クロコハゼ Drombus
sp.
ハゼ科クロコハゼ属
【生息場所】
河川河口域や内湾の砂泥底に生息しており、転石などの下に隠れている。
【外観・生活】
全長は約5cmで、体は黒赤紫色をしているが、褐色の斑をもつ個体や背に褐色帯をもつ個体も見られる。
頭でっかちで、吻は短く口は上向きにやや突き出ている。第2背びれと尾びれ上部が白色で縁取られる。
雄のひれは雌のそれよりも大きく、雄の第1背びれ中央には特徴的な透明帯と黒色斑がある。
また胸びれ基部の上端には薄黄色の斑点があり、尾びれ基底中央にやや不明瞭な黒色班がある。
動物食だそうだ。
【捕る】
干潮で水が引いたところに残された水溜りなどでタモ網で捕る。
【その他情報】
本種は正式に分類学的記載が行われていない「未記載種」で、幾つかの種が含まれているとされている。
太平洋側に分布し、2000年頃までは和歌山県以南に限られていたが、
2004年に静岡県、2007年には神奈川県で確認され、分布域が北上しているそうだ。
【コメント】
夏から秋にかけて汽水で捕れる真っ黒い魚。南方系の魚だから、どちらかというと出会う機会の少ないハゼの仲間だ。
本種を最初に手にしたのは、干潮時に川岸近くに取り残されたごく小さな浅い水溜りだった。
小石がゴロゴロしている水際を歩いていて、目の前にある小さな水溜りに近づくと、ピシャッと何かが動いたことに気付いた。
「俺の姿に驚いた何かがいる」と思って、早速水溜りの端にタモ網を構え、小石ごと蹴りこむと見慣れない魚が捕れた。
やたらに黒くてひれの長い変な魚、これが本種に対する第一印象だ。
チチブとかシマイサキとか全長が1、2cmのちっこい稚魚で真っ黒なのが捕れるときはあるが、5cmぐらいで真っ黒だから「とかく黒い」という印象。
温暖化の影響で生息域が急速に北上しているという。何か嫌だなあ・・・。
夏、礫底の小さな水溜りにいた。
全長5cm程度の雄。特徴である第1背びれの黒色斑がよくわかる。体は黒っぽくて、各ひれが長い。
川岸の浅いところで捕まえた雄。
体をスーッと伸ばして泳いでいるところ。タモ網に入ったときは真っ黒で一体何が捕れたのかと思った。
ちなみに真っ黒に写っているけど、逆光じゃないよ。
秋の初めに捕まえた個体。
全長3.5cmほど。潮が引いた汽水の礫がゴロゴロする場所でタモ網に入った。体は赤っぽい濃褐色。
これまで真っ黒な個体しか見たことがなかったので、タモ網の中にこの個体を見つけたとき、何が捕れた?と思った。
何か違うような・・・?。
上の褐色の個体と同時に捕れた
全長2.5cmほどの個体。褐色の斑が体に入る。妙に頭部が大きく感じる幼魚だった。
秋に捕まえた全長4.5cmほどの雄。
体色は黒赤紫色。腹びれは周縁部を除いて黒い。第1背びれは中央部分が透明で黒色斑がある。
第2背びれの外縁および尾びれ上部の外縁も透明。尻びれには薄い赤褐色の帯が確認できる。
石の陰で捕まえた全長約4cmの個体。
この写真のように、体に斑点や斑をもつ個体も見られる。黒いだけじゃないからこのハゼ何?ってなるよね。
同所で捕れた個体だけど、
ひれがビロビロしてないし、第1背びれに黒色斑がないから雌。
干潟の泥底で捕まえた幼魚。
泥底のゴミのかげでタモ網に入った。本種は南方系の魚だけど、稚魚も成魚も見られるということは、定着しているってことなのかな。
捕まえたとき、
体の上部に薄灰褐色の大きな縞模様が見られた。体色は真っ黒なことが多いが、そうではない時もあるようだ。
この写真でも薄っすらと模様が見える。
全長2cm程度の稚魚。
石組みで付近で捕まえたし、その色やサイズ、捕れた場所などから最初はヒメハゼかと思った。
第2背びれと尻びれを広げたところ。
ひれも黒い。両ひれの先端は水平方向にまっすぐ。
体を翻したところ。腹面は黒っぽさが薄れて、赤紫色。
雄を真上から。
円形に広がる大きな腹びれをもつ。胸びれは透明だ。
背に褐色の斑紋をもつ個体もいる。
さらには、
背一面に褐色帯をもつ個体もいる。
頭部の前方はやや突き出る感じで、
ほほの辺りからふっくらふくれる形。
胸びれ基底上部に暗色斑が見られる。この個体は口から背にかけて褐色の帯がある。ほほの上部も褐色だ。
ハゼ界代表の「サル顔」だね。
吻は短くて口は上向き。
一様に黒っぽい体であるが、胸びれ基部の上端には薄褐色点がある。
頭部を横からあるいは斜め前から見た感じでは、シマヒレヨシノボリやビワヨシノボリにちょっとだけ似ている。
created : 2015/8/29