ムサシノジュズカケハゼ Gymnogobius sp. 1
ハゼ科ウキゴリ属

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ムサシノジュズカケハゼ

【生息場所】関 東地方の那珂川、利根川、荒川、多摩川水系のみから知られ、河川中流域の淀みに生息している。
【外観・生活】 全長6cm程度になる。普段の体色は褐色をベースとして体側には暗色の横縞をもつ。腹部はクリーム色。 受け口をしていて、眼から口にかけて暗色の筋がある。背びれや尾びれには暗色点列が並ぶ。 ジュズカケハゼ(旧ジュズカケハゼ広域分布種)も同所に生息するが、本種はジュズカケハゼよりも吻が長く、両眼間隔が広い傾向にある。 また後述する雌の婚姻色は第1背びれ後部に黒い色斑が不明瞭などの特徴もある。 汽水域に生息するビリンゴにも似ているが、体側の横縞模様や吻の長さ、純淡水域で捕れることを踏まえれば判別は可能だ。 繁殖期は春。ウキゴリ属は繁殖期になると雌に婚姻色が現れることが特徴だが、本種もその通りで、 成熟した雌は第1背びれと2背びれが伸張して黒くなり、全身も黒っぽくなって体側には鮮やかな黄色の横筋模様が数本入る。 雄は砂泥底に巣穴を堀り、雌は婚姻色に染まったひれを大きく広げて闘争したり、求愛したりするそうだ。 雌は雄と一緒に巣穴に入って壁面に産卵し、その後は雄が卵を守る。 成魚、幼魚とも一生を淡水で過ごし、ユスリカの幼虫などの小動物を食べている。
【捕る】 河川の淀みなどでタモ網で捕る。素早く遊泳する魚ではないので、生息していれば採捕は比較的容易。
【その他情報】 かつてジュズカケハゼとされていたものは現在4種類に分類されている。 本種はジュズカケハゼ関東固有種と呼ばれていたが、ムサシノジュズカケハゼという和名がつけられた。学名はまだ定まっていない。 本種以外には、ジュズカケハゼ(旧ジュズカケハゼ広域分布種)、コシノハゼ(旧ジュズカケハゼ鳥海山周辺固有種)、 ホクリクジュズカケハゼ(旧ジュズカケハゼ富山固有種)があるが、それ以外の地域個体群が存在する可能性もあるそうだ。 河川工事などによる繁殖地の減少、国外外来種のコクチバスや国内外来種のオヤニラミなどの進入、定着が原因で個体数は減少傾向にある。
【コメント】 普段は地味だけど、黒と黄色の婚姻色がとっても美しい魚。ジュズカケハゼ種群は大阪周辺にいないので、機会があれば出会いたかった魚のひとつだった。 夏の終わりに関東で魚捕りをする機会があって、そのとき初めて手にした。体は小さく、褐色をベースとしたその「地味~な感じ」はまさに雑魚。 一般には決して注目されない、特徴に乏しい容姿だ。ところが、翌春に行ったときに捕まえた雌は、その容姿を大きく変えていた。 体は真っ黒で、体に鮮やかな黄色の横縞。観察ケースに入れるとひれを大きく広げ、黒と黄色のコントラストを見せ付けた。 まだ静かな河川中流域の水辺で見たその美しさは感動ものだった。

春のはじめ、 梅が満開の頃に捕まえた個体。インパクト抜群の婚姻色を帯びているかなと思って川に出向いてみた。 黄色の横筋が見られるものの、まだ少し早かったみたいだ。

同じときに捕まえた雌と思われる個体。 繁殖に向けて、腹びれや尻びれが黒くなり始めている。

年によって繁殖のタイミングが違うのか、 ほんの数日の差で大きく変わるのか、上の個体とほぼ同じ時期、同じ場所でも今年はもうこんなに婚姻色を帯びている。 ひれが伸び黒く色づく、体側の黄色が映える、ほぼすべての個体がこんなだった。かっこええな。

上と同時に捕まえた個体。 全長6cmほど。中流河川支流の落ち葉が積もった淵の底でタモ網にたくさん入った。尾柄がキュッとしまっていいスタイルだ。

婚姻色に染まっていない個体。 繁殖期を迎えても地味な体色なので雄かな。よく見ると体側に鮮やかな黄色がわずかに見られる。

春に捕まえた個体。 おそらく雄かな。派手な黄色横帯をもつ個体が多い中で、ポツポツ地味な個体が捕れた。 この個体、どこか顔がやさしいというかやわらかい感じがする。男の子っぽい。

