魚種指定の法令
在来の淡水魚を取り巻く環境は総じて悪化してきており、中には著しく個体数を減らしている種もあります。
そのため、下記にあるような文化財保護法、種の保存法、地方自治体の法令により淡水魚の保護対策がとられています。
また、在来の淡水魚に影響を与える外来種については、外来生物法により飼育や運搬などの行為が禁止されています。
文化財保護法(天然記念物)
天然記念物は「文化財保護法」(文化庁)で定められています。
日本淡水魚で天然記念物に指定されている種は、イタセンパラ、アユモドキ、ミヤコタナゴ、ネコギギの4種です。
これらの種は生息地域が限られかつ狭く、また個体数は極めて少ないので、まず「偶然に捕れることはない」です。
ほとんど方はこれらの容姿や特徴を知らないと思いますので、もしたまたま捕れたとしても、それが天然記念物であることに気づかない可能性もあります。
天然記念物は採取してはいけないという記事を雑誌で見かけたこともありますが、明確に禁止している条文はどうもなさそうです。
しかし、少なくともモラルとして天然記念物の狙った捕獲や採取などはしないようにした方が無難かもしれません。
なお、上記4種のうちネコギギを除く3種については、下記の「種の保存法」で明確に捕獲、採取等が禁止されています。
また、これらの国指定の天然記念物以外に、県・市・町指定の天然記念物があります。
和歌山県白浜町のオオウナギ生息地や奈良県のイワナ(キリクチ)生息地などです。
種の保存法(国内希少野生動植物種)
「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)」(環境省)で、国内希少野生動植物種が定められています。
魚類で国内希少野生動植物に指定されている種は、アユモドキ、イタセンパラ、スイゲンゼニタナゴ、ミヤコタナゴの4種です。
同法によれば、「国内希少野生動植物種の生きている個体は、捕獲、採取、殺傷又は損傷をしてはならない」(第9条)とあります。
生息地を探り出し、意図的に捕ることは許されません。
法の解釈上、たまたま偶然にすくいあげた網に入っていただけでも法律違反ということになると思いますので、罰則の対象となります。
スイゲンゼニタナゴについては、意図的に採取していた捕獲者が地域の保護団体に発見され、逮捕される事件が実際にありました。
これらの種は網に入らないことを祈りましょう。
地方自治体の法令
地方自治体が独自に定めている法令です。
近畿地方では、例えば滋賀県で定められている「ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例」があります。
この条例によると、滋賀県内ではイチモンジタナゴとハリヨの2種(指定希少野生動植物種)について許可なく生きている個体を捕獲、
採取することができません(第12条)。水辺で比較的多く見られるナゴヤダルマガエルも指定希少野生動植物種に指定されているので同様です。
また、オヤニラミやタイリクバラタナゴ(左写真)などの「指定外来種」については、届けなしに飼育することができません(第28条)。
さらに滋賀県は、外来魚を重要な水産資源を食害し、琵琶湖の生態系に歪みを生じさせる害魚として捉え、
「滋賀県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例」で、
滋賀県内で釣りなどのレジャーにより採捕したブルーギル、オオクチバス、コクチバスの再放流(リリース)を禁止しています(第18条)。
下に示す外来生物法では、タモ網に入ったり釣れたりしてもその場で逃がせば「法律上は」問題ありませんが、
滋賀県などではさらに進んだ規制を設けています。そのような場所では、採捕後に捕れた外来種を適切に処分する必要があります。
外来生物法(国外移入種)
外来生物とは、もと
もとその地域にいなかったのに、人間活動により海外から入ってきた生物のことを指します。
外来生物が在来の生態系等に与える影響は大きく、
その扱いに関して「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)」(環境省)が定められています。
この法律では、人間の移動や物流が盛んになりはじめた明治時代以降に海外から持ち込まれた外来種のうち、
特に問題の大きなものが「特定外来生物」に指定され、
その飼育/栽培、運搬、保管、輸入、販売、野外に放つ/植える/まくなどの行為が禁止されています。
魚類では、ブルーギル、オオクチバス、コクチバス、カダヤシ、チャネルキャットフィッシュなど13種が特定外来生物に該当し、
法律違反を犯した場合、最高で懲役3年、罰金300万円(個人)もしくは1億円(法人)が科されます。
これらの種については、予防三原則である「入れない」、「捨てない」、「拡げない」を遵守すべきです。