アジメドジョウ Niwaella
delicata
ドジョウ科アジメドジョウ属
【生息場所】
透明度の高い河川上中流域で川底が砂礫または大きめの石がたくさん転がっているような瀬に生息する。
川の構造、底質、水温、湧き水の多さなど生息に適する環境が限定される。
【外観・生活】
全長10cm程度になる日本固有種。ユニークな生態をもつドジョウである。
体は細長くウネウネした模様に覆われていて、その模様は頭部にいくほど細かい。背びれ、腹びれ、尻びれは小さくて体の後方にやや偏っている。
雌の方が大きいが、ドジョウやシマドジョウ類とは異なり、胸びれの形は雌雄でほとんど差がなく、
また雄の胸びれには骨質盤がないので外見で雌雄を分けることは難しい。
口ひげは6本あり、口の形は半月状で唇が厚く吸盤状。その口で石に吸い付きながら伝い泳ぎをすることができる。
11月頃になると伏流水があるところに集まり、川底の礫間に潜って越冬するそうだ。川底から深さ1mも潜入することがあるとのことで驚きだ。
主として石に付着する珪藻類を食べる雑食性。
【捕る】
瀬にあるゴロゴロした石の下流側にタモ網を構え、石をゴロリとひっくり返す。流れが強いので簡単にタモに入ってくれる。
いるところにはたくさんいるので場所さえ見付ければ採補は簡単。
水がきれいなところに住むので、川面をしばらく見つめていると、
石の隙間に隠れていたり、石の表面に上っては藻類をかじって次の場所に移動したりする姿が見られる。
【その他情報】
本種はアジメドジョウ(味女泥鰌)の名の通り、ドジョウの中では一番美味しいそうだ。
長良川では遡上中の個体を捕る「登り落ち漁」と呼ばれる独特の漁法が行われ、煮付けや吸い物で食べられる。
本種は近畿および中部地方に生息するが、大阪府は分布域の西限で、環境省レッドブックでは絶滅のおそれのある地域個体群とされている。
また体側斑紋には2型があり、地理的、遺伝的に分化しているとされていて、
斑紋収束型(Gタイプ)は太平洋側に、斑紋分散型(Sタイプ)は日本海側に多い。本ページの個体は全て斑紋収束型(Gタイプ)だ。
河川改修などによる河川への土砂流入、伏流水の消失、ダムや堰堤建設などによる河川環境の悪化で、生息域の狭小化と個体数の減少が懸念されている。
【コメント】
白波が立つような強い流れの中に生息するドジョウ、それが本種だ。
ドジョウの仲間は泳ぎが得意でないイメージをもつが、本種はそのイメージを完全に覆す。
タモ網を構えるのがやっとの場所にもいて、よく流されないものだと思う。
むしろ、大型の個体はそんなところで捕れ、カジカやアカザと同時にタモに入ることが多い。
また見た目もとても個性的だ。体はウネウネ模様で後方に偏った感じがあり、どこかとぼけた顔をしている。本州中部に生息し、関西では
大阪だと生息域がピンポイントで個体数も限られるが、滋賀県などではまだ広く分布している。
いつか出会いたいと思っていた魚だったが、偶然にもはじめて出会ったところでは、その生息数の多さに驚いた。
タモ網を入れるたびに数匹が捕れる。川に入り水遊びをしてるとサンダルの中にまで入ってくるほどウヨウヨいる。
川原でバーベキューをしている集団の横で、子供と一緒に妙にハイテンションになったが、我々はきっと変な親子に見えたに違いない。
たまたま見つけて入った場所だけど、好適な生息環境さえあれば生き物ってそんなもんやろう。
春に捕まえた個体。
全長8cmに満たないくらい。流れの速いところの石をゴロゴロ転がすと、下流側に構えたタモに成魚が入る。
秋に捕れる個体より全体的に痩せている印象。
上と同所で捕まえた。
体には細長くウネウネした模様がある。本種は石の表面に付いたコケを食べるが、それをぐっと凝縮したような体色だ。
外観は個性抜群だが、引き上げたタモの中でニョロニョロニョロ~って動く様はちゃんとドジョウ。
初夏に捕まえた個体。
全長7cmぐらい。強く流れる瀬で石を転がすと数匹がまとまってタモ網に入った。想定外な場所で入ってオーッとなった。いるところにはたくさんいる。
体は細長く、
薄い緑褐色にこげ茶色のウネウネした模様が特徴だ。体の模様に比べると頭部の模様はかなり細かい。
全長6cmに満たないくらいだった。
上中流域の礫底で捕まえた個体。
背びれ、腹びれ、尻びれは小さくで体の後方に偏っている。
胸びれも小さくて、ドジョウやスジシマドジョウのように骨質盤の有無やその形状で雌雄の区別は難しい。
梅雨の合間に捕まえた全長8cmの個体。
体側中央の横帯から雨だれ模様。より大きな個体はより流れの強いところにいる。
夏の成魚と幼魚。
石がゴロゴロしていてきれいな水が流れる瀬でタモ網に入った。箱メガネで水中をのぞくと、チョコニョロ動く個体が見られた。
秋に捕まえた個体。
飲めるくらい水がきれいな川で捕まえた。細長い寸胴な体形が特徴だ。尾びれには3列の弧状横帯がある。全長7cm程度だった。
同所で捕まえた全長約7.5cmの個体。
上の個体より太い体をしている。この個体は体側中央を走る縦帯からインクが垂れたような斑模様がある。
背びれ、腹びれ、尻びれが後方にある。
この個体の体色はやや黄色っぽい感じだ。全長は6.5cmに満たないくらい。
体側縦帯の下側は
斑をもたない個体が多いが、中には斑をもつ個体がいる。尾びれの模様も弧状とは限らないようだ。
この個体、胸びれを広げて背筋トレーニングをしているみたい。
大きな礫や石がゴロゴロしている河川で
見られる。個性満載、まさに清流のドジョウ!
