ハリヨ Gasterosteus aculeatus subsp.2
トゲウオ科イトヨ属

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ハリヨ

【はじめに】 ここで紹介している個体は本来の生息地ではない場所で捕ったもので、いわゆる「国内外来種」。 遺棄、放流された個体あるいはそのような個体が繁殖して生まれた個体だ。 トップ写真の個体は固定後、然るべき機関に記録としてお譲りした。
【生息場所】 本来の生息地は、滋賀県東部と岐阜県南西部の平地の湧水が豊富な場所。水温が低く流れが緩やかで水草が豊富なところを好む。
【外観・生活】 全長5~7cm程度。トゲウオ科の陸封型淡水魚で、背びれ、腹びれ、尻びれに鋭い棘がある。 トゲウオの仲間に特有な鱗板は体側前方のみにあって、尾びれの付け根まで連続するイトヨとは異なる。 写真の個体は褐色をベースとした体色をしているが、 繁殖期の雄は体を金属光沢をもった緑青色に染め、頭部下面からえらぶたにかけては鮮やかな紅色をした大変美しい姿になる。 本種は水底に巣をつくる面白い習性があり、それは成熟した雄が小さな浅いくぼみをつくり、 その上に水草やコケ類の破片などを集めて腎臓から分泌する粘液で固め、トンネル状の巣をつくるというもの。 雄はその巣の周囲を縄張りとし、腹の膨れた成熟雌に求愛ダンスをして、巣のトンネル内に次々と雌を誘い入れて産卵、受精させ、 その後は雄が卵と幼魚を守るそうだ。水温変化が少ない環境に生息するために生息地によっては産卵は周年行われるところもあるらしいが、 一般には3~5月がピークで、多くの個体は産卵後に死ぬという。水生動物、水生昆虫、浮遊動物などを食べる。
【その他情報】 無配慮な圃場整備や河川改修工事などの影響で湧水が枯渇し、生息地は減少の一途にあって、多くの自治体で保全活動が行われている。 滋賀県では「ふるさと滋賀の野生動物との共生に関する条例」で本種は指定希少野生動植物種に指定されており、 生きている個体の捕獲等が禁止されているなど、滋賀県や岐阜県では条例で捕獲等が禁止されている。 滋賀県の集団と岐阜県の集団の間には、形態的、生態的な差がみられ、遺伝的研究から別亜種もしくは別種になるそうだ。 さらに滋賀県内の集団にも伊吹山系を中心とする集団と、湖東平野北部域を中心とする集団に遺伝子的に分けられるそうだ。 もちろんそれらは交配させないことが必要だが、岐阜県内には滋賀県からの移入個体群からなる生息地がある。 岐阜の生息地はトゲウオ類の南限のひとつで、学術的に重要な生息地とされており、国の天然記念物に指定された場所もある。 保護や保全が各地で広く進められている一方で、取り返しのつかない残念な事態も起きている。 滋賀県の地蔵川のハリヨは、近縁種イトヨの人為的な放流により交雑が進み、純粋なハリヨは絶滅(交雑による別種化)したとのことだ。 近くの別の支流で遺伝子交雑が起きてない個体群が確認されたとはいえ、なんとも嘆かわしい。
【コメント】 驚いた。なぜここにトゲウオ???本種が捕れた場所は、本来の生息地とは全くつながりのない、予想だにしない水辺だった。 すぐさま公的機関の知人に連絡し対応させて頂いた。専門家曰く「国内外来種なのは間違いない」とのこと。 どのような経緯でこの個体があの場所に持ち込まれたのかはわからないが、自分勝手な人間の仕業であることは間違いない。 魚捕りにおいて、何が捕れるかわらかないという状況はときにワクワク感を生むが、今回のようなケースは単に戸惑いや残念な気持ちを生むだけだ。 その河川ではその後もたまに本種がタモ網に入る。どこかに好適な環境があって、定着しているのだろう。 個性あふれる種であるが故に、一般に知られると水辺が騒々しいことになって、いろんなところに影響が出るんだろうなぁ・・・。難しい問題を含む。

背に3本、腹に1対2本、尻に1本の棘をもつ。 この棘は捕食者から身を守るために発達したものだろう。細長い鱗板は腹の棘あたりで途切れているので本種とわかる。 10月中旬に生息地域外の場所で捕れた。全長は3cmを超える程度だった。

春に同河川で魚捕りをしていると 再びタモ網に入った。捕れたのは前回同様1個体だけだったので、どこかで繁殖しているものが雨などで下流へ流れてきたと考えられる。 全長4cmを超える程度だった。

GW中、別の機会に今度は卵をもった雌が捕れた。 この個体は全長6cm以上あってその大きさにびっくり。ハリヨって小さいと思っていたけど、意外とデカイ。

梅雨に入った頃にタモに入った。 体色の緑っぽい感じ、この個体は雄だろうか。この川にはかなりの数が生息しているのかも・・・。

夏にまたまた捕れた。 ん~、捕れてしまうと相変わらず複雑な気持ちになるな・・・。

ひれを小刻みに震わせて中層あたりを泳ぐ。  ここが本来の生息地であれば、素直に大変可愛らしいと思えるのだが、残念・・・。

真上からみるとこんな感じ。 砂泥底にいるとわかりにくいだろうな。

頭部を拡大。吻は尖り、大きな目をもつ。 胸びれ付け根の銀色をした膨らみは筋肉だろうか。

正面から。 やや上を向いた尖がった口の形などから、肉食魚の顔をしていると感じる。

卵でパンパンになったお腹をした雌を正面から。 腹底面は平坦で、輸送ヘリコプターを連想した。

観察ケースに入れた個体が少し離れて こちらをうかがう。

last modified:2018/6/19
created:2015/10/24

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