オヤニラミ Coreoperca kawamebari
ケツギョ科オヤニラミ属

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オヤニラミ

【生息場所】 河川の中流、上流域のヨシや水草の多く茂った川岸の淀みや緩やかな流れの場所に生息している。水の澄んだ場所に多い。
【外観・生活】 全長は13cm程度。上顎から背びれ基点まで背面中央線上に淡褐色の縦帯があり、眼から放射状に赤茶色の条模様が広がる。 えらぶた後端には濃青緑色の斑があって、先述の放射状の条模様と合わせて、魚の模様になっている。体側に魚模様、わかるだろうか? 環境やストレスによって体色を黄褐色や暗褐色に変える。 単独生活を好み、性質は非常に攻撃的。自分の縄張りを主張して侵入者を攻撃する。その一方で、雄は子供をとても大切にする一面を併せもつ。 繁殖期は5月前後で、雄は鰓蓋周辺から下あごを青緑色に、体も青緑色っぽくなる婚姻色を現し、岸近くのヨシや枝を中心になわばりをつくる。 普段は雄雌関係無しに縄張りに入ってくる個体を攻撃するが、繁殖期の雄は雌に近づき必死にアピールする。 しかし卵を産ませることに成功し受精をしたら、すぐに「あっち行け」とばかりに追い払う。こんな姿は雄として正直やな。 その後雄は甲斐甲斐しく卵と稚魚の世話をする。卵を守っている雄は特に攻撃的になるようだ。 見た目通りの肉食性で、水生昆虫やエビなどの甲殻類、小魚などを食べている。
【捕る】 岸近くのヨシの根元、倒木の細枝の周りなどでタモ網を構えて捕る。アカムシをエサに釣りをすると草陰からスーッと出てきてパクッと食べる。
【飼う】 飼育は容易。人にもよく慣れ、姿が見えると障害物の陰から寄ってくるかわいいヤツだ。エサは冷凍アカムシで良いが、 生きたヌマエビや小魚、ヤゴなどの水生昆虫を与えたときの活き活きとした様子を見ると、生餌に越したことはないと思う。 同サイズ以上の大人しい種類の魚とは一緒に飼育できるが、腹を空かせていると突くこともあるのでお勧めできない。 なわばり意識が強いので、同種間での混泳ではさらに注意が必要だ。 狭い水槽であれば幼魚の頃から季節に関係なく小競り合いがあり、弱い方の個体が死ぬまで攻撃を繰り返すこともある。 流木や石などの障害物を置いたり、水草を多めに植栽して逃げ隠れできる場所をつくったりしてやると良い。
【その他情報】 えらぶた後ろにある斑が4つの眼があるように見え、地域によってはヨツメと呼ばれるところがある。 卵を守っている雄は非常に攻撃的なのに、ムギツクに集団で托卵されてしまうことで知られる。
【コメント】 日本の淡水魚としては独特の風貌と、攻撃的なんだけど恥ずかしがりやさんで好奇心旺盛という性格が面白く、とても愛嬌のある魚だ。 水槽からも正面を向けて愛くるしい両目でこちらの様子をうかがうなど、他魚にはない魅力がある。 それらが本種のファンを魅了して、本来の生息地ではないところでの無責任な放流を招いており、すでに定着しているところもある。 絶滅が心配されているが、そのような放流、定着個体は駆除しなければならず、複雑な事情を抱えた種のひとつだ。 かつては淀川のワンドにも生息していたと聞く。本来、本種が好む生息環境は日本のあちこちにあったのだろうが、現在は生息地が狭められている。 本種が生息している河川で岸辺に座って川面を見ていると、 岸近くにある草のジャングルからスーッと現れてその辺りを泳ぎまた戻り隠れるような姿が見られる。 清らかな水の流れに本種をはじめとした多数の魚たちの何気ない姿、そんな水辺がいつまでも残り続けることを願うばかりだ。

全長6.5cm程度の春の個体。 ヨシの根塊の中に隠れていた。岸から水面をのぞくと、私の姿に気付いた成魚がスーッと岩陰に隠れた。

春に捕まえた雄。 全長は9cmほど。繁殖期を迎え体を婚姻色に染めてい る。ほほやのどの下は青緑色、第2背びれ、尻びれ、尾びれはオレンジ色だ。岸近くに混生するヨシの根元でタモ網に入った。

春の雄。全長7cm程度だった。 写真ではわかりにくいが、婚姻色が出ていて、捕まえた瞬間はのどやえらの辺りを中心に青緑色が強く出ていた。

上と同所で捕まえた別の雄。 ボディも薄っすらと青緑色をしている。胸びれを除く各びれには青白い斑点が出ている。

春に捕まえた全長10cmほどの雄。 水田地帯を流れる水路でタモ網に入った。黒っぽい体に顔の周辺にある何とも言えない青緑色が美しい。 お腹が大きい雌も同時に見られた。

