ミミズハゼ Luciogobius
guttatus
ハゼ科ミミズハゼ属
【生息場所】
河川の河口や汽水域の転石や礫の下に隠れている。
浅くて流れのあるところを好み、干潮時には早瀬や平瀬になるようなところを好むように思う。
【外観・生活】
全長8cm程度。体は細長く、体色は灰色、薄褐色から濃褐色まで周囲の環境による。
頭部は縦扁していて上から潰したようなので「あたまひしゃげ」とも呼ぶところもあるそうだ。
眼は普通に発達し、頭部には2つの肉コブがある。産卵期になると雄の肉コブは盛り上がり左右に張り出す。
ハゼの仲間は背びれが2つあるが本種は第1背びれをもたない。
体には鱗がなくて粘液でヌルヌルしていて、捕まえるとドジョウやウナギのようにニョロニョロと隙間を探して動く。
水中では見た目によらず動きはかなり素早く、すぐに石の下に隠れこむ。
夜行性で、夜になると隠れていた石の下から出てきて、主にゴカイやヨコエビなどの小型の底生動物を食べる。
産卵期は春で、底が平らな石の下に雄がくぼみをつくって産卵室をつくる。
雌は石の天井面に卵を産み付け、雄が卵が孵化するまで守るが、これはハゼの仲間によく見られるパターンだ。
孵化した稚魚は海に下り浮遊生活をした後、1.5cmほどの稚魚になって河口や海岸に戻って底生生活に入るらしい。1年で3cm、2年で5cmになる。
【捕る】
昼間は転石や礫の間などに隠れている。タモ網を下流側に構え、石の隙間に足を入れたり、石をめくったりしながら追い込んで捕ることができる。
見た目によらず結構すばしっこいが、すぐに近くの石の下に潜り込むので、それを見てまた狙えばよい。
遊んでいた子供達は糸の先に結んだスルメを垂らして石底近くに置き、石の下から出てきた個体を捕っていた。案外簡単に見付けることができるようだ。
【その他情報】
ミミズハゼ種群には、ミミズハゼ、ミナミヒメミミズハゼ、イソミミズハゼといった外見がよく似た種類が含まれていて、
胸びれや背びれの軟条数などに違いがある。それらの種分化については現在も研究が進められており、将来的には20種類を超えるとも言われている。
中には地下水に棲むイドミミズハゼやドウクツミミズハゼという、とんがった種類もいる。
前者は眼は退化しており小さく淡桃色で、地下水を海や川をつなく回廊のように利用しているという。
後者は日本から知られている唯一の洞窟性水生脊椎動物で、五島列島の洞窟内の地下水が溜まっているところに生息しているが、絶滅に瀕している。
【コメント】
正面から見た顔がハートマークに見えるオモシロかわいい魚。
忖度あふれる世の中、ミミズハゼという名から「なるほど確かに太いミミズに見える」って言いそうになるが、まっ正直、私にはミミズに見えん。
ハゼなのに第1背びれをもたないなどユニークな特徴をもつが、
頭が平たく縦扁し2つの肉コブがあって繁殖期の雄はそれが盛り上がるという特徴を聞くと、河川の上中流域に生息するアカザが真っ先に思い浮かぶ。
両者は体表がヌルヌルしていてニョロニョロ動くことも同じ。
夜行性で肉食なのも、石の下や隙間に隠れて生活することも、石の下に卵を産んで雄が守ることも同じ。
これらの生活形式が大きく異なる両者に共通の特徴をもたせたのだろうか。
ミミズハゼの仲間にはたくさんの異なる種類が含まれているようで、多様性に富む。
地下生活を送るイドミミズハゼとかドウクツミミズハゼに至ってはニッチ過ぎて想像を超える。ミミズハゼ種群、深すぎる、そして悩ましすぎる。
秋に捕った全長7.5cm程度の個体。
干潮時に転石をゴロリとして捕った。潮が引いたときに淡水がさらさら流れるようなところにたくさんいる。
体はヌルヌルしていて細長く、
第一背びれがないことが特徴だ。全長は7cm。明るいバケツに入れて完全に色が抜けている・・・。
干潮時に捕った個体。
頭部は平べったくひしゃげている。好適な環境では生息数は多い。
秋に捕まえた個体。
流れのあるところの転石をどけるとタモ網に入った。
カワヨシノボリ、シマヨシノボリ、カワムツも同所で捕れるようなところたが、大潮のときなんかはすぐ近くまで海水がくるんだろうな。
春のはじめの個体。
河川の感潮域、流れが強い瀬で転石をひっくり返して捕まえた。ボウズハゼも捕れる、かなり流れの強い場所にもいるんだね、びっくり。
春の個体。
汽水域であるが捕ったときは潮が引いていて淡水が流れていた。この個体、お腹が大きいかも。
春に捕まえた
全長7.5cm程度の個体。近所の子供たちが遊びに来ていて石をひっくり返して捕まえていた。良き遊び相手なのだろう。
石をゴロリとひっくり返して、
下流側に構えたタモ網に入った。全長5cmを少し超えるくらい。このお腹、おそらく卵をもっている。体操選手みたいに体をピーン。
上と同時に捕まえた個体。
ずいぶん体がスマートだ。
GWに捕まえた個体。
体色がずいぶん薄いのは明るい砂底のせいかな。転々とあるかぼちゃぐらいの転石を転がしていくと、ポツポツ入る。
きれいな水が浅く流れるところがお好みのようだ。
春に潮が大きく引いた川で捕まえた。
全長5.5cmくらいで、透明感のある体をしている。この個体もお腹に卵をもっているようだ。
全長4.5cm程度の小さい個体。
全長3.5cmの小さな個体。
捕ったときはもっともっと焦げ茶色だった。
春に捕まえた全長7cm弱の個体。
湧き水が豊富な河川の汽水域で捕った。捕まえたときは潮が引いて周囲からごく薄い潮水が大量に流れ込んでいた。
上の個体。
頭部が縦扁しているので、礫の隙間に潜り込むのに適している。
この個体はうつぼみたいな柄をしている。やんちゃそうな顔をしていて面白れ~。
その個体を正面から。
胸びれの条数はわからないけど、遊離軟条は短めかな。背びれ条数は11だし、もしかしたらミナミヒメミミズハゼ?
ミミズのように見えるだろうか。
とってもかわいい。
真上から。頭は平たく、
目は小さい。
体はやや透明感がある。
上から見ると頭部の鰓が透ける。
周囲の環境にもよるが、
捕ったばかりはこんな感じだ。ひれも見えないし、質感はナメクジみたい。
「阿」。
「吽」。
胸びれを広げてくれたので、
焦点を合わせてみた。胸びれの一番上の軟条はやや長く遊離していることがわかる。条数は15-16本くらいかな?ちなみに背びれは11軟条だった。
別個体。
胸びれの一番上の軟条が遊離している。
created:2014/10/1