ボラ Mugil cephalus cephalus
ボラ科ボラ属

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ボラ

【生息場所】 河口や汽水域でごく普通に見られる。若魚はたまに河川の中流域でも見られる。汚染の進んだ都市河川にも多い。
【外観・生活】 全長は60cmほどになる。体は丸みを帯びた円筒形。頭部は平らで正面から見ると体の輪郭は逆三角形、口はへの字形をしていて面白い。 背びれはお飾りのように小さく離れて2枚あり、胸びれは斜め上方を向いている。 ボラの仲間には外観が酷似する種類がたくさんあるが、本種は胸びれ基部上部に青色の斑紋があることが区別ポイントのひとつ。 眼は大きく、脂瞼(しけん)と呼ばれる半透明の薄い膜があることも特徴だ。 産卵期は秋で、冬から春にかけて体長2cm程度に成長すると群れで河川下流域に姿を現す。 全長5cmくらいまでの幼魚の間は銀泊を貼ったようにキラキラした体色をしているが、成長すると背は緑褐色になり体側に細い縦条列が現れる。 1年で15cm、2年で30cm、4~5年で50cmぐらいに成長し、満4年ほどで成熟するそうだ。 30cmくらいになると水面近くを群泳し、よく空中にジャンプする。 一般には海でよく見られるが、幼魚や若魚は川を数十kmも遡り、完全な淡水でも暮らすことができる。 ダムや堰堤がなかったころは、淀川、宇治川を遡り琵琶湖まで遡上した記録があるというから驚く。 雑食であるが、河川では主に底質表面の付着藻類などを食べている。
【捕る】 成魚は泳ぎが大変素早く、構えたタモ網をジャンプして飛び越すことも多いので一般にタモ網で捕ることは難しい。 以前バラエティ番組で、ボートを走らせながらタモ網を空中に構えて水面から飛び出す本種を狙っていたことがあったが、本当に捕れていた。 春や夏、河口浅瀬に群れて集団で河川を遡上してくるボラの若魚ハクやオボコをタモ網で捕ることはできるが、 例えば大阪府では全長15cm以下は採補できないなど、都道府県によっては採補制限があるので注意が必要だ。 捕れてしまった場合はやさしく扱い、観察した後に元の水辺に戻してあげよう。
【その他情報】 成長するに従い呼び名が変わる出世魚としても有名。 全長が2~3cmのものをハク、3~18cmのものをオボコ、スバシリ、18~30cmのものをイナ、30cm以上をボラ、最大級のものをトドと呼ぶ。 このトドは「とどのつまり」のトドだ。 本種は眼が良くて敏捷。それは、本種の特徴である脂瞼によって遊泳の際に前方の視界を確保しながら流水の抵抗を小さくし、 周囲の音や振動をほぼ全身の鱗1枚1枚にある感覚管孔で感じ取っているからだ。 成熟した雌の卵巣は「からすみ(鯔子、唐墨)」の原料として珍重される。 ちなみにからすみは、南欧でマグロ等の卵巣を用いて作られていたものが、当時の唐から日本に伝わり、ボラやサワラが用いられるようになったもの。 また、本種は胃壁が厚く鳥の砂嚢のようになっていて、それは「ボラのへそ」とか「そろばん玉」などと呼ばれる。
【コメント】 よく似た仲間が多く、「ああ、ボラね」とザクッとひとまとめに扱われていることも多い、個性があるようなないような魚。 ハクやオボコと呼ばれる幼魚時代の、あの銀箔を貼ったようなキラキラした体表は大変美しい。 そんな小型個体はタモ網を振り回せば簡単に捕ることができるが、成長した個体に対してはそうはいかない。 上手くタモ網を構えたつもりでも、次から次へと水面からジャンプして見事にかわされ、 他の魚にはない優れた視力や運動能力を備えていることを見せ付けられる。そして「やっぱ難しいな」と思わせられる。 あと本種が特徴的なのは、川の下流域でよくジャンプしていること。 JRや阪急電車に乗って淀川を横断しているとき、バシャン、バシャンと勢いよく跳ねる姿はいつもの見慣れた光景だ。 寄生虫を落とすためとか、単に驚いてとか、酸素欠乏とかいろんな説があるようだが、 魚として新しいフロンティアである「空」に進出する準備をしていると考えるとロマンがあるかも? トビウオにかなり出遅れている感あるけど、進化ってのはそんなことからも始まるからね。

潮が引いたたまりで捕まえた 全長約14cmの個体。数匹が群れていた。横から見ると砲弾のような形。背は緑褐色で腹部は銀白色。体側には暗色の細い縦帯が平行に並ぶ。 かわいい表情でこちらを向いている。

全長13cm程度の個体。 いわゆるオボコと呼ばれる段階だ。胸びれ根元にある青色斑がよく目立つ。それが本種のトレードマーク。

背びれを広げるとこんな感じだ。 本種は胸びれ付け根に青い斑紋があることが特徴。

秋の汽水は十数cmほどに育った個体であふれる。 群れになって水面近くをウロウロと泳いでいる。この個体も気温の低下とともに海へ下る。

全長13cmの個体。 潮が引いて溜まりになるようなところでは、俊敏な本種でも何とか捕ることができる。ビョンビョン飛び跳ねてものすごいけど・・・。

たまりで捕まえた全長14cmぐらいの個体。 秋の太陽光を浴びて体は銀白色に輝く。頭部が平らな形状をしているのがわかる。

上の個体を真上から。 背は緑褐色で模様のようなものは見られない。頭は円くて尾にかけてすーっと細くなる形だ。

ひれは上向きについている。

淀川河口から25km程度上流の用水路で 夏に捕った個体。群れで泳いでおり、バサバサと近づくと水面から跳び出しながら逃げていく。

初夏に捕った全長6.5cm程度の個体。 汽水域では群れになって泳ぐ本種がたくさん見られる。体は丸くて、体高があるのでボラはボラでも別種類?

オボコを並べてみた。特に意味はない。

夏の汽水で捕まえた。 全長5cmぐらい。潮が引いたたまりに群れで取り残されていた。体は砲弾のような形で緑褐色を帯びた銀色。背びれは離れて2枚ある。

桜が咲く頃に捕った全長4cmの若魚。 ハクからオボコと呼ばれる段階に成長した頃だ。胸びれ根元はまだ青くない。銀泊を貼ったようにシルバーに輝く体が美しい。 汽水の浅瀬で群れになって泳いでいた。

胸びれ基部にある青色斑が特徴。 背側は濃い緑褐色で、腹側は白銀色。大きな眼をしている。

正面から見るとこんな口の形をしている。 口の形は食性と大きく関係している。頭部を下に体を斜めに傾け、口を伸ばして底にある藻や水草を食べるようだ。 それにはこんな形が適しているということか・・・面白い。

真正面から。 頭部は平らで胸びれはやや上向きに付いていて左右に広げると斜め上を向く。 口は特徴的な三角形で、左右に大きな眼をもつ。雰囲気は宇宙人顔だな。

本種の特徴は眼に 脂瞼(しけん)と呼ばれる半透明の膜があること。この写真、眼の前方(手前側)にそれが確認できる。わかる?

干潮時に川に取り残されていた全長約60cmの死骸。 まだ死んで間がないようで、死後硬直していた。

上の個体の頭部。 脂瞼(しけん)と呼ばれる目を覆う半透明の膜がわかるだろうか。

秋に捕まえた個体。胸びれ基部に青色斑がある。

※これらの全ての生きた個体は観察・撮影後、直ちに元いた場所に戻しました。

last modified:2022/11/25
created:2012/1/7

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