春、 ヨシが生える川岸で捕まえた全長6.5cmぐらいの雌。 卵をもっていると思われ、お腹は風船のようにぷっくり。だるまさんみたいでかわいい。

田植え前の泥水が入った農業水路、 岸際の草の陰でタモ網に入った。体色は泥水の色になっている。好む環境があるようで捕れるところは固まって捕ることができる。 写真個体のようなお腹が大きい雌が多くて、雄は数匹だった。

春に捕まえた個体。 お腹がポッコリ出ていて、卵をもっているようだったので雌と思う。枯れたヨシが引っ掛かっているところを足でガサゴソすると、タモ網に入った。

夏に捕った全長約8cm程度の個体。 本流から外れた淀みで、岸に垂れ下がる草を蹴り込むとタモ網に入ってくれた。明るい体色をしている。

夏に捕まえた全長約8cmの個体。 流れの緩やかな浅い岸の陰でタモ網に入った。 体色はこげ茶色で、えらぶた後端にある濃青緑色の斑を「眼」、ほほの辺りにある放射状の条模様を「口」と見ると、 体側にもうひとつの魚のシルエットが見える。 しばらくエサにありつけていないのか、お腹がへこんでいる。

上と同所で捕まえた。 同じ場所であっても上のような暗色の個体もいれば、この個体のように明るい体色の個体もいる。 えらぶた後端の眼状斑も比較的明るい色で、その周囲も明るい黄色で美しい。

夏の終わりに捕まえた 全長約4.5cmの幼魚。体の模様がはっきりして、きれいな体色をしていた。本日イチのベッピンさんだ。 同じような大きさの個体が浅瀬でたくさん見られた。

岸近くの草の陰を探っていくと、 一定の間隔でポツポツ幼魚が入る。平べったい体に成魚と変わらない体色と模様だ。小さいが、かっこいい。

全長8cmほどの個体。 えらぶた後ろの眼状斑のみならず、角度によってはえらや腹びれもきれいな青緑色に輝いて見えるのだが、写真じゃわかりにくいね・・・。

秋の初めに捕まえた全長6cm程度の個体。 体側の縦帯がはっきりしている。ひれは橙色で美しいスタイルをしている。

水が流れ、 少し深くなったところのツルヨシの根元に隠れていた。全長は5cmを超えるくらい。光の加減かほほのあたりが青緑色に見える。

浅くサラサラ流れる水路で ツルヨシの根元を足で追い込むとタモ網に入った。 えらが青く色づいていたし、やや厳つい顔をしているので雄だ。全長は6.5cmぐらい。

ちょっと丸くてかわいい個体が捕れた。 全長5cmぐらいの個体。かわいいの中にいらずらっぽい感じがなんともいい!

秋に捕まえた個体。 広い河原がガチガチに護岸され、生息環境としては良くない印象をもった川だった。 草やヨシが生えているところがあって、その環境がなんとか本種の生息を支えている感じだ。 最初はブルーギルばかりがタモ網に入ったし、まさか本種がいるとはとは思わなかった。

本種は一定間隔で生息している。 一匹タモに入ったらその一足下流側でまた一匹のように、一匹ずつ捕れる。

秋に捕まえた全長5cmほどの個体。 茂った草の中でタモ網に入った。えらぶた後端にある濃青緑色の斑がよく目立つ。 黒目が金色で縁取られていて、鋭い目つきをしている。怖わ・かわいい。

秋の終わりに本流に流れ込む 狭い支流で捕まえた。全長は7.5cmほど。コンクリートで護岸されてはいるが、川底には砂泥が溜まりヨシが高密度で生えている。 ところどころで水がたまっているところがあって、本種の良い住処になっているようだ。 「ここ、いそうだな」と思ってタモ網を入れたら一発目から入った。イトモロコやムギツクなどの馴染みのメンバーも一緒に捕れる。

全長8cmの個体。 観察ケースに入れると、下へ行こうとして、頭を斜め下に向かせ体をもち上げては、ふら~っと体を水平にすることを何度も繰り返した。 頭を斜め下に向けた時にひれを全開するのでシャッターを切った。この写真ではわかりにくいが、腹びれにある青緑色に光る数本の条がきれいだった。 シブイ、いい魚だね。

