テングヨウジ Microphis
(Oostethus) brachyurus brachyurus
ヨウジウオ科ヨウジウオ亜科テングヨウジ属
【生息場所】
河川下流域の流れの緩やかな淵などに生息している。
【外観・生活】
全長25cm程度になる。体は黄褐色。
小枝のように細長く、透明で小さい胸びれや背びれをもち、体表がザラザラしている点は、他のヨウジウオ類に共通する。
筒状に突き出した吻は比較的長く、薄色の斑点模様があり、雄は体側に赤色の縦筋があることが特徴だ。
背びれ基底は長くて条数が多く、パッと見た外観からは背びれが体の後ろの方についていることからも区別が可能だ。
躯幹部と尾部の隆起線は不連続で、雄の育児嚢は未発達。水面近くでクネクネせずに棒状になってゆったり泳ぐ。
枯れ枝や植物などに身を潜め、上を向いた小さな口で小型のエビなどの甲殻類や小魚などを食べている。
【捕る】
タモ網で捕る。流れが淀むところの岸草やツルヨシの根のあたりを足で追い込む。
水面近くをゆったりと泳ぐので、見つけることができればタモ網で簡単に掬えると思う。
【その他情報】
テングヨウジという名は、本種の長い吻を天狗の鼻に例えたもの。
日本では黒潮の影響を受ける地域に分布するが、大阪湾奥に流入する河川でもまれに確認できる。
【コメント】
大阪湾奥に流入する河川下流部で、真夏に汗をかきながら魚捕りをしていたとき、タモ網を水中から引き上げると網の目に棒状のものが引っ掛かっていた。
その姿からヨウジウオの仲間だとすぐにわかったが、これまで見たことがない特徴をしていたので、すごくテンションが上がった。
実は5年ほど前の秋、ほぼ同じ場所で、タモ網の目から棒状の魚をポロリと落としたことがあり、とても悔やんだことがある。
それ以来、この川に来るたびに、棒状の魚(ヨウジウオの仲間)を心のどこかで探していた。
その魚がヨウジウオの仲間のうち本種であるかどうかわからないが、やっと捕まえた・・・そんな気持ちだ。本種は大阪周辺では結構レアもののようだ。
撮影後逃がしたが、その川を良く知る息子から標本用に持ち帰って欲しかったとすごく残念がられ、また悔やんでいる・・・。
秋の初め、岸際の草の中でタモ網に入った。
全長13,14cmほど。体側に赤色の縦筋があるので雄だ。泳ぎは意外と速く、逃げる個体をタモ網ですくうのは案外難しい。
潮が引いた秋の汽水、
岸に生える草の根元で捕まえた雄。体は黄褐色で胸びれの基部から後方に赤色の縦筋が見られる。
細長い棒のような体で、動かなかったらヨシの枯れ枝と間違うところだった。
川底の落ち葉の溜まったところで
タモ網に入った雄。全長16cmを超えるぐらい。育児嚢には卵がびっりし詰まっていた。
トップ写真と同じ個体。
全長12cm程度で、体側に赤色線が見られないことから雌だと思われる。夏の河川汽水域で捕まえた。
尾部は短い。
捕れたところで逃がすと、ゆ~っくり岸の方へ泳いでいった。
体から突き出るひれは透明だ。
背びれは半楕円形。小さな腹びれもある。
雄の頭部。
吻は長くて頭部の2/3ぐらいあり、口は斜め上を向く。吻は虫食いされたような薄色の斑点模様が見られる。
体に赤線。
明るい体色だとこんな感じ。
体は黄褐色でえらの付近は金色に光る。長く伸びた吻は暗褐色ベース。
吻から眼を通り、えらにかけて伸びる暗色帯がある。赤色の縦筋も色が鮮やかだ。
眼は大きい。
棒状の体から突き出る胸びれは目立たないように透明でとても小さい。この個体はおそらく雌だ。
ケースの底でジーッとしていた雄。
育児嚢に卵を抱えているとあまり動かないようだ。
正面から。
体は棒だな、棒。ちょっと悪そうな顔つき。
秋に捕まえた雄の腹面。
卵を抱えているのがわかるだろうか。
拡大するとこんな感じ。
育児嚢には雌が産みつけた卵がびっしり。
川の中をゆっくり泳ぐ。
ほんと棒切れみたい。周囲には何もなく、流れに逆らって泳いでいるので違和感はあるが、
枯れ枝などのごみがあれば、かなり見つけにくいだろう。
created : 2018/8/14