魚の投入と飼育

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美しい水辺を模した水槽 ここでは、魚の投入から飼育に関して気を付けなければならない点について簡単に記します。 飼育においてはエサやりや水換えなど、日々世話をすることがあります。 これらの世話の内容は経験によるところが多く、魚を飼育しているうちに、「何となくこんな感じ」というのがわかってきます。
魚を投入する
混泳魚の選択には注意
エサとエサやり
水換え
夏の高水温対策

魚を投入する

持って帰って大丈夫? (1)水温には気をつかう
持ち帰った魚を水槽に投入する際、水温には少し気をつかいましょう。あまり神経質になる必要はありません。 持ち帰った魚が入っている容器の水と、これから入れようとする水槽の水の双方に指を突っ込んでだいたい同じくらいの水温であれば、 魚をすくって水槽にポチャッと入れて大丈夫ですが、一方が他方より、ちょっとぬるいなとか冷たいなと思うようであれば温度合わせをします。 やや厚めのビニール袋に魚と水を入れ10分程度水槽につけから放すというものです。
(2)投入後はしばらく様子を見る
水槽に放された魚は底の隅に隠れたり、あるいは落ち着きなく上下しながら泳ぎ回ったりして、しばらくは少し変な行動をとります。 これまでとは大きく異なる新しい環境に入れられたので、このような行動は当然かもしれません。 しばらくは照明も付けず、エサも与えずにそっとしておきます。数日すれば水槽の環境にも慣れて、次第に落ち着いてきます。 様子を見ながらエサを与え始めましょう。
(3)薬浴は必ずしなければならないものではない
「採集してきた魚の中には有害な病原菌や寄生虫をもっているかも知れません。水槽に投入する前に薬浴をしましょう」 とほとんどの飼育書には書かれていますが、薬浴は必ずしなければならない行為ではないと思います。 薬浴は確かに付着している病原菌を減らすのでしょうが、完全に取りきることはできず、下手をすれば逆に魚の体調を崩してしまう場合もあります。 水槽に入れる前に透明ケースに入れてその魚をよく観察し、問題がないようであればわざわざ薬浴をさせなくても良いと思います。 採取した場所の水が非常に汚くて気になるようであれば、水槽近くにトリートメントタンクを用意し、 カルキを抜いた水道水をベースに数日程度薬浴させても様子を見ても良いかも知れませんが、どの程度効果があるかはわかりません。

混泳魚の選択には注意

水辺でたくさんの種類の魚が捕れたとしても、彼ら全てが同じ水槽に入れて仲良く生活してくれるとは限りません。 水槽の数や設置スペースは限られていますから、混泳魚の選択は重要です。 いつの間にかいなくなっていた、ケガをして死んでしまった、どんどんやせ細っていき元気がなくなったなどの事態にならないようにしたいものです。
自分の半分の大きさのあるカマツカを食べるドンコ (1)肉食魚の扱い
まず最初に注意すべきは、肉食魚の扱いです。左の写真は飼育中のドンコが自分の体長の半分以上もあるカマツカを頭からくわえているところです。 混泳をさせた最初から少し気になってはいましたが、自分の半分以上の体長の個体をさすがにドンコも食べないだろうと思っていました。 しかし見事に予想は裏切られました。口からカマツカの尻尾を出したまま半日程度この状態でしたが、結局食べてしまいました。 ドンコ同様に、ナマズの仲間やウナギなども口に入るものなら食べてしまいます。彼らにとって混泳している小魚はまさにエサそのものです。 また、ウキゴリやヌマチチブなどのハゼの仲間も同様に小魚を食べてしまいます。 自分より大きな魚にも果敢にアタックしてヒレをかじるなど、何かとちょっかいを出す困りものです。
オヤニラミのように、同種での混泳には注意を要する種もいます。 常時顔を合わすような環境では、一般にオスメスを問わず一方が死んでしまうまで攻撃を続ける場合があります。 これらの種は単独飼育が基本だと考えた方が良いでしょう。 それから、ヒガイ類は雑食ですが、たまに混泳魚の目玉や肉を食べることがあります。 ふと水槽をみると混泳していたタイリクバラタナゴの片目がなくなっていた、カマツカの腹を突いていたということがありました。 何らかの栄養素が不足していたためこのような事態になったのだと思いますが、このような特性をもっていることを把握しておくべきです。
(2)繁殖期は注意
雑食性であるコイ科の魚は混泳に向くものが多いですが、注意を要する種もあります。 アブラボテなどのタナゴの仲間は、特に繁殖期になるとなわばりをもち、近づく魚を執拗に追いかけ回します。 限られた大きさの水槽の中で追いかけ回されているうちに、ヒレが割れ、吻や体をぶつけてケガをしてしまいます。 ケガが原因となってウィルスや細菌に感染して死んでしまうこともあります。 このような場合は単独飼育をするか、逆に飼育個体数を増やして注意を分散させてやればマシになります。
激やせしたスジシマドジョウ(飼育20ヶ月) (3)底モノは残りエサの掃除屋ではない
オイカワやカワムツは上中層域で活発に泳ぎ回り、落下してくるエサを素早く食べてしまいます。 混泳させている底棲のスジシマドジョウやカマツカはもちろん、低層域を好むモロコやタナゴの仲間にもエサが十分に行き渡りにくくなります。 時にドジョウやカマツカの仲間は、食べ残したエサの掃除屋さんとして扱われますが、 きちんとエサを行き渡るようにしないと、左写真のようにどんどん痩せていきます。 飼育していたチュウガタスジシマドジョウは最終的にはびっくりするくらいペラペラになって衰弱死してしまいました。 底モノは実は混泳には向かないのかも知れません。

