ニジマス Oncorhynchus
mykiss ~遊漁目的で放流され続けるマス~
サケ科タイヘイヨウサケ属
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【生態】
河川上流域や湧き水の豊富な川、山上湖などの水の冷たい水域に生息する。一般的には全長40cm程度であるが1mを越す場合もある。
背は灰緑色で腹部は白く、背から体側にかけて小黒点が散らばり、背びれや尾びれにも入る。
小さな個体は体側にパーマークをもつが大きくなると消失し、赤紫銀色の虹のような縦帯が現れる。産卵期にはそれがさらに鮮明になる。
カゲロウの仲間など水生昆虫を主食とするが、大型個体では小魚を補食する。
養殖が容易で、冷水性の魚類の中では比較的高い水温で飼育でき、さらに人に慣れやすく、稚魚生産や成長が良いことで知られる。
【移入の経緯と現状】
1877年に増殖を目的とした海外産新魚種としては日本ではじめて輸入された。
米国カリフォルニア州から発眼卵を輸入し、このときの生残魚から得たニジマスが、福島県猪苗代湖と栃木県中禅寺湖に放流されている。
繰り返し米国から卵が輸入され、養殖技術が在来マス類よりも早く確立したことから、九州以北の全国各地の冷水域で養殖された。
現在でも食用や釣り魚用に盛んに養殖、放流が行われ続けており、水産庁主導で移植されたため、本種の生息については肯定的な見方を示す人も多い。
北海道では自然繁殖して優占種となっている河川も多いそうだが、
近畿では和歌山県内で自然繁殖が確認されているところがあるくらいで、そのようなところは少ないようだ。
しかし一旦定着してしまうと、渓流域に生息するイワナやアマゴなどとの間に、産卵床をめぐる競争、生息空間やエサを巡る競争、補食圧などが生じてしまう。
釣り堀では簡単に釣れるので人気が高く、1~2年飼育した個体を放流し直ちに釣り捕らせる釣り堀漁業が盛ん。
その下流では大雨の後などに逃げ出したと思われる個体が捕れることも多い。トップの写真個体も大阪北部の渓流釣り堀から逃げ出したと思われる個体だ。
雨の日の翌日、1km程度下流の堰の落ち込みで捕まえたので、バーベキューのついでに網で焼いて美味しく頂いた。
近年ではスーパーに「トラウトサーモン」の名で切り身や刺身が売られているが、これは海面養殖された大型のニジマスである。
現在、世界の侵略的外来種ワースト100、日本の侵略的外来種ワースト100、生態系被害防止外来種リストに指定されている。
管理釣り場で捕まえた個体。
いずれの個体もひれがかじられており、見るからに養殖モノといった感じだった。朝、滋賀県の醒ヶ井養鱒場から運ばれてきたのだそうだ。
イクラを餌にして投げると、
小さな子供でも簡単に釣ることができる。ただし飲み込んだ針はなかなか外れないので、針外しは大人の仕事。
春、雨の翌日、
堰の落ち込みの近くの岩陰でタモ網に入った。上流の管理釣り場から逃げ出してきた個体だと思う。
水温が高くなり定着はしないと言うが、こういう個体がそれなりにいて、川の生態系に影響を与えていることがどれくらい理解されているだろうか。
背の黒点が良くわかる。
近くの砂底ではカマツカやオオシマドジョウも捕ることができた。
雪解け水が流れ込む管理池の中の個体。
かなり人に慣れているようだった。
夏に撮影した大型個体。
エラ側部から体側にかけて赤紫色の縦帯が鮮やか。
管理された場所の浅場に群れる放流個体。
その後イベントに集まった子供たちによって捕まえられ、バーベーキューで塩焼きにされた。みんなで美味しく頂きました。
深場の個体は釣るしかないが、
浅いところで岸や岩の下にもぐりこんだ個体はタモ網や手づかみで捕まえることができる。これらはフライで食べました。
真正面の顔。歯は鋭くなかり痛い。
本種は石の陰に隠れることも多い。
子供たちが追い回すので、右往左往したのち石の隙間に突っ込んだようだ。まさに「頭隠して尻隠さず」の状態。
created:2012/1/7