オオシマドジョウ Cobitis
sp. BIWAE type A
ドジョウ科シマドジョウ属
【生息場所】
河川の上流から中流域の比較的水がきれいな砂底や砂礫底に生息している。砂に潜っていることも多い。
【外観・生活】
日本固有種で全長は14cmほどになる。細長い筒状の体形で口ひげがあり、その数は6本。
体は薄黄褐色で、体側中央に目立つ黒い斑紋が縦に一列に並び、背方に小さい黒点模様が筋状に散在している。
体側の斑紋模様はつながっている場合も多く、同所で確認できる個体でも様々なパターンがある。
尾びれの黒点模様はまばらで、チュウガタスジシマドジョウのようにいくつかの弧状模様にはなっていない。
目の下には小さなトゲがあり、捕まえようとするとチクッとやられる。体をくねらせ砂底を前進しながら底生小動物や有機物を食べる。
【類似種との違い】
本種はトップ写真のように尾びれ基部にある2つの斑紋は2つとも明瞭で互いにつながっている個体が多いとされ、
それが良く似たニシシマドジョウとの区別点とされる。
しかし、私がウロウロする大阪周辺で捕れる個体は腹側の斑紋が色薄い個体もかなり多く、全くあてにならない。
典型的な個体を除いて形態での区別はかなり難しいと言える。スジシマドジョウ種群とは、
雄の胸びれにある骨質盤が鳥のくちばし状に尖っている点で区別できる。
【捕る】
流れがあり比較的柔らかく積もった砂底、砂礫底を好む。
中州の下流部やその周辺などの砂がたまったところ、淀んで深くなっているところの傾斜面などで、水底面を削ぐようにザーッとタモ網ですくう。
いるところにはたくさんいて、一匹捕れればその周辺で複数匹が捕れることが多い。
【飼う】
飼育は容易。丈夫でスジシマドジョウ種群よりもエサをよくとり、飼育していても本種はあまりやせることはない。
しかしエサの掃除屋さんとして位置づけていると、エサが十分に行き渡らずそのうち痩せていく。
これはドジョウ類やカマツカ類などの「底モノ」に共通する注意したいポイントだ。
【その他情報】
本種はかつてシマドジョウ西日本集団4倍体型と呼ばれていた種。これまでシマドジョウ種群は4種に分けられ、
シマドジョウ西日本集団4倍体型、シマドジョウ西日本集団2倍体型、シマドジョウ東日本集団、シマドジョウ高知集団の暫定和名で呼ばれていたが、
シマドジョウという名称は2012年4月25日に消滅。
本種(シマドジョウ西日本集団4倍体型と呼ばれていた種)には 「オオシマドジョウ」という標準和名が与えられた。
ちなみに、その他は順にニシシマドジョウ、ヒガシシマドジョウ、トサシマドジョウの和名が与えられている。
【コメント】
背面に等間隔に並ぶ斑模様、体側の縞模様が美しいドジョウだ。縞模様は個体によってバリエーションがあり、季節によっても変化する。
滋賀県内の生息域は限られるが、関西の中流域ではまだ比較的普通に見られる。
少し汗ばむ季節の晴れた青い空の下、冷たくきれいな水が流れる川での魚捕りはとても気持ちいいが、
そんな時にタモ網に入る魚で、同じく砂底や砂礫底を好むカマツカと一緒に捕れることも多い。
「オオ」の名がつく通り、比較的大型になり、筋肉質でとても力強い。そう、力強いところがまさに本種の個性だ。
たまに捕れる大きなメスなんて手の中でグネグネ動いて、指の間を強くこじ開けようとする。
体をくねらせて狂ったようにピョンピョンピョンピョン地面を飛び跳ね続けることもある。
そのうちどっかに行ってしまいそうで、思わずお椀の形にした両手を上から被せてしまうほどだ。
あと、個人的には、雄の胸びれも好き。正面から見るとクリンと上に反るように曲がってとてもかわいい。
ネズミのようなリスのような、ちょっととぼけたように見える正面顔も、鰓蓋の下部が実はこっそり金色ってことも、いい。
春のはじめに捕まえた雄。体側中央に細長
い斑紋が並ぶ。あまり見ない
パターンだな。河川中流域の砂底でチュウガタスジシマドジョウに混ざってタモ網に入った(兵庫県)。
春に捕った全長9cm程度の雄。
体側の模様はつながった斑模様というより一本の縦条のようだ。尾びれ基部の2つの黒斑は明瞭でつながっている。
また尾びれはとても大きくその斑模様もつながっている(大阪府)。
これも春に捕まえた雄。
体側の斑紋模様は個体によってかなり違う。