エサとエサやり

健康な魚体は「バランスのとれた食」からですが、エサやりは実はとても難しい項目のひとつです。 基本な考え方は、適切な種類のエサを適切なタイミングで適切量を与えることです。
(1)エサはいろんな種類のものを
エサには、生き餌、冷凍餌、乾燥加工餌、人工飼料などがあります。一般には保管や扱いやすさの点から市販の「人工飼料」がメインのエサになると思います。 人工飼料はいろんな材料からできているようだし、栄養も考えられているだろうから、「これだけあれば安心」・・・ と思うかもしれませんが、そうとは限りません。ほとんどの人工飼料は主原料がフィッシュミール(=肉)だからです。
雑食性の魚は確かにミジンコ、イトミミズ、ボウフラ、落下昆虫など様々な「肉」を食べていますが、 同時に付着藻類、植物プランクトン、水草などの「野菜」も食べています。様々な種類のものを食べているから雑食であって、 人工飼料ばかりを与えることは、魚肉ばかりを与えていることとほぼ同じで、栄養が偏ると考えるべきでしょう。 栄養が偏ると人間と同じで、様々な病気の原因になります。 従って、成分が異なる人工飼料をいくつか与えながらも、茹でたホウレンソウ、カボチャ、エダマメ、ゴハン、アカムシなど様々なエサをたまに与えましょう。 肉食魚についても同様です。小魚、エビ、昆虫など、もちろん偏らないようにした方が良いです。 日本淡水魚類愛護会 が詳しく、実際やってみるといろんなことに気付きます。
(2)古い人工飼料を与えない
上で書いたように、エサはあくまでも様々な種類のモノを与えるべきですが、メイン飼料になるであろう人工飼料について注意することを記しておきます。 人工飼料には、魚の健康を維持するために様々なビタミン類やミネラルが加えられています。それはこれらが欠乏すると様々な害を魚に及ぼすからです。 水質管理は行き届いているのに、病気になったり、調子が悪くなったりする場合は、その原因がエサにないか疑ってみる必要があると思います。 おそらくキョーリンなどの飼料メーカーは、日々研究を重ね、淡水魚飼育に必要十分な量のビタミン類やミネラルを添加した飼料を開発していると思います。 従って、市販されている人工飼料をきちんと保管し与えている限り、ビタミンなどの栄養素が大きく不足することはあまりないかも知れません。 しかし、ビタミン類の中には壊れやすいものが多く、保管を誤るとエサが悪くなり、それをメイン飼料として魚たちに与えることになるのです。
エサの管理で気を付けることは、エサを①長期保存しない、②高温・多湿な環境に放置しない、③光を当てないことです。 例えば人工飼料の購入では、できるだけ新しく、やや割高になりますが短期間で使い切れるよう、小さめのパッケージのものを選ぶようにします。 多くのビタミン類は高温・多湿な環境に弱いため、容器には乾燥剤を入れ、できるだけ涼しいところで保管するようにします。 さらにビタミンB群は紫外線で壊れやすいので、光が当たらないところを選びます。 家族の同意が必要かも知れませんが、冷蔵庫に保管できればベストです。乾燥剤を入れた小さな容器に小分けして取り出し使用すると良いと思います。 気付かぬうちに古いエサを与えてしまうこともあるので、開封日をパッケージに記入し、 例えば半年以上経過した残りエサは、ゴミ箱に捨てるなどのルールを自分でつくっても良いと思います。 なお、タモロコやフナなどの養殖業者には人工飼料は3ヶ月で使い切るように指導しているとお聞きしたこともあります。
(3)エサやりは様子を見ながら
エサやりの時は、魚をよく観察するようにし、魚体やエサを食べる様子を観察しながら、魚の健康状態をチェックします。 そして、エサの量や頻度を決めていきます。 エサやりについて飼育本には「1日に1~2回、すぐに食べきる量を毎日決まった時間に与えましょう」と書かれていますが、 必ずそうしなければならない訳ではありません。それは魚の種類、成長の度合い、水槽の環境や季節(水温)などによるからです。 例えば、稚魚であれば毎日数回少量ずつ、成魚であれば毎日1回程度、 また、水温の高い夏場は魚の代謝が高いため毎日、冬の場合はその逆で数日に1回など、一概に言い切ることができません。 ただし、食べ残しは水を汚すため、エサの与え過ぎには注意した方が良いです。やや少ないかなと思う程度の方が調子が良いように思います。
それから、いくつかの種類を混泳をさせている場合、魚の種類によってエサ取りの行動が異なるため、すべての種類、個体に十分行き渡らない場合があります。 そのような時は例えば、浮遊性と沈下性のエサを混ぜたり、粒の大きさの異なるエサを混ぜたり、 または給餌回数を減らして一度に多くのエサを与え、エサとりが上手でない種類にも行き渡る様にしたりします。 いろいろ考えて、エサをとる様子を見ながら試してみて、エサに関する経験とカンが蓄積されていきます。 自分の飼育水槽に合った自分なりの「こんなもん」を見つけてください。

