オニカマス Sphyraena
barracuda
カマス科カマス属
【生息場所】
世界の熱帯域の内湾やサンゴ礁に生息する。日本では相模湾以南の太平洋岸など南日本の海に生息し、幼魚期には河川汽水域に入り込む。
【外観・生活】
成魚の体長は1.5~1.8mほどで人間の背丈と同じくらいになる。
細長い円筒形の体をしていて、口は突き出ていて特に大きく、鋭く強靭な歯をもっている。その姿からはガーの仲間、原始的な魚を連想させる。
背びれは2つあり、第1背びれと腹びれ、第2背びれと尻びれの起点がほぼ等しく、背面腹面対象なのが面白い。
成魚の体色は銀青色で体側の背側に横帯があり、見るからに厳つい風貌をしている。性格は凶暴で回遊しながら餌となる魚に猛スピードで突っ込み捕食する。
一方、幼魚の体色は茶褐色で体側には黒色斑が並び、クリッとした大きい眼をしていてかわいい雰囲気をもつ。
幼魚は汽水域のマングローブなどの中に擬態して潜み、小魚や甲殻類を食べている。
【捕る】
幼魚は干潟にあるヨシの根元などでタモ網で捕る。
【その他情報】
「バラクーダ」とも呼ばれ、ゲームフィッシングの対象とされる。
熱帯域に生息する大型魚には、食物連鎖の中で蓄積される植物プランクトン由来のシガテラと呼ばれる毒素をもつことがあり、
誤って食べると嘔吐や麻痺などを引き起こすため、本種は一般には食用にされない。
過去には事故も発生しており、「毒カマス」と呼ぶところもあるようだ。
【コメント】
まだ暑さが残る9月、潮が引いた干潟に出かけた際、ヨシの根がむき出しになっている少し深いたまりがあったので、タモ網を底に付けて引いてみた。
何度かやっているうちに、これまで手にしたことがない、突き出た口をもつ細長い円筒形の体をした魚が入った。
すぐにつまんで観察ケースに入れてみると、その体は水流のなすがままにクルクルクルと回転・・・。
一般に幼魚は大変デリケートで、すぐにお星様になってしまうことも多い。
「あ~っ、これもそうなのか~」と思っていたら、そのうち背を上にして静止した。その後は斜め上を向いた体勢のままじっとしている。
ケースを揺すってもなかなかその体勢を崩さない。それは後で、水を漂うマングローブなどの胚軸に擬態しているからだとわかった。
なるほど、クルクル回転したのも、頑なに斜め上を向いていたのも、天敵から身を守るためだったんだね。
全長4cmほどの幼魚。秋の干潟で捕まえた。
南方で生まれ黒潮に乗ってはるばるやってきたのかな?
体は細長い円筒形で、体側には暗色班が並び縦帯状になっている。口元のまるい眼がかわいい。
こんな風に斜め上を向いた体勢でじっとする。
マングローブなどの胚軸に擬態しているらしい。天敵から身を守るために備わった力だ。
背面は褐色でひれは透明。
じっとしていたら、マングローブの胚軸に見える? 突き出た口は上から見ると鳥のくちばしのようだ。
幼魚とは言え、正面から見ると獰猛な顔。
突き出た大きな口の隙間からは鋭い歯が見える。
秋の終わりに捕まえた個体。
全長17、18cmぐらい。槍のような鋭いフォルムがかっこいい。さずがに棒切れのように水流任せな感じはなかった。
このサイズは昨年生まれなのかな?
上からみたところ。
まだら模様がある。
鋭い歯がオニの由来。
かっこいい魚だね。
created:2019/9/18