晴天のもと、新緑のにおいが漂う河川での魚捕りは気持ちがいい。この個体の全長は10cmだった(大阪府)。
全長11cmの雌。
雌は体高があり、むっちりしている傾向にある。
体側中央に並ぶ斑模様が美しい個体だ(大阪府)。
春の雄。
淵の斜面の表層を砂利ごとタモ網ですくうと捕ることができる。タモ網の接近に気づいたカマツカがたまに驚いて先へ逃げていく(大阪府)。
春に捕った雌。
全長14cm程度あり、これまで捕れた中では最大だ。卵をもっているせいか背が大きく盛り上がっている。
尾びれ基部腹側の斑紋は捕れたその瞬間から薄い(大阪府)。
春の雄。全長9.5cm程度。
えらぶた下部に輝く金色がとても目立った個体だったが、ボディも薄く金色に光っているのがわかるだろうか(大阪府)。
春に捕れた雌。
全長10cmに満たないくらいのむっちりボディ。ぷっくりお腹が大きくて丸っこい。ホルスタインみたいだね。
いかにも本種が潜っていそうな、ふんわり積もった軟らかい砂底でタモ網に入った(大阪府)。
上の個体と同所で捕まえた雌。
全長9cmくらいだった。この個体はスマートだ。同じ雌でもいろいろ(大阪府)。
春の雄。全長10cm程度。
軟らかい砂底に潜っていた。本種はカマツカと一緒に捕れることが多い(大阪府)。
春に捕った全長10.5cm程度の雄。
雌と比べると雄は全体的にほっそりしている(大阪府)。
春の砂礫底で捕まえた
全長7cmほどの雌。転石をゴロリとするとタモ網に入った。周囲の環境が黒っぽかったので灰色っぽい体色をしている。
砂泥底にはチュウガタスジシマドジョウがたくさん見られた(兵庫県)。
夏に捕った全長9cm程度の雌。
クリーム色の体色に本種らしい筋模様があり、夏は筋模様が明瞭になる傾向にある。
春のムッチリした雌の感じからすると随分スマートな体形だ。夏痩せするのかな?(大阪府)
丘陵地の夏の河川は気持ちいい。
流れる冷たい水の中にサンダルでザブザブ入って、砂底をタモ網ですくって、ワッサワッサと砂を探る。
この雄は体の模様が明瞭でカッコイイ。全長9.5cmくらいだった(大阪府)。
夏に捕まえた雌。
雄のようにスーッとした体形だ。
水が落ち込む淵の柔らかく積もった砂底で複数匹がタモ網に入った。本種はカマツカも一緒に捕れることが多い(大阪府)。
夏に捕まえた個体。
ウグイやアユが泳ぐ、淀みの砂底でタモ網に入った。全長9cmほどの雌だが、痩せている。エサが少ないのかな(和歌山)。
夏に捕まえた雄。
湧水が河川に流れ込む淀みで、川底に少し泥が混じったような場所でタモ網に入った。
全長約9cmでスーッと流れるような体つきがいいね。体側の斑紋は小さくて細い筋状になっている(奈良県)。
雨が降った後、
岸近くの草の陰で捕まえた。
タモ網に入るのは1匹ずつだが、近くで複数匹が捕れた。
好む環境があるようで、だいたい何匹がまとまって捕れることが多い(大阪府)。
夏の川で捕まえた雌。
冷たい水が流れる上流域の砂底でタモ網に入った。全長12cmほどで、トップ写真と同じ個体。
ここの河川では体側の斑紋が独立している個体が多かった(奈良県)。
秋に捕まえた全長8.5cmほどの雄。
やや深みのある砂礫底で捕まえた。体側の斑紋は筋状になっている(大阪府)。
上と同所で捕まえた雄。
全長7cmほどだった。尾びれ基部の上下2つの斑紋は共に濃くて繋がっている。体側の斑紋は上の個体と同じで筋状だ。
浅いところは小型の個体が多く見られる(大阪府)。
秋に捕まえた雌。
尾びれ基部の上下2つの斑紋はともに濃くて繋がっている。体側に並ぶ斑紋は比較的明瞭だ。全長7.5cm程度(大阪府)。
スリムな体形をした全長7cm程度の雄
(大阪府)。
秋の雄。
本種らしく尾びれ基部の2つの斑紋は共に明瞭な黒色であるが、体は比較的スマートで体側に並ぶ斑紋は比較的独立していて、
雰囲気はニシシマドジョウに似ている。こんなのが滋賀県内で捕れたら悩む・・・(兵庫県)。
中流域の砂底で捕まえた雌。
斑や縞模様がかすれているというか、ぼやけている感じ。全長10cmほどだった(兵庫県)。
きれいな水が流れる川の砂底で
大きな雌がタモに入った。太く全長は12cmを超えていて、その大きさにちょっとびっくりした。