水換え

適切な水換えにより魚の健康が保たれます。 水換えもまた大変重要な項目のひとつです。
(1)ルーチンとしての水換え
魚の飼育は、水量が限られた中に有機物であるエサを投入し続けるため、日に日にその飼育水は汚れていきます。 水槽には、生物濾過をするバクテリアがすんでおり、残り餌や排出物は各種のバクテリアの働きによって、アンモニア→亜硝酸→硝酸塩に変化していきます。 最後の硝酸塩は毒性が弱いのですが多く蓄積すると良くないので、それを希釈するために水換えを行います。
まず、水換えの水は水道水が良いと思います。水道水は人が飲めるくらいに十分きれいですが、塩素が含有されているためカルキ抜きを入れます。 注意することは、同じ程度の水温を保つようにすることです。特に冬場の水道水はかなり低い場合があり、温水を混ぜる必要があることもあります。 また、生物濾過をしてくれるバクテリアを極端に少なくすることを防ぐため、水換えする水の量は水槽の半分程度にします。 水換えの頻度は季節や飼育環境によりますが、水が汚れてきたなと思う頃に行います。 水質が悪くなると、魚が臆病で隠れるようになったり、水の色が薄黄色っぽくなったりするので、そのようなサインを使う方法があります。 しかし、そんなサインがなくても、早め早めの水換えを心がけるようにします。10日とか1週間に一度などと水換え時期を決めておいても良いと思います。 水温が高いほど、飼育匹数が多いほど水質の悪化は早く進みます。状況を見ながら柔軟に対応することが重要です。 水槽内の古い水を抜くときは、ホースクリーナーを使って底に溜まったゴミやフンも同時に取るようにします。 なお、水換え後は濾過バクテリアが減少しているので、直後にはなるべくエサを与えないようにします。成魚であれば1日くらいエサを与えなくても平気です。
(2)病気になったときは水換え
魚が病気になったらまずは水換えしましょう。その後も様子を見ながら、水換えの水量を増やしたり水換えの頻度を高めたり塩濃度を変えたりします。 病気の原因となった病原菌を水槽から極力排除し、自己治癒力を助けるためです。 程度の軽い早期の病気を、薬浴に頼らず水換えだけで治せたことが何度があります。 薬は魚に大きな負担を与える場合もあるため、薬に頼る前にまずは水換えで様子を見るようにします。 また、水槽内に突然死魚が出た場合もできるだけ速やかに水換えをするようにした方が良いです。

夏の高水温対策

高水温は、魚にとって良いものではありません。 高水温になると飼育魚の代謝が高くなる一方で、水の溶存酸素量が減少し飼育魚や濾過バクテリアが酸欠状態を起こすからです。 従って高水温時には、まず、追加エアレーションなどで酸素供給量を増やす対策を行います(これを忘れてはいけません)。 高水温のひとつのボーダーラインは30℃のように思います。 真夏には水槽内の温度は30℃を簡単に越えることがあり、何かと問題が発生しやすくなります。以下に、高温対策についていくつかの方法を紹介します。
水槽のフタを交換する: ガラス蓋を網目状のものに変えます。これだけで数度下がります。
風を送る: 小型扇風機で水面に風を当てます。気化熱で水温を2~4℃程度下げることができます。
氷を浮かべる: 一時的に水温は下がりますが、急激な水温変化を伴い、再び水温は上昇し始めます。
水換えをする: 新鮮な水の供給と同時に水温も下げることができますが、効果は長くありません。
水槽用クーラーを設置する: 金銭的に余裕のある方にはお勧めです。高価ですが効果は抜群でしょう。
部屋のクーラーを常時つける: 部屋に多数の水槽をもっている場合には、有効な手段かも知れません。
私は、夏場になるとフタを網目のものに交換(園芸用の鉢底に敷く網目状のプラスチックシートと水槽上部に固定するための固定具を自作)し、 水温を見ながら必要に応じて扇風機で風を送ります。場合によっては水換えをすることもあります。 これらの安価な対応策で何とかやり過ごすことができています。

<参考・引用ソース>
●川魚入門、マリン企画、2001年
●秋山他、川魚 完全飼育ガイド、マリン企画、2003年
●川や湖の生き物の飼い方、ピーシーズ、2011年
●秋山他、川魚飼育のすべて、エムピージェー、2011年
日本淡水魚類愛護会

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