流れがある瀬の石を足で蹴り込んだら
タモ網で捕ることができる。白っぽい体にはっきりした模様をもつ個体だ。体の斑模様はどれひとつ同じものはない。
胸びれ、背びれ、腹びれ、尻びれなどの
各ひれは体に比べて全体的に小さい。細長いからにちょこっと取り付けた感じ。この個体は全長6cmを少し超える程度。
体側の縦帯がドン!と太い個体。
全長7cm程度だった。
流れが強い瀬で大きな石をごろりと転がす
とタモ網に何匹も入る。捕れた中では大きいほうで、全長は7cmくらいだった。
11月はじめに捕まえた個体。
夏などに比べると捕れる数は明らかに少なくなった。ぼちぼち川底に潜る頃だろうか。
タモ網を構えるのが
やっとなくらい早く流れる瀬で、カワヨシノボリと一緒にたくさん捕れた。
体は細長く、
ひれは後方に偏っていて面白い体形だ。
しばらくバケツに入れていたら
体色が薄くなってしまった。こんな体色だと細長いドジョウに見えなくもない。
上と同所の個体。
ドジョウは流れのない泥底を好むが、同じドジョウの仲間でも真逆の環境に住む。
春に捕まえた小型個体。
写真の個体は全長が4cmくらいだったが、より小さな個体もたくさん見られた。成魚は流れの激しいところに、こんな小型個体はそこまで激しくない流れにい
た。
全長約4.5cmの幼魚。
繁殖期は冬から春と言われているが、まだ不明な点が多いそうだ。
夏に捕まえた幼魚。
全長4cm程度。頭をちょこんと上げた姿、ん~、とってもかわいい。
秋に捕った体長5cmに満たない個体。
同時に捕った最も小さい個体のひとつであるが、今年生まれなのかな?
オリーブグリーン色をベースに
斑模様をもつ。
同河川に生息することも多いニシシマドジョウに似ているが、本種は体がより細長く、流れのある礫底に生息しているという点で異なる。
背の斑模様が一本の筋模様になった個体。
体の模様は変異が多いらしい。
春に捕まえた個体。
背の一列に並ぶ薄褐色斑が体長方向に細長いのは、単に痩せているだけ?
分厚い唇に半月型の口。
付着藻類をそぎ落とすためのヒダをもつ。これで流れの早い瀬の石に吸い付いたり、石の上の付着藻類を食べたりしている。
頭部には細かく複雑な、
独特の網目模様がある。
口ひげは比較的短く、目は小さい。
胸びれ基部に骨質盤をもたないので、雌雄の区別は難しい。
正面から見ると、
のっぺりした感じがする。
シマドジョウ類がもつような、吻から眼にかけての暗斜帯がないからだろうか。胸びれは比較的小さく、円い形状。
浅い早瀬に入りタモ網を構えて、
こちらの石をゴロリ、あちらの石をゴロリするとどんどん捕れる。迷ったが持って帰って食べたら良かった・・・。
美味しい魚だと言うので持ち帰り、
まずは揚げてみた。軽く塩をふって丸ごと一口。腸はほのかに苦いが、まずまずの美味しさ。
天ぷらにして塩をふって頂きました。
美味しいんだけど、一番美味しいドジョウというので期待した分、いまいち感があるな。
やや煮詰まってしまったが、
お吸い物にしてみた。天ぷらよりもこの方が、アジメドジョウ本来の旨みが感じられる。
表面はぬるっとしているが、肉は軟らかくこれ美味いです。見た目はややグロテスクだけど、いける。
created:2013/9/26