このサイズの個体がタモの中でニョロ~と体をくねる感じはとてもグロテスク。この個体、背方の縦筋模様がかなり細かい(兵庫県)。
全長約9cmの雌。
雌の割にはスマートだな(兵庫県)。
秋の終わりに捕まえた雄。
全長約8cmだった。川底がこぶしぐらいの石でゴロゴロした川で岸の近くをガサゴソやると落ち葉や枯草と一緒にタモ網に入った。
上の個体と同じ水系で捕ったが、背方の縦筋模様が非常に細かい。この水系の特徴かな(兵庫県)。
冬のはじめに捕まえた
小型の雌。 体はずいぶんスマートやな。尾びれ基部の2つの斑紋は本種らしく、共に明瞭で繋がっている(京都府)。
冬に捕った全長9cm程度の雄。
河川中流部のふんわりとやわらかく砂が溜まっている深みで捕れた(大阪府)。
同じく冬に捕まえた全長11cmの雌。
雌は雄よりも大きい。クリーム色の体にはっきりとした斑紋模様が印象的だった。冬の水は冷たいね(大阪府)。
冬の雌。
底砂をごっそりすくったタモ網の中から出てきた。全長12cmを超え、でっぷりと太った大きな個体だった(大阪府)。
冬に捕まえた雌。
カワムツの稚魚が群れて泳いでいたところで川底の砂礫をザーッとそぐようにするとタモ網から姿を現した。
冬は砂礫底にもぐっていることが多い(大阪府)。
冬に捕まえた小型の雌。
体側の斑模様がくっきりきれに並んでいる。冬は餌をとらないのか、とれないのか、やや痩せている個体も多い気がする(大阪府)。
春に捕まえた全長6cm程度の雄。
ピシッと気を付けをしているような姿勢がよい(大阪府)。
夏に捕まえた全長5cmほどの個体
(大阪府)。
全長10cmの春の個体を左右から。
右側と左側の模様は異なっている(大阪府)。
タモ網からすくい上げた直後の雌。
全長は14cm程度あった。体がてかっていて、ツルッとしている感じがわかる。頭からつかもうとすると、目の下のトゲでチクッとやられる(大阪府)。
大阪府北部で捕れた個体であるが、
尾びれ基部にある下の斑紋の色がぼんやりしている個体が多かった。ほとんどがイレギュラー個体なの?(大阪府)
上から1つ目の雄。
背の斑模様が不明瞭で、背中央に一本の黒線がある(大阪府)。
トップ写真を除く上から3つ目の雄。
背の斑模様を串刺しするように背中線が走る(大阪府)。
上から5つ目の全長14cmの雌個体。
背の斑模様がはっきりしている。上から見るとお腹がふくれてポッチャリ。雌の胸びれは雄のそれより小さくて丸みを帯びる(大阪府)。
夏に捕まえた雄を上から。
背の斑模様がよりはっきりしている(大阪府)。
夏の雌。
春の個体のようにムッチリしていない。上から見ても雄とあまり変わらない(大阪府)。
トップ写真
と同じ個体。
夏の雌。背の斑紋が明瞭で、正方形を並べたようだ(奈良県)。
秋に捕まえた個体を真上から。
背には明瞭な斑紋が並び、スジシマドジョウ種群のそれとは異なる(大阪府)。
礫底にいる個体。
カモフラージュ模様になっている。こんな風に見えたら、手前からタモ網を入れて砂礫ごとごっそりとすくう。
砂礫で重くなったタモ網の中を探すと、本種がニョロニョロ動きながら出てくるはずだ(大阪府)。
シマドジョウの仲間は口ひげが6本。
真横や正面からはわかりにくいが、下から写したこのアングルだとよくわかる(大阪府)。
雄の胸びれ。
胸びれ根元に、鳥のくちばし状と比喩される骨質盤がある(大阪府)。
春の個体の頭部拡大。
えらぶた下部はきれいな金色に輝き、捕った瞬間目が奪われた。胴の部分も上からうっすらと金色をかぶせたようだった(大阪府)。
夏に捕まえた雄。
体の筋模様が比較的はっきりしている。トラトラ模様(大阪府)。
雄を正面から。
体色は地味、きょとんとした眼にとぼけた顔(大阪府)。
ほっぺがふっくらして
かわいい顔。
胸びれが小さくて先端が丸っぽいので雌だ。正面から見た顔はまだら模様。口ひげはこんな風に底に付けているんだね(兵庫県)。
大型の雌を正面から。
顔は暗色の不規則な模様が並び、口ひげが放射状に広がる(奈良県)。
雄を真正面から。
胸びれがクリンとしていて、ふわっと羽ばたきそう?(大阪府)。
春に捕まえた雄(左)と雌(右)が
並んでこちらを向いてくれた。正面から見ても雄と雌は区別がつく。雄は胸びれがより大きく、雌はより体高がある(大阪府)。
created:2012/1/7