アブラハヤ Rhynchocypris steindachneri steindachneri
コイ科ウグイ亜科ヒメハヤ属

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アブラハヤ

【生息場所】 川の中流部の水の冷たいところに多くすんでいる。湧き水が流れ込む水路などにもいる。 流れが遅くなったところや、草があり泥や枯れ葉の溜まったようなところに多い。
【外観・生活】 全長は15cm程度。体色は黄褐色ないし緑褐色で腹面は銀白色だ。 体側中央には暗色の縦帯と、それに沿うように金色の縦条が見られるが、不明瞭な個体もいる。 体側にはさらに不規則な黒斑点があるが、体側中央の縦帯付近に集中する傾向にある。 鱗はかなり細かく、つかむとヌルッとしている。だから「アブラ」と名が付いたよだ。 雌は雄より大きくなり、成熟すると吻がへら状に伸び、独特のピノキオ顔になる。春の繁殖期であっても婚姻色らしいものは特に現れないようだ。 よく似た魚に近縁種の「タカハヤ」があるが、本種は尾柄がより細く(尾柄高÷頭長=48%以下、 尾柄長÷尾柄高=2以上)、鱗がより細かく(側線の横列鱗数=20以上)、体側の縦帯がより明瞭な傾向にあり、 尾びれ後縁の切れ込みがやや深く、眼がより大きいなどとされるが、実際は変異が多くて見慣れていないと区別は難しい。 繁殖期は春の終わりから初夏にかけてで、川底の砂礫中に雌雄が群れになって卵を埋め込むように産卵するそうだ。 雑食性で、底生動物や付着藻類、落下した昆虫など何でもよく食べる。
【捕る】 泥の溜まったような川の淵に多く、タモ網で草を蹴って捕る。ミミズや水生昆虫をエサとした釣りでも釣れる。
【その他情報】 警戒心が弱く食欲が旺盛で、ヤマメなどの渓流釣りの外道として嫌われる。食べても不味いそうで、釣られても捨てられることが多い、かわいそうな種だ。
【コメント】 よく似ていて種類の特定に迷う魚はいくつかあるが、本種は私にとって最も悩ましい魚のひとつだった。 勘が働かず、よく似たタカハヤとの区別に自信がもてない。 理由は簡単でいくつかある。両者とも近くに生息しておらず、子供の頃から全く馴染みがなかったこと、 関西ではタカハヤが広く生息しているので出かければチラホラ捕れるが、 アブラハヤは生息しているところが多くなく、特に手に取った経験がほぼなかったこと、 さらに専門家でも迷うぐらい特徴が曖昧な個体がいること、ましてやこれはタカハヤ、これはアブラハヤと教えてくれる人は近くにはいないこと。 自分でわからないから、自分で難しい本を見てそこに書いてある細かい特徴から区別しようとするけど、 特徴を把握できないし、当てはまらない個体も結構いるし・・・。そんな状況だからいつまでもモヤモヤしていた。 本サイトでも長い間、タカハヤをアブラハヤとして間違って紹介してきたと思う。 そんな中、アブラハヤが広く生息している関東で魚捕りをする機会をもつようになり、ある程度の数を目にするようになった (こちら)。 そうなると大したもので、両者の違いがだいぶわかってきた! ちなみにトップ写真は本種もタカハヤも生息している河川で捕まえた個体。これはアブラハヤでしょう!

早春に捕った全長10cm程度の個体。 手にした瞬間はアブラハヤと思ったが、タカハヤと迷ってしまい、本サイトでもしばらくタカハヤとして紹介していた。 おそらく本種で良いと思うがどうだろうか。

河川の本流から外れた 細い流れの中で捕まえた。眼が大きくて鱗は細かい。全長7.5cmで少しやせている。

水路で捕まえた個体。 体側の暗色帯の上方に金色線が見られる。よく目立つ。

春に捕まえた全長10cm程度の雌。 琵琶湖に流れ込む小河川のたまりでタモ網に入った。体側の縦帯が比較的明瞭で、金色に光る縦線も確認できる。

春に捕まえた個体。 体側に走る明線が目立つ。バケツの中で掴もうとすると、ぬるっと指の間をすり抜ける。

春に捕った全長7cmほどの若魚。 体側には金色の細線が走る。手に取ると油のようにヌルヌルだ。

春の終わりに捕まえた個体。 細かい鱗の感じ、体側の模様、尾びれの切れ込みなどの特徴から本種で良いと思う。

夏に捕まえた全長約9cmの個体。 比較的冷たい水が流れる川の淵で捕まえた。本種はとろ~んとしたこんな姿勢をすることがある。 この感じはタカハヤではないね、アブラハヤだ。

夏に捕まえた全長約4.5cmの幼魚。 眼が大きいね。これも本種の特徴。

夏の個体。 河川本流の中流域で岸際の草の陰でタモ網に入った。全長は9cmほど。 水は冷たく、とてもよく似たタカハヤもいそうな環境だが、うろこが細かくて体は黄色っぽく、スマートな体形なので手に取って数秒で本種と判断。

秋の河川で捕まえた 全長約6cmほどの個体。眼が大きくて背側は黄褐色で腹側は銀色。スタイルもいい。こうして見るときれいな魚だね。

秋の水路で捕まえた。 浅い流れの脇にできた深みにタモ網を入れた。手の上で見た瞬間はタカハヤ!と思ったが、この感じはアブラハヤでしょう。

秋の用水路で捕まえた。 体の模様がはっきりしていないせいか、大きな眼がよく目立つ。

冬に捕まえた全長約7cmの個体。 浅く流れる水路のちょっとした淀みでタモ網に入った。

夏に捕った 全長3cmほどの幼魚。流れが淀むボサの中でタモ網に入った。

全長が3cmに満たない幼魚。 たぶんアブラハヤで良いと思います・・・。

背の中央には、 頭部後方から尾びれ基部にかけて黒色線が走る。この黒色線は背びれ基底前方で一旦途切れることが特徴で、タカハヤは途切れないと聞いた。 多くの個体で確認できていないが、どうだろうか。

別個体を真上から。 この個体の背中線は背びれ基底前方で途切れていないように見える。背中線どうこうはあまりアテにならないかも・・・。 それとも、この個体はタカハヤ?

正面から。 よく似たタカハヤほど平べったくない感じ。眼はより大きい。

春の個体を正面から。 横幅が広くやや平べったい顔をしている。口ひげはない。

春の雌の頭部拡大。 特徴は何といっても、産卵時に河床に潜り込むために伸長した吻。面白いピノキオ顔だ。

last modified:2022/10/30
created:2013/1/29

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