春、桜満開の下で捕まえた。 桜をバックにひれを全開。ワイルドで美しい。

春に捕まえた雌。 ひれを黒く染めて体に鮮やかな黄色の横帯、美しいね。中流河川の淀みでヒガシシマドジョウなどとタモ網に入った。

上と同所で捕まえた雌。 流れが淀んで、落ち葉がゆるく堆積している場所をごっそりすくって捕まえた。全長は5.5cm程度。

これも上と同所で捕まえた。 緩い楕円形の体できれいなボディラインを描いている。 背びれや尾びれに点模様が見られるが、婚姻色が進むとそれらも消えていくようだ。

桜の花びらが水面を流れる時期に多摩川で 捕まえた全長約5.5cmの雌。春の繁殖期を迎え、雌は特徴的な婚姻色を帯びる。黒く色づいた体に鮮やかな黄色の横縞が目を引く。 第1背びれ後部に黒斑が見られないので、ジュズカケハゼではないことがわかる。

同時に捕まえた別個体。 上の個体より小さくて全長4.5cmくらい。婚姻色の出方やひれの伸張度合いは個体によって異なるようだ。 透明度の高い河川中流域の淀みの砂泥底でタモ網に入った。

夏のはじめに捕まえた個体。 頭が大きい、このずんぐりした感じが好き。この個体は全長5cm程度の成魚だったが、全長3、4cmの幼魚も同時に見られた。

夏の終わりに捕まえた個体。 濃褐色の体に暗色の横縞をもつ。背びれや尾びれには点列が並ぶ。たくさん捕れたがその中で、最も大きかった個体。雌かな。

腹部はクリーム色で薄黄色をしている。 口は大きくて、上顎の後端は眼の中央下より後ろに達することが特徴のひとつだ。眼から口元にかけて暗色の筋がある。

流れの緩やかな岸近くの砂泥底で タモ網に入った。ギバチの幼魚も同時にたくさん捕れた。

同所で捕まえた個体。 全長4.5cmくらい。雄は雌より一回り小さいが、同所で捕まえた大きな個体と比べると雄ということでいいのかな。

これも一回り小さかった個体。 全長4cmを超えるくらい。

全長6cm程度の大きな個体。 本流から離れたよどみの草陰でたくさんタモ網に入った。水底に目をやると、砂泥底を逃げるように散らばる姿も見られた。

秋に捕まえた個体。 中流域の流れが緩やかな場所にある草の陰でタモ網に入った。水が淀み、枯れ葉などのごみが集まるようなところでも捕れる。 アブラハヤ、ウグイ、スナゴカマツカ、クロダハゼ、ホトケドジョウ、ギバチなど、関東を感じるいい水辺だ!

冬のはじめに捕まえた。 水が淀んで落ち葉が積もっているようなところに隠れている。 すでに雌の体はやや黒っぽくなっていて、体側には黄色の横筋模様が入っていた。 繁殖期の春にはもっと鮮やかな黄色が映えるようになる。

2月中旬の中流域で捕まえた。全長6cm を超える大きな雌だ。まだ寒いけど、もう繁殖期なのかな、こんなに婚姻色が出ている。驚いた!

同時に取れた別個体。 捕れるのはこんな体色の雌ばかり。流れの脇で落ち葉や枯れ草がたまっているような砂泥底でタモ網に入る。 水はまだかなり冷たいけど、本種はもう春を感じているんだね。

さらに別個体。 お腹の中は卵でいっぱいかな。メリハリのあるボディが美しい!ほんと、素晴らしいね!

夏のはじめに捕まえた幼魚。 全長4cmくらい。

上と同河川で捕まえた個体。 やや小さくて全長は3cmに満たなかった。

繁殖期の雌がひれを全開したところ。 太陽の光を浴びた体側の鮮やかな黄色が美しい。腹びれや尻びれには光の加減で、メタリックに輝く部分がある。 なんと美しい姿だろう、感動すら覚える!自然はやっぱすごいな。

上から。 地味な体色であるが、背の体色や模様は砂泥底での保護色になっている。 一見いないように見えるところでも、タモ網を構えて、足でガサゴソ追い込めば不思議なことに捕れることがある。

春の雌を上から。 婚姻色である体側の黄色が上から見てもわかる。

婚姻色を帯びた雌の腹びれはこんなに真っ黒! すごーっ!

本種の頭部をアップ。 ジュズカケハゼより吻は長く、眼から口にかけて暗色の帯がある。

真正面から。 口は上を向いていて、大きく開く。

こんなアングルからは、 ウキゴリ属の面構えをしていると感じる。

婚姻色を帯びた春の雌。 体側の黄色は卵の黄身みたいな色やな。

春のはじめに捕まえた。 黒っぽい個体と黄色っぽい個体が捕れたのだが、黒っぽくなっているのは繁殖に向けて婚姻色を帯び始めている雌かな。

last modified:2023/2/20
created:2018/8/20

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