冬に捕まえた全長9cm程度の個体。 水が淀んだ淵の岸でタモ網に入った。この個体はほほの条模様が赤くて、まるで隈取のようだ。

同じく冬に捕まえた若い個体。 全長6cmに満たないくらい。個体数の減少が心配されているが、いるところには結構いる。 この場所は水の透明度は高いが、決して水質が良いという印象は受けなかった。川の構造が大事なんだな。

全長約5.5cmの個体。本種の特徴である えらぶたの後半にある暗緑色の斑紋がよくわかる。ヨツメ(四つ目)なんて呼ぶ地方もある。この個体、妙にうろこ模様がはっきり。

太陽の光を浴びて体色が薄れてしまった。 眼から放射状に伸びる赤茶色の条模様がよくわかる。

冬に捕まえた全長4cm程度の個体。 今年生まれだろうな。岸から垂れ下がる枯れ草の中に潜んでいたようだ。小さい個体は、タモ網に入る枯れ草と紛らわしく、見落としてしまいそう。

本種にとって幸か不幸か、 この独特の姿に魅了される人は多い・・・。

春になると雄は婚姻色を帯びる。 簡単に言うと、水色というか青緑色にボディが染まる。 第一背びれもこんな風に水色に色づき、胸びれを除く各ひれには、水色の斑点模様が鮮明に出てくる。

下あごが突き出た個体が捕れた。 全長8.5cm程度。この口は奇形なのかな。体は暗色をしていたが、血のように真っ赤な腹びれが印象的だった。

体形がずぐりしている個体が捕れた。 第二背びれあたりから急にすぼんでいる。尾びれの付け根も狭い。個体差なのかそれとも奇形なのか。

盛夏に捕れた全長数cmの幼魚。 体の模様ははっきりしないが、吻がとがり眼の形が特徴的で既にやんちゃな顔つき。川を歩くと、幼魚がササーッと散るように逃げる。 本種が好む環境は非常に少なくなっている。

夏の終わりの幼魚。 小さいながら、獰猛な顔つきをしている。

別の幼魚を光を透かして撮影してみた。 背骨が丸見え。

派手な体色で、 日本淡水魚の中でも指折りの美しい容姿。

おちびちゃんの シンメトリー・ツーショット。かわいいねぇ。

今年生まれと思われる個体を ポツポツと捕ることができた。小さな個体は特にかわいい~。 ひとつのケースに入れて並べて気づいたのだが、個体によって顔が微妙に違う。個性がある。

真上からみるとこんな感じ。 吻先から背びれにかけて薄褐色の帯がある。ひれをヒラヒラさせて泳いでいる。

真上から。 この個体は明暗がはっきりしている。

春の雌を真上から。卵でお腹がふんわり膨れて いるので体幅がある。

成魚の頭部を拡大。 眼からえらにかけて放射状に暗色条模様がある。 えらぶたの濃青緑色の斑を眼と見立てると、大きな口をもつ魚の頭部が描かれているのがわかる。

繁殖期の雄の頭部を拡大。 熱帯魚にありそうな、南国チックな、婚姻色カラー。青緑色、濃赤色、金色などなど。 体に隠れている魚の頭部模様がよりはっきりする。

体をふら~っと浮かせ、 尖がった眼を向けてこちらを気にしている。見ようによっては、ちょっといきったモヒカンの兄ちゃんみたい。

春の繁殖期は雌も薄い婚姻色を帯びる。 のどのあたりが青緑色。雌の方がどことなくやさしい顔をしていると感じるが、こうみるとやんちゃな顔をしているね。

若い個体。 口先から背にかけて薄褐色の帯がある。こちらをのぞき込むようにスーッと近づいてくる。

卵でお腹が膨れた雌を正面から。 だるまさんみたい。かわいい~!

成魚を正面から。 さすが肉食魚、悪そうな顔だ。口に見える細かな歯が、さらに悪者感を出している。ひれをヒラヒラさせながら、こちらを警戒しているようだった。

秋に捕まえた全長7cm程度の個体。 体の色は黄褐色だ。口は大きく開き、狙ったヌマエビなどを周囲の水と一緒に一気に吸い込む。

秋に捕まえた個体。 この個体はカレーのような体色をしていた。口を大きく開けて、メバルみたいだね。

春の雌。お腹がぷっくり、

春に捕まえた雄。 青緑色の婚姻色がわかるが、川から取り出した瞬間の実物はもっともっと派手。

これも春の雄。 体は黒くひれも色濃い。美しい青緑色なんだけど、当方使用のコンデジ限界。

上の個体ののどの部分。 なんとも言い表せない美しい色を出している。

わずかの時間で、 まさかこんなに捕れるとは思わなかったが、適した環境さえ整っていれば、たくさん見られるということだ。

last modified:2022/10/31
created:2012/1/7

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