと思うのだが、不慣れな汽水生物、生活の場が泥上、魚なのに水嫌い、活動期と休止期・・・ なんてことを考えると、とても難しそうで、本種とは干潟だけの出会いに留めている。

春の干潟で出合った個体。 タマリの泥底でタモ網に入った。活動期はまだ先で、水中の泥底でじっとしていたようだ。何カ月も餌をとっていないからだろう、少し痩せている感じだった。

春の汽水で捕まえた個体。 ビリンゴやボラの稚魚があふれるタマリで、私の姿に驚いた個体が水面をピョンピョン跳ねながら逃げて行く。

夏の干潟で捕った個体。 水際の軟らかい泥の上で見つけた。全長は6cmくらいだった。

秋の個体。 近づくと水が引いた泥底をピョンピョンと逃げる。観察ケースに入れるとひれを広げてポーズしてくれた。

8月の終わりに捕った今年生まれの幼魚。 全長は3cmほど。近づくとあちらこちらで幼魚が跳ねながら散るように逃げていく。 すばらしい環境だ。

さらに小さい幼魚。 この個体は全長は2cmくらいかな。かわいらし過ぎる・・・。

9月に行ってみると 少し大きくなった個体が見られた。おチビちゃんもたくさんいた。

5月下旬に捕まえた個体。 そこは小型の個体が多く見られ、子供のよき遊び相手になってくれた。

気温が下がると動きはやや緩慢になる。 手のひらにのせてもすぐに動かない。

水中から周囲をのぞく。 胸びれを腕のように使って体を支えている。第二背びれには黒色の筋模様がある。雰囲気はなんとなく両生類、爬虫類・・・。

初夏に出会った個体。 近づくと尾部を上手に使ってピョンピョン逃げてしまう。左は卵をもっている雌かな。

胸びれの付け根が腕のようだ。 この胸びれを使って、泥底の上をのそのそはい回る。

腹面は白く、 腹びれはチョウネクタイのような形をしている。壁面などにはり付くときはもちろん、泥底をはい回るときにも胸びれと一緒に腹びれも上手く使う。

大きな頭に飛び出た眼が特徴的。 天敵を注意深く見るために眼がてっぺんについている。時々眼をクリンとまばたきさせる。底生動物を食べるので口は下向きだ。 こういうアングルは特にかわいいね~、愛嬌抜群!

「何見てんのよ~」って言われているようだ。

石に寄りかかる姿。本種らしい、ええ感じ。

last modified : 2017/3/20
created:2015/6/10

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