アベハゼ Mugilogobius abei
ハゼ科ハゼ亜科アベハゼ属

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アベハゼ

【生息場所】 河口の汽水域に生息している。有機物が堆積し臭気を放つような泥底でも見付けることができる。
【外観・生活】 全長は5cm程度。体は薄茶色でこげ茶色の模様がある。体の前半は横帯が並び、後半は2本の縦帯で、体の前半と後半で模様が異なっている。 頭部は丸く眼が離れていて、まるで歌舞伎の隈取のような模様がある。 尾びれは丸く、縦帯の後端から尾びれ上部に4本の黒色線が放射状に並んでいるのも特徴的だ。 雄の第1背びれの鰭条は糸状に伸び出し、ひれは黄色や橙色に染まって落ち着いた美しい姿をしている。なかなかオシャレな魚やね。 繁殖期は春から夏。自然環境下では寿命は1年で、いわゆる年魚なんだそうだ。有機堆積物を食べている。
【捕る】 汽水域の泥底上にある転石や流木、ゴミの陰、筒の中などに隠れているので、タモ網を構え足で追い込んで捕る。 潮が引いて干上がっているような場所にある転石や流木をひっくり返して捕ることができる。汽水の泥底にタモ網を付け、引きずって捕ることもでき る。
【その他情報】 本種は他魚が生息できないような汚染された場所でも生息することができる。 その理由は、ほとんどの真骨魚類が窒素老廃物をアンモニアの形で排泄する中で、本種はアンモニアを尿素に変える極めて特異な技をもつからだ。 水質が悪く水中のアンモニア濃度が高くなると、オルニチン・ウレア回路という尿素回路が活発に働き、アンモニアから尿素が作られるそうだ。
【コメント】 顔が丸くて両眼が離れているのでユーモラスな顔をしている。 体の前後で縞模様が横縦反対になるところが面白く、放射状に黒色線がある尾びれはどこかアート感があり、 黄色や白色、褐色や橙色など比較的落ち着いた色合いの背びれや尻びれはシックで美しい、そんな個性をもつハゼだ。 本種は嫌な臭いがするような嫌気性の泥があるようなところを好み、 上述の尿素回路を発達させることで、他魚が住めないニッチ領域を生活の場とする戦略をとった。 私にとっては、汽水域にまだ馴染みのなかった頃に、淀川の干潟を訪れてはじめて捕った魚種のひとつ。 早春であまり魚も多くなくて、またズブズブ沈む慣れない泥底に苦労しながらだったが、 廃パイプの中や細い棒切れが重なっているようなところでそれなりの数を捕ることができた。 都会の河川にも生息し、慣れない者でも比較的簡単に捕ることができる普通種なのに、見た目も生活もすごく個性的。 ハゼの奥深さの一端を感じさせてくれる魚だ。

春に捕った雄。 第一背びれ上部は黄色に、第二背びれや尻びれ、尾びれも茶色や朱色の模様が入り落ち着いた色合いながらも美しい。トップ写真と同個体。

春の泥底で捕まえた全長約3.5cmの個体。 タモ網を引いて、泥の中にクネクネ動く丸い頭部が見えたら本種だ。のどからえらにかけて黄色く色づいている。

潮が引いた春の干潟で捕まえた個体。 色付いたひれが目を引く。他魚が生息できないような汚染された場所でも見られるが、 チクゼンハゼやクボハゼなど様々なハゼ類が多数生息する良好な場所にも当然生息している。

初夏の干潟で捕った個体。全長は4cm程度。 一畳ほどの浅い水たまりにたくさん群れていた。頭部が丸くて独特の顔をしている。

全長4cm程度の雌と思われる個体。 尾びれの黒色線が目立つ。体色はかなり濃い。

全長3cm程度の個体。 この個体は体色のベース色が褐色グレーで模様が良く目立った。

夏の個体。 潮が引いた小さくごく浅い水溜まりに近づいたとき、魚が動いた様子が見えたので、網を入れてみると石の隙間で捕ることができた。 夏のガンガンの日射でかなりの高水温になりそうだけど、おそらく耐えられるんだろうな。 この個体、尾びれ下部にも黒色線がある・・・。

真夏に捕まえた個体。 本種もなかなか上手く撮れない魚のひとつだ。なかなか落ち着かず右に左にうろうろ。 落ち着いたと思ったらひれを広げてくれない。カメラを近づけると顔もなかなかこちらに向けてくれない・・・。

秋に捕まえた個体。 体色が薄くなっているから顔の「隈取」模様がくっきり。 潮が引いて淡水がさらさら流れていたが、石をどけると何匹も確認できた。

秋の干潟でタモ網に入った。 全長は約4cm。明るいケースに入れていると、体色が薄くなった。 離れ眼で頭部をもちあげたその姿は、両生類にいそうな種類に見える。

冬のはじめに捕った全長2cmほどの小さな個体。 干潟の泥をすくって捕ることができた。

早春の個体。 感潮域たまりにあるボサで捕れた。本種=泥底というイメージがあるが、そうとは限らないようだ。

春のはじめ、やわらかい泥底で捕った幼魚。

丸い吻、離れた眼、 顔には隈取のような模様がある。潮が引いた石の下に隠れていた。

早春に干潟に近い泥底で捕った個体。 全長2~3cm程度の個体がたくさん捕れた。

真上から見るとこんな感じ。 眼は顔の両端についていて、他のハゼ類と比べると離れていることがわかる。

カメラを向けると顔を向こうに向ける。 本種あるあるだ。広げたひれは透明感があり、白、茶、黒、黄色で彩られる。落ち着いた色合いで美しい。

体の後方部。 こげ茶色の模様が体側にあり、体の前半は横帯、後半が縦条になっている点で面白い。 背びれや尾びれ上縁にある白色帯が印象的で、尻びれの縁を細く彩るの青白色も目立たないけど良い。

吻はくるっと丸い。 眼は前のほうについていて、両眼は離れている。

正面から。 独特の面白顔をしている。えらぶた下部前方には黄色の斑点がある。

薄褐色とこげ茶色の体色。 顔は隈取のような模様があって、丸い吻、離れた眼もあわせてユニークな顔つきだ。口は正面についていて、やや上を向く。

顔をアップ。 体が小さくて同じように見えるハゼ類は、いずれの種も個性的だと改めて感じる。

last modified:2023/10/20
created:2013/3/30

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