ヤリボテ(交雑種) Tanakia lanceolata × Tanakia limbata
コイ科タナゴ亜科アブラボテ属 ヤリタナゴ × アブラボテ

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ヤリタナゴ×アブラボテ(交雑種)

【交雑種の説明】 ヤリタナゴとアブラボテの交雑種。両種は同属で同所に生息していることも多いため、たまに確認することができる。 出現する年はまとまった個体数が見られるように感じる。
【生息場所】 流れのある河川の中下流域、支流、用水路などにいる。 当然ヤリタナゴ、アブラボテの双方が生息している場所だ。
【外観・生活】 全長は8cm程度。外観的にはヤリタナゴとアブラボテの中間的特徴をもつ。例えば体色や体形、背びれや尻びれの形状や模様、分岐柔条数、 さらにそれらのひれの付け根にある鱗列の感じなどから判断できる。 ただし、ひとくちに中間的特徴とっても変異に富み、典型的な個体もいれば当然微妙な個体もいるので、総合的な視点が必要だ。 生活様式はヤリタナゴやアブラボテに類する。
【捕る】 用水路での釣り、タモ網での採取など。
【飼う】 飼育はとても容易であるが、性格はアブラボテの血を引いているだけあり、雄の場合は激しい部類に入る。 繁殖期には水槽内ではほぼ絶えず混泳魚を追い回している。性格上追い回さざるを得ないのだろうが、疲れないだろうか・・・。雌は比較的大人しい。
【その他情報】 交雑個体は、例えば渇水期だと限られた場所で近接して産卵することになるので、生まれやすい。タナゴの仲間の交雑は良く知られている。 ヤリタナゴとアブラボテのように共に「コイ科タナゴ亜科アブラボテ属」に分類され、極めて近い関係の場合は特に発生しやすいようだ。 しかし実際には属を越えて、タイリクバラタナゴとアブラボテ、ヤリタナゴとシロヒレタビラ、 さらには秋産卵のカネヒラと春産卵のタビラとの交雑個体なども見つかるそうだから、どうもいろんなパターンがあるようだ。
近縁種間で交雑は起こるが、一般には次世代を残せない不稔性であることが多く、稔性であっとしても雌雄比が偏ったり奇形だったりする。 本交雑種は稔性の性質をもつが、世代を重ねてもこのまま後世に残らないそうだ。 いずれはヤリタナゴかアブラボテのどちらかの特徴が強く出て、中間種の特徴は消えていく。 さらに、ヤリタナゴの特徴が強い個体ならヤリタナゴと、アブラボテの特徴が強い個体ならとアブラボテとという風に、交雑種と純系の交雑が進み、 いずれ純系に吸収されていくという。
【コメント】 上で書いたようにタナゴの仲間はいろんな交雑種が見られるが、本種は最も出現頻度が高いのではないだろうか。 「ヤリボテ」という名称も、タナゴをかじったことがある人ならおよそ知っているであろう交雑種としては有名な名称だ。あくまで 個人的な感覚だが、本種の変異は多岐にわたり、その中には微妙に気持ち悪いと感じる個体がいる。 それはロボティクス分野で言うところの「不気味の谷」的な感覚で、ヤリタナゴやアブラボテに似ている度合いによって、 特に変な違和感を感じる範囲というのがある。その個体が悪いわけでも何でもないのだが、人間の視的感覚とは面白いものだ。 それにしても、生物の進化の過程では、このような交雑がいろんな種で繰り返されてきたのだろう。 ニッポンバラタナゴとタイリクバラタナゴのような、本来生息地が異なるために隔離されていた種同士が人の活動が原因で交雑することは問題であるが、 本種の親であるヤリタナゴとアブラボテは同所に生息することも多く、 それらによる自然交雑は長い目で見れば生物の進化や種の分化、環境適応に必要なノイズなのかも知れない。

トップ写真と同個体。 夏の終わりに捕った全長約5cmの雄で、両者の中間的特徴が見られる。 ヤリタナゴのようにすらっとしているが、シャープさがなくアブラボテのように変に丸っぽい。 体色は褐色が強くてアブラボテっぽいが、ヤリタナゴのように妙にキラキラしていた。 ちなみに体高比(=体長/体高)は約2.7でヤリタナゴとアブラボテの中間だ (ちなみに、原色日本淡水魚図鑑によると、体高比はアブラボテ2.2~2.8、ヤリタナゴ2.6~3.3)。

秋に用水路で捕った個体。 全長7cmを超えるくらい。体が褐色で、こんなすらっとしたアブラボテもいそうだが、例えば、背びれの付け根にある鱗列がアブラボテほど特徴的でない。

比較的わかりやすい個体かもしれない。 ヤリタナゴのようなスラリとした体形にアブラボテのような背びれ、尻びれをもっている。背びれ付け根の鱗列も中間的。(*)

上と同所、同時に捕った別個体。 捕ったところはややアブラボテが多い河川だ。全く確認できない年もあれば、多くの個体が確認できる年もある。

一見するとアブラボテだが、 体高比(=体長/体高)が約3.0と大きくてアブラボテより細長い体をしている。 尻びれの黒い縁取りが幅が広く、背びれには薄く朱色が見えるなど、アブラボテとヤリタナゴとの中間的特徴が見られる。(*)

アブラボテとの判断に迷う個体。 もしかしたらクオーター?春に釣れた。この個体はひれの模様はアブラボテだが、ひれの縁が妙に直線的だ。 体高比が大きくヤリタナゴっぽさがある。純系にも個体差があるため典型的な個体以外は同定が難しいが、この子もヤリボテの可能性が高い・・・?(*)

(*)個体の同定は 日本淡水魚類愛護会の西村さんにご協力頂きました。感謝です。

last modified:2015/5/16
created:2012